60代男性が再雇用を辞退し、独立を決意…役に立った現役時代の“意外な副業”
Finasee / 2023年9月25日 11時0分
Finasee(フィナシー)
定年に備えてやるべきこと。これを、定年の25年前から準備して実践した素晴らしい方がいます。お名前はKさんと言い、長年証券会社に勤務されていました。60歳の定年を迎えて退職した後に独立し、今は個人で楽しく仕事をこなしています。
定年前の準備と言っても、若い時から財テクをしていたとか、誰もがうらやむ華々しいキャリアを積み重ねてきたという話ではありません。会社の業務で必要とされる専門知識を着実に深め、会社外では専門外の副業をして視野を広げてきたのです。また、そのどちらの仕事でも人との縁を大切に紡いできました。
これらは間違いなく一般的な定年活動に必要とされる大切な要素です。ではKさんが現役時代にどのように準備をされてきたのか、早速ひも解いていきましょう。
転職して証券会社でのキャリアがスタートKさんは大学卒業後、地元で家業の仕事をしていました。しかし、大学4年生の頃に『日本の条件「マネー・お金が地球を駆けめぐる」』というNHK特集を見てからというもの、「お金関係の仕事につきたい」という思いが忘れられず、証券会社への転職を決行。上京することにしました。
転職先の証券会社では、高度経済成長期の華やかしい頃で、バブルも経験。1989年12月に日経平均株価が過去最高値を付けた時代も見てきました。しかし、その後バブルは崩壊し、日経株価7600円台も経験しました。業界も下降路線で破綻と合併も進んでいくのを目の当たりにしました。
本社社員は営業に異動し、その後も退職者が後を絶ちません。Kさんもいよいよ退職が視野に入ってきたところで、人事部長から声がかかり、人事担当者として異動することになったのです。
人事部へ異動してからの活躍それ以降、人事部で退職金制度、報酬制度、関連会社の人事制度を始め、あらゆる制度作りに没頭しました。人事部主催の社内イベントなど、頼まれることはすべてこなしてきました。
仕事を確実にこなすKさんは上司からも重宝され、ライン管理職の道でなく実務マネージャーとして活躍。これが幸いし、専門知識を深めながら多くの実務を経験できました。そのおかげで“デキる実務担当者”として人事部に長期間在籍できたのです。
もしライン管理職の道を歩んでいたら、実務を人に任せるので、自分では専門を極めることはできなかったでしょう。Kさんはこの時点から、まさに定年後に役立つキャリアを築いていたことになります。これからの世の中は「個人として何ができるか」が問われる時代なので、自分の専門、独自のオリジナリティーを極めることが生命線になることでしょう。
副業はまさかの司会業!Kさんは人事部でのキャリアを着実に積み重ねながら、実は、会社の仕事以外に「結婚式の司会」の副業をしていました。学生時代にアルバイトとして始めた仕事でしたが、地元で就職してからも、また東京に転職してからも、関係者から紹介を受けてずっと続けていたのでした。
司会業では本当に様々な人との出会いがあり、1つの会社にいてはわからないことを数多く経験できました。同業者や音楽・装飾・美容関係の人など、あらゆる業界の人と知り合い、そこでできた横のつながりは仕事をする上で大変勉強になりました。
また、ある時には本業の人事部で社内イベントで、司会業での人脈を活かした関係者を手配し、大変スムーズに企画が進んだこともありました。想定外の本業との相乗効果を感じ、「本当に何がどこで役立つのか分からない」とKさんは思いました。
今の時代でこそ「副業で学んだことが本業に役立つ」などと言われていますが、Kさんこそ、それを学生時代から実践していた先駆者と言えるでしょう。
***こうして証券会社と副業の司会業という両軸でキャリアを進めてきたKさんは、60歳の定年後、再雇用を選択せず、退職の道を選択することにしました。先のことはあまり深く考えていませんでしたが、定年後、ある出来事をきっかけに驚くほどうまく歯車が回るようになります。
●そのきっかけになった出来事とは何だったのか? 後編【「会社に使われない人生」を選んだ60代男性、独立を大成功に導いた出会い】で解説します。
髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰
1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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