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国会の成り行き次第? 常に発行可能なものも? 国債の知られざる“決まり事”

Finasee / 2023年10月30日 18時0分

国会の成り行き次第? 常に発行可能なものも? 国債の知られざる“決まり事”

Finasee(フィナシー)

日常生活のなかで国債と直接関わることはあまりないかもしれません。しかし実際、国債は金融市場全体を支えるインフラ。日本経済を理解するのに国債の知識は欠かせません。

話題の書籍『知っているようで知らない国債のしくみ』では、知っているようで知らない国債に関する仕組みや役割について、金融アナリストの久保田博幸氏が解説。今回は本書序章「国債の3つの役割」、第1章「国債の種類」の一部を特別に公開します。(全4回)

●第1回:借金証書だけではない…有価証券、長期金利etc. 国債の持つ“多様な役割”

※本稿は、久保田博幸著『知っているようで知らない国債のしくみ』(池田書店)の一部を再編集したものです。

国債の種類と発行根拠法

国債を発行するにあたり、憲法や財政法ではどう位置づけられているのでしょうか。国債を発行するためにはいろいろな決まり事が存在します。

国債は、国の財政に組み込まれた制度です。国債を発行するために、発行根拠法と呼ばれる法律が存在しており、それによって国債の種類が分けられます。

公債と民間債

国債は債券の一種ですが、債券は公債と民間債に分けられます。公債とは、国や地方公共団体が財政収入の不足を補うために「債券の発行」または「証書借り入れ」によって負う債務のこと。国の発行する公債が本書で取り扱う国債です。他にも、地方自治体の発行する公債を地方債と呼びます。公債は、それ以外の借入金などとは区別されます。

公的機関ではない民間企業などが発行する債券は民間債と呼ばれ、株式会社が発行する社債や、特定の銀行・特定の金庫が発行する金融債などがあります。

憲法の規定と国債の取り扱い

国債を発行するということは、「国が債務を負担する」ということです。憲法の第85条には、国が債務を負担する際の決め事が書かれています。

憲法 第85条
国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

このように国債は憲法に基づいて、国会の議決により発行されます。

ただし、国会の議決が何を指すのかについて、具体的に定めているわけではありません。したがって法律、予算、あるいは他の形式でも差し支えはないのですが、日本の場合は国債を発行する議決はすべて法律という形式を取っています。

他方、米国では、合衆国憲法第1条第8項に「連邦議会の権限として、合衆国の信用に基づいて借り入れをすること」との規定があります。

大別すると普通国債と財投債の2種類

日本の国債は発行根拠法によって、建設国債、特例国債(赤字国債)、借換債、財政投融資特別会計国債(財投債)に分けられます。さらに大きく分類した場合、普通国債(建設国債、特例国債、借換債、復興債)と財投債に分けられます。

利払いや償還について普通国債では主に税を財源としているのに対し、財投債では財政融資資金の貸付資金回収金によって賄われます。

令和5年度国債発行予定額(出所:財務省)外貨建ての日本国債

1870年4月23日、鉄道施設の資金調達のために日本で初めて国債が発行されました。そのときの国債は、外貨建てでした。その後も、明治から大正にかけて公共事業や戦費調達のためには外貨に頼らざるをえなかったことから、外貨国債を発行していきます。1870年から1930年にかけて22銘柄の外貨国債が発行されました。

第二次世界大戦後は、外債の発行は長期間中断されていました。しかし、1958年に「産業投資特別会計の貸付の財源に充てるための外貨債の発行に関する法律 ※1」が制定されています。

※1 産業投資特別会計とは財政投融資の一環として出資や貸付けを行った特別会計。その貸し付けの財源に充てるため発行される外貨債の発行根拠法。

この法律に基づいて、1959年1月に米国で発行された第一回産業投資米貨公債の収入金は、産業投資特別会計を通じて電源開発株式会社に貸付けられました。

また、1963年には「外貨公債の発行に関する法律」が制定されました。以後同法に基づき、産業投資特別会計による外貨国債の発行が行われ、米国で1銘柄、西ドイツ(当時)において2銘柄、スイスにおいて2銘柄発行されています。それらの収入金は、日本開発銀行を通じた産業資金供給、日本道路公団の事業資金などに活用されました。

「外貨公債の発行に関する法律」(外貨公債の発行)

第一条 政府は、財政投融資特別会計の投資勘定の貸付けの財源に充てるため、同勘定の負担において、外国通貨をもつて表示する公債(以下「外貨債」という。)を発行することができる。

2 前項の規定による外貨債の限度額については、予算をもつて、国会の議決を経なければならない。

3 第一項に定めるもののほか、政府は、外貨債を失つた者に対し交付するため必要があるときは、外貨債を発行することができる。
(準用)
第四条 第一条第三項及び前二条の規定は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項ただし書の規定により発行する外貨債、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第四十六条第一項及び第四十七条の第一項規定により外貨債の整理又は償還のため発行する外貨債並びに同法第六十二条第一項の規定により発行する外貨債について準用する。

一般会計予算の上で外貨建て国債を発行するため、1986年5月に「外貨公債の発行に関する法律」が改正されました。しかし、現在まで発行実績はありません。つまり、法律上、外貨建ての国債を発行できるようにしたものの、それによる国債は発行されていないということです。

ただし、この法律が存在する以上、いつでも外貨建ての日本国債は発行できることになります。

●第3回(「特例」という言葉自体も意味をなさない…なぜ毎年度「特例国債」は発行され続けるのかでは、社会基盤を整備するための建設国債のしくみと、特例国債の発行の歴史について解説します。

『知っているようで知らない国債のしくみ』

久保田博幸 著
発行所 池田書店
定価 1,870円(税込)

久保田博幸/金融アナリスト

慶應義塾大学の法学部政治学科を卒業後、証券会社の債券部で14年にわたり、主に国債の債券ディーリング業務に携わった。その間、1996年に債券市場のホームページの草分けとなる「債券ディーリングルーム」を立ち上げる。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」(パンローリング )、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)、「債券と国債のしくみがわかる本」(技術評論社)など多数。

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