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今後の旅行は「宿代」がかさむかも? 最も“宿泊料金の値上げ”が目立つ都市は…

Finasee / 2023年9月11日 17時0分

今後の旅行は「宿代」がかさむかも? 最も“宿泊料金の値上げ”が目立つ都市は…

Finasee(フィナシー)

観光庁が2023年7月の「宿泊旅行統計調査」を発表しました。それによると、日本人の延べ宿泊者数がコロナ禍前の水準を回復したとのことです。

夏休みに旅行へ出掛けた方も多いと思いますが、なかにはハイシーズンの宿泊料金に驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者の数少ない経験からの話で恐縮ですが、秋口に東北地方へ出張を予定しており、ビジネスホテルを予約しようとしたところ、この春先に宿泊したのと同じところなのに、宿泊費が倍増していたことに驚きました。

よく調べてみると、その日は土曜日であるのに加え、大規模な花火大会が予定されており、その観客が宿泊するという特殊な事情があったにせよ、恐らくホテルや旅館などの宿泊費は、今後も上昇傾向をたどるのではないかと考えられます。

コロナ前の水準を上回った宿泊者数

さて、統計の中身に戻りましょう。

2023年7月の延べ宿泊者数は5282万人泊となり、6月の4533万人泊に比べて16.52%増であり、前年同月比だと32.5%増でした。また、新型コロナウイルスの影響が出る前の、2019年7月の延べ宿泊者数と比較すると、2023年6月のそれは2.0%増となり、ようやくコロナ禍前の水準を上回ってきました。

ちなみに2023年7月の数字を、日本人延べ宿泊者数と外国人延べ宿泊者数に分けてみると、日本人延べ宿泊者数は4219万人泊で、2019年7月比で2.9%増でした。

また、外国人延べ宿泊者数は1063万人泊で、2019年7月比は▲1.6%でした。外国人延べ宿泊者数は、2019年同月比でまだマイナスではありますが、マイナス値は徐々に縮小しています。

また、8月には中国が、日本への団体旅行を3年半ぶりに解禁しました。現状、中国政府は福島第一原子力発電所の処理水排水をめぐって、日本に対する反発を強めているだけに、日本への団体旅行を解禁したからといって即、それが中国からのインバウンド観光客増につながるかどうかは微妙なところです。

しかし、この問題が解決へ進めば、中国からのインバウンド観光客が増加し、いよいよ外国人延べ宿泊者数の2019年同月比は、マイナスからプラスに転じることになりそうです。

正常化へ向かう観光業

「宿泊旅行統計調査」の結果を受けた分析が、9月1日公開のニッセイ基礎研究所 経済研究部所属の安田拓斗研究員によるレポートにも書いてあります。

レポートによると、「日本人延べ宿泊者数は全国旅行支援が開始された2022年10月以降、堅調に推移している。全国旅行支援は2023年1月10日以降、割引率を40%から20%へ下げ、割引上限額を交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円として運営されてきた。(中略)47都道府県のうち半分以上が8月末までに全国旅行支援を終了しているうえに、同制度を継続している県の大部分では、貸切バスでの団体旅行のみが対象と対象範囲が狭まっている。また、今後は全国旅行支援を終了する県がさらに増加していく」と書かれています。

全国旅行支援は、確かに日本人の旅行熱を高めるきっかけにはなりましたが、すでにそれは、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類にダウングレードされたことで、縮小へと向かっています。

それでも日本人延べ宿泊者数が伸びているのですから、カンフル剤を投与しなくても、いよいよ観光業も正常化へと向かいつつあることを示していると考えられます。

人手不足が深刻化した理由

ただ、観光客が戻ってきたことによって気になるのが、宿泊業の人手不足問題です。

帝国データバンクの「特別企画:「旅館・ホテル業界」 動向調査(2022 年度)」(2023年7月3日)という、ホテル・旅館業の約100社を対象にした調査によると、人手不足だと答えた企業の割合は上昇傾向をたどりました。4月は正社員で75.5%、パートや派遣などの非正規社員で78.0%の企業が、人手不足だと回答したとのことです。

なぜここまで人手不足が深刻化したのかというと、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した時期、多くの宿泊施設が稼働率の大幅低下で人員削減を行ったからです。

当然、削減された従業員は、そのままでは食べていけませんから、他の業種へと転職をはかります。結果、フロントや配膳、清掃などの業務で人員逼迫が深刻化しているのです。

人手不足で失われる収益確保の機会

では、人手不足を解消するためにはどうすれば良いのでしょうか。

ここで問題になるのが新型コロナウイルスの感染拡大が一段落したところで進行したインフレです。消費者物価指数の上昇率が意外なほど根強く続くなか、企業も従業員の生活を守るため、賃金の引き上げなどを行っています。

結果、コロナ禍で宿泊業から他の業態への転職を余儀なくされた人たちの賃金も、新しい職場で引き上げられているため、いまさら賃金水準など待遇面でコロナ禍と同じものを提示されたとしても「戻る気がしない」というのが正直なところでしょう。実際、宿泊業では、新卒の採用に苦戦しているところが増えています。

このように人手不足が深刻化する一方、インバウンド観光客を含めて宿泊者数が増えれば増えるほど、需要に応えられず、宿泊を断らざるを得ず、収益確保の機会を失ってしまうホテルや旅館も増えてしまいます。

これでは、いくら政府がインバウンドを促進して交流人口を増やし、経済活性化につなげようとしても、絵に描いた餅になってしまう恐れがあります。

解決策は「宿泊料金の引き上げ」にあり?

もともと宿泊業は全体的に賃金水準が低い傾向が見られましたが、そのようなことを言っていられる状況ではないということです。

宿泊業の人手不足を解消するためには、従業員の賃金を引き上げるしかありません。もちろん、無い袖を振ることはできませんから、従業員の賃金を引き上げるのであれば、相応に宿泊料金も引き上げ、売り上げを増やすしかないでしょう。

インバウンドによる経済活性化を目指すのであれば、宿泊業に従事する従業員の待遇改善は必須です。

値上がりした「人気都市」の宿泊料金

円安であることも含めて考えれば、宿泊料金を引き上げたとしてもインバウンド観光客の客足が鈍るようなことにはならないでしょう。

現に「主要都市別ビジネス・シティホテルの価格推移」という、メトロエンジン社の公表データを見ると、2023年5月時点の宿泊料金は、コロナ前の2019年5月と比較して上昇しているところが増えています。いくつか具体例を挙げてみましょう。

東京・・・・・・8811円(2019年5月)→1万962円(2023年5月)
大阪・・・・・・7046円(2019年5月)→8426円(2023年5月)
京都・・・・・・9610円(2019年5月)→1万2642円(2023年5月)
札幌・・・・・・8073円(2019年5月)→7651円(2023年5月)
福岡・・・・・・8236円(2019年5月)→8544円(2023年5月)
広島・・・・・・6808円(2019年5月)→8686円(2023年5月)
仙台・・・・・・6959円(2019年5月)→7987円(2023年5月)

 やはり外国人観光客に人気の高い東京や京都の価格上昇が目立っています。

***
 

宿泊施設の価格上昇は今後も続く可能性が高いでしょう。

「日本の宿泊施設は世界的に見て安い」と言われた時期もありましたが、私たちはいよいよ、デフレ局面でなじんでしまった「どの宿泊施設でも比較的安く泊まれる」という常識を、変えざるを得ないのかもしれません。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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