子供食堂にブランドバッグで現れて…苦情殺到の“傍若無人”な問題児
Finasee / 2023年9月22日 11時0分
Finasee(フィナシー)
桑原桂子さん(仮名)は54歳の主婦。4年前から友人が経営するカフェで働いています。カフェは週4日閉店後に子供食堂を開いていて、毎日20人を超える児童が訪れます。家事が得意で子供好きな桂子さんは人当たりも良く、子供たちからも慕われているようです。
そんな桂子さんには、一人、強烈に印象に残っている子供がいます。美容外科医のお母さんを持つ瞬太君です。瞬太君は裕福な家庭にもかかわらず毎日のように子供食堂にやって来て、自己チューな振る舞いで下級生から恐れられていました。
そんな瞬太君には他の親御さんからも苦情が寄せられ、桂子さんはオーナーに代わって瞬太君のお母さんに会うことになるのですが……。
瞬太君のお母さんから浴びせられた衝撃的な言葉と、その後瞬太君に起きた劇的な変化。桂子さんが「彼のことはずっと忘れないと思う」と振り返る瞬太君との思い出を語ってくれました。
〈桑原桂子さんプロフィール〉
東京都在住
54歳
女性
パート
会社員の夫と2人家族
金融資産1500万円(世帯)
子育てが一段落し、コロナ禍前から地元の子供食堂の手伝いを始めました。子供食堂は私の親しい友人が経営するカフェが運営母体になっていて、営業はカフェの定休日(月曜日)と祝日を除く毎週火曜日から金曜日の17~20時。
小学生から中学生までの子供は無料で晩ご飯が食べられ、カフェの中で宿題をしたり、ゲームをしたり、テレビを見たりして自由に過ごすことができます。
普段は和やかな雰囲気の子供食堂カフェオーナーの友人は専業主婦の私から見ても本当に料理が上手で、ふわふわのエビチリオムライスや南国フルーツたっぷりのカレーなどが子供たちに大人気。カフェのアルバイトの大学生が勉強を見ているのも好評で、コロナ禍で利用者が大きく増え、多い日は30人近くの利用があります。
利用者の多くは小学生。彼らから見れば私などはお祖母ちゃんに近い年齢なのでしょうが、慣れてくると学校や家庭での出来事、好きなお笑いタレントやゲームなどの話を聞かせてくれるようになり、ぐんと親しみが増します。
大半は学童保育の児童ですが、最近はシングルマザーのお子さんが目立ちます。当時4年生だった瞬太君もその一人。でも、他のご家庭とは少し事情が違いました。
利用者の中で浮いていた瞬太君瞬太君のお母さんは美容外科医だと聞きました。オーナーが教えてくれた勤務先の美容外科のウェブサイトを見ると、40歳過ぎとは思えない女優さんのように華やかな雰囲気をまとった女性の写真が掲載されていました。
シングルマザーとはいえ、職業柄、一般的なサラリーマンよりはかなり多い収入があるのでしょう。瞬太君の服装や持ち物を見れば、他のお子さんたちとの差は歴然でした。
子供食堂の本来の趣旨は、「孤食」を余儀なくされる子供たちに居場所を与え、食事の提供を通して「食育」を行うことですから、高所得を理由に利用者を排除することはできません。
しかし、実際に子供食堂にやって来るのは、家庭の事情や経済的な理由で自宅では栄養の行き届いた食事を十分に取ることができない子供たちばかり。瞬太君は行動や性格的な問題もあり、利用者の中で浮いた存在でした。
徐々に目立ち始めた問題行動の数々瞬太君は子供食堂に来ても周囲の子供とコミュニケーションを取ることもなく、ご飯を食べた後はずっとゲームに没頭していました。常に最新の人気のあるゲームソフトを入手していたので、他の子供が物欲しそうに寄って来ても、貸してあげるとか、一緒にプレーするといった発想は全くないようでした。
オーナーが何度か「瞬太君、すごく面白そうなゲームだね。皆がうらやましがっているから、ちょっとだけ他のお友達にも使わせてあげたら?」と声をかけたのですが、「慣れない奴に貸して壊されると嫌だから」と拒否されました。
かと思えば、晩ご飯が好きなメニューの時は、平気で何杯もお代わりを要求します。「そんなに食べるとお腹壊すよ」と言っても、「おいしいものはいくら食べても大丈夫」と譲りません。
一人っ子で年下の子供と接する機会があまりないせいか、低学年の子供たちがテレビのアニメを見ながら大騒ぎしていた時、突然近づいていって「うるさい! 黙れ!」と怒鳴りつけたこともありました。
保護者からの苦情問題行動の多い瞬太君は、子供たちからも敬遠されていたようでした。ある日、常連さんのお母さん2人がオーナーのもとを訪れ、こんな話をしたのです。
「いつもお世話になっている立場で、こんなことを言うのは本当に心苦しいのですけれど、瞬太君、何とかなりませんか? 下級生の子供たちが怖がってるんです。一緒に遊ぶわけでも勉強を教えてもらうわけでもないのに、どうして子供食堂に来るんだか……。瞬太君なら、お家で好きなものをお腹いっぱい食べられるじゃないですか」
「そうですよ。そもそも、グッチのバッグを持ってるような子供が子供食堂に来るっておかしくないですか? お母さんもお母さんですよね。子供食堂のこと、タダでご飯まで食べさせてくれる託児所くらいに思ってるんじゃないですか?」
その後、他の保護者からも同じような苦情を聞く機会が増えてきました。こうなると、子供食堂の運営側としても事態を放置しておくわけにはいきません。忙しいオーナーに代わり、私が瞬太君のお母さんと話をすることになりました。
●瞬太君のお母さんとの面会で発せられた“スーパー自己中”な理論とは? 後編【「言葉を失いました」対面した問題児の母に浴びせられた衝撃の言い訳】で解説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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