【FPが伝授】「親とお金の話がしづらい」という人が知らない、自然に会話を切り出すテク
Finasee / 2023年9月21日 11時0分
Finasee(フィナシー)
登山が趣味の父は、ある日、下山の途中で道を間違えて遭難してしまいました。本人が遭難に気付いてすぐに119番通報したことで県警の捜索が始まり、ヘリ2台が出動する事態に。最終的に無事救助されましたが、もしかすると多額の救助費用を支払うハメになっていたかもしれません。
この出来事をきっかけに、今後、万一の事態が起きた時のことを考えて、親とお金の話をしておいた方が良いだろうと筆者は考えました。
●前編:【「完全に迷った」山で遭難した父。“ヘリ出動”の救出劇に支払った費用は…】
キャッシュカードと暗証番号だけでは不十分?遭難事故をきっかけに、筆者は親から「ここに置いてあるから」とキャッシュカードや通帳の保管場所を教えてもらいました。
親に判断能力があり同意を得ている場合は、ATMから親のお金を引き出すことはできます。しかし、基本ルールとしては、銀行窓口にしろATMにしろ、本人以外が預金を引き出すことはできません。
しかも、仮にATMからお金を引き出せたとしても、希望通りの金額を引き出せるとも限りません。詐欺対策のため、顧客が70歳以上の高齢者の場合は、ATMでの振り込みや引き出しの金額を10万円、20万円などと制限している銀行も多いからです。
急な出費で、ATMの限度額以上の金額を引き出したい場合は、銀行窓口に相談すれば、預金者本人との関係や事情を確認した上で、必要額程度の払い出しは行ってくれるようです。なお、親と同居している場合は代理人カード(家族カード)を作っておくと、親の口座からスムーズに預金を引き出すことができます。
最優先で確認すべきは「年金額」と「貯蓄額」ただ、そもそも親に貯蓄がなければ、想定外の支出に対して、親のお金で対応することができません。ですから、親とお金の話をする時に優先して確認したいのは、まず親の年金額と貯蓄額です。
筆者の場合、親の年金額は遭難事故以前から把握していました。「年金受給者の年金関係の書類を見てみたい」という職業柄の欲求があったためです。ただ、年金の書類を見てみたいという動機を持つ人は私のようなFPくらいでしょう。
子の立場からすると、唐突に「ところで、年金額や貯蓄額っていくら?」などと聞くのは気が引けるでしょう。親からも「いきなりお金の話なんて、どうしたの?」と思われ、変な空気が流れるかもしれません。
“自然に”会話を切り出すテクニック親とお金の話をする時は、変に誤解を生んで不信感につながらないように、親のお金のことを知ろうと思ったきっかけや理由を添えて、詳しい金額を教えてもらってください。
例えば、「もしもの時に備えて、何か医療保険に加入してる?」など、保険の話題から切り出し、「保険で対応できない支払いに備えるため」と目的を伝えてから年金額や貯蓄額を聞くと、会話が成り立ちやすいかもしれません。
あるいは、年金額を聞けたら、親の高額療養費の上限額を一緒に確認するのも良いでしょう。高額療養費の上限額は、厚生労働省保険局の資料『高額療養費制度を利用される皆さまへ』に、①70歳以上の方、②69歳以下の方という形で記載されています。
貯蓄額が正確に分からない場合は…一方、親が口座を複数持っていると、自分自身でも貯蓄額を把握できていなかったり、夫婦それぞれの貯蓄額を秘密にしていたりするケースが珍しくなく、全体像を把握するのは難しいかもしれません。
この場合、年金額だけが信頼できる情報となりますが、年金額だけでも知っておくと、親の普段の生活レベルと年金額を比較して、「家計に余裕があるかないか」を判断できます。
現在の生活レベルを見て、年金だけでは生活できそうにない出費をしているのであれば、家計改善など対策が必要かもしれません。家計改善の対策が必要なくとも、心配が不要であることが分かれば、子も安心できます。
遺族年金も確認しておくさらに、両親どちらかに万一のことがあった場合、遺族年金はいくらになるか確認しておくと安心です。一般的に、女性の方が長生きで、かつ低年金なことが多いです。したがって、将来的に父親の遺族年金を受け取りながら母親が生活するケースを想定しておくと良いでしょう。
遺族年金がいくらになるかは、母親が気になっていても聞けていないこともあるでしょうから、「一緒に計算しよう」と声をかけると、安心してもらえるかもしれません。
遺族年金は、加入している年金制度によってルールの違いはありますが、両親2人とも65歳以上で父親が老齢厚生年金を受け取っているなら、父死亡後の母親の年金は母親の老齢基礎年金と、
① 父親の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額
② ①の3分の2と母親の老齢厚生年金の2分の1の合計額
のうち金額が高い方です。
実際には細かな調整がありますが、目安の金額を知るだけなら、上記①か②のどちらかだと思っておくと良いでしょう。年金額を聞いた時に、あわせて計算しておいてください。もし、その金額では生活が心もとないようなら、母親に積立投資を始めてもらうことも選択肢になるかもしれません。
ちなみに、筆者の母はつみたてNISAを72歳から始めました。もちろん、母は投資のど素人。理解力も長けているわけでは全くありません。しかし、好奇心から投資をスタートさせ、つみたてNISAをはじめて3年で、資産は増えていますし、本人もこれからも積み立てを続けていきたいそうです。
令和4年時点で、70歳の女性の平均余命は19.89年。70代からの積立投資も決して遅くないと言えます。
***親の家計への不安は、親との対話の中で、心配事を1つずつ解決していかなければ、いつまでたっても解消できません。いつかは必ずしないといけないお金の話。みなさんも自分なりのきっかけを見つけて話をしてみてはいかがでしょうか。
前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー
FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。
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