年収1000万円の会社員の年金額は? 日本では“レア”と言える高めの金額に…
Finasee / 2023年10月4日 19時0分
Finasee(フィナシー)
誰にとっても老後生活の重要な基盤となる年金。多くの会社員は毎月、給与から天引きされ、保険料を納めているにもかかわらず、その結果として自分がいくら年金を受け取れそうか把握できている人は少ないようです。
確かに、個々人の年金額を求めるには、少々複雑と言わざるを得ないのが現在の年金制度です。まずは“ざっくり”と把握するところから始めてみませんか?
そこで、「平均年収※1000万円だったら」と仮定した計算結果を解説します。
※本来は、年ごとによって得られる収入(給与)は異なる場合がほどんどですが、ここでは計算を分かりやすくするために、現役時の年収の平均が1000万円として計算をします。
65歳から受けられる年金65歳から受け取れる老齢年金は老齢基礎年金(1階)と老齢厚生年金(2階)の2階建て。
老齢基礎年金は全国民共通で、20歳から60歳まで40年の保険料納付がある場合は満額で受給できます。
一方、会社員で厚生年金に加入していれば受けられる老齢厚生年金は報酬比例部分として、在職中の給与や賞与の額、そして加入期間によって計算されます。在職中の給与・賞与が高いと負担する厚生年金保険料はその分高くなりますが、将来受給できる年金額も高くなる計算です。
また、老齢厚生年金には他に経過的加算額がありますが、今回は老齢厚生年金への上乗せと覚えていただければ十分です。
この前提を押さえたうえで、実際に計算してみましょう。
年金額の計算以下の条件で計算します。
・1983年4月生まれで2023年4月に40歳
・大学生在学中は国民年金に加入し、20歳から3年間保険料を納付
・2006年4月に就職し、以来42年間(504月)、65歳まで、会社員として厚生年金に加入
・2023年時点のルールを適用
では、いくら受け取れるでしょうか。まずは、報酬比例の部分(2階)から計算していきます。
報酬比例部分(2階部分)2006年4月から厚生年金に加入しているため、1月あたりの厚生年金加入中の給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)の平均(平均標準報酬額)から算出します。
標準報酬月額の上限は65万円(2020年8月までは62万円)、標準賞与額の上限は1回につき150万円となります。平均年収で1000万円、給与が700万円、賞与が年2回で300万円だったとするといくらになるでしょうか。平均月収では58万3333円(700万円÷12)となるため標準報酬月額として59万円、標準賞与額は150万円×2で300万円、これを基準にして算出してみます(実際は、どの時期にいくら給与や賞与を受け取り、その内訳がいくらであったかによって平均標準報酬の金額も多少変わります)。
ただし、平均標準報酬額は加入年度ごとの再評価率によって、それより少ない報酬として再評価されます。その再評価後の平均標準報酬額に一定の乗率や厚生年金加入月数をかけるなど、所定の計算をすると、報酬比例部分の額は222万円程度/年と算出されます。
この報酬比例部分に老齢基礎年金と経過的加算額が加わります。
基礎年金(1階部分)保険料納付済期間が20歳から60歳までの40年ある(厚生年金に加入していた期間は基礎年金の計算に含まれます)ことから老齢基礎年金が満額(2023年度の67歳以下の額で79万5000円/年)となります。
経過的加算20歳以上60歳未満の厚生年金加入期間は23歳から60歳までの37年(444月)のため、その後、63歳まで合計40年になるまで厚生年金に加入することで経過的加算額も増えます。6万円弱/年支給されます。
結果、老齢基礎年金と経過的加算額は合計85万円程度/年になります。
222万円と85万円の合計で約307万円の年金額になると言えます。つまり、月25万円強の公的年金収入となります。
「お金があるから」と散財しないように注意!42年間で平均年収1000万円だった場合の年金は307万円という数字が出ました。現在の公的年金制度の下ではかなり高い額でこれほど受給できる人もわずかと考えられます。
年収が高いほど年金額としても安心でき、高給であることから貯蓄なども十分用意でき、老後破産のリスクも低いものと言えます。とはいえ、何が起きるかわからない人生、「お金があるから」と散財しすぎず、老後の収支のことをしっかり見据えておくことだけは忘れずにいたいところでしょう。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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