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このバラマキのツケは若者世代に…日本の財政の「膨張」が止まらない実態

Finasee / 2023年10月11日 11時0分

このバラマキのツケは若者世代に…日本の財政の「膨張」が止まらない実態

Finasee(フィナシー)

2023年1月、岸田首相が年頭会見で検討を表明した「異次元の少子化対策」。その中で、岸田首相は「少子化問題は待ったなしの課題」であり「将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していく」考えを示しました。今後、さらなる財政拡大が予測されます。

話題の書籍『教養としての財政問題』では、膨張傾向にある財政や社会保障制度の立て直しや経済を成長軌道に乗せる前途について、経済企画庁(現内閣府)勤務経験をもつ島澤諭氏が解説。今回は、本書第1章「財政破綻しなくても財政再建が必要な理由」の一部を特別に公開します。(全3回)

※本稿は、島澤諭著『教養としての財政問題』(ウェッジブックス)の一部を再編集したものです。

膨張を続ける日本の財政

日本では財政の膨張が止まらない。その原因は、政治によるバラマキにある。もちろん、政治のバラマキはそれを是とする国民の側にも原因がある。バラマキは財政破綻確率を高め、バラマキのツケという貧乏くじを若者世代に押し付ける。

新型コロナ禍に対処すると称して、2020年度以降、予算の膨張が止まらない。2020年度147.6兆円、2021年度142.6兆円、2022年度139.2兆円、2023年度当初予算114.4兆円と、前年度補正後予算から25兆円削減されたものの、2019年度から5年連続で100兆円を超えるなど、11年連続で過去最大を更新した。

11年連続過去最大の予算ということは、コロナ禍や景気循環には関係なく、政府の規模が膨張しているということだ。このように、日本財政は、未曽有の規模で肥大化している。

日本ではこれまでも当初予算では厳しめに予算編成を行い、財政規律を守っているようには見せるものの、年度途中に政治の求めに応じて補正予算を組むことで事後的に歳出を増やし、結果として財政規律を危うくしてきた前科がある点には留意が必要である。

実際、現在の日本経済は、景気回復途上にはあるものの、未だコロナ禍の影響からは完全に脱しきれておらず、また最近の資源価格高・円安・物価高の悪影響も考慮すれば、これまで通り年度途中で繰り返し補正予算が編成される可能性が高い。

結局のところ、たとえ当初予算を抑制気味にしたとしても、やはり2023年度もこれまで同様日本財政は拡張するリスクが高い。※1

※1 令和4年度当初予算は107.6兆円と前年度補正後予算142.6兆円から35兆円減じた抑制気味の予算規模であったが、補正予算が編成された結果、補正後の予算規模は139.2兆円と令和4年度当初予算から32兆円膨張し、前年度補正後予算からは3兆円の小幅な縮小にとどまった。

危機の度に肥大化してきた国の歳出
図1-1:一般会計歳出対名目GDP比(%)の推移(出所)財務省資料により著者作成

図1-1は、2023年度に至るまでの、一般会計歳出対名目GDP(国内総生産)比(%)の推移を示している。同図からは、

①バブル崩壊以降、経済危機を経験する度に財政規模は拡大している
②経済危機が去った後も、財政規模の高止まりが続き、元の水準に戻る前に次の経済危機対応のため、財政規模が拡大している
③財政規模の拡大幅は経済危機を経るごとに大きくなっている ※2

ことが分かる。このように、バブル崩壊以降、国の歳出には、大きな経済危機が生じる度に、肥大化してきた歴史がある。

※2 経済危機に対する財政出動の規模の大きさを一般会計歳出対名目GDP比で見ると、バブル崩壊時には0.8%だったものが、アジア金融危機では2.3%、リーマン・ショック5.1%、そして新型コロナ禍では15.1%となっている。

図1-2:一般会計税収対名目GDP比(%)の推移(出所)財務省資料により著者作成

図1-2は、2023年度に至るまでの、一般会計税収対名目GDP比(%)の推移を示している。同図からは、

①一貫して、一般会計歳出を下回っている
②バブル崩壊までは、一般会計歳出とほぼパラレルに推移していた
③バブル崩壊以降、一般会計税収はほぼ横ばいか微増で推移していた
④足元では、一般会計税収が急増している

ことが分かる。

累増する国債残高
図1-3:政府債務残高対名目GDP比(%)の推移(出所)財務省資料により著者作成

一般会計歳出と税収のこれまでの推移を見ると、歳出が税収を上回って推移しており、一貫して財政赤字が発生している。財政赤字は経済成長を続ける経済にあっては合理的である。

なぜなら、将来のGDPが現在よりも増加することが見込めるのであれば、将来の経済成長による所得増加分を担保に財政赤字という「借金」で現在の歳出に必要な財源の一部を賄えば、現在と将来の歳出の水準を平準化できるからである。

逆に、将来のGDPが現在よりも低下することが見込まれるのであれば、財政赤字という「借金」ではなく、将来の財源減少に備えて財政黒字という「貯蓄」をし、将来の支出に備えるのが合理的となる。

バブル崩壊以降の日本経済はそれ以前の高度成長はもとより安定成長径路からも大きく外れ、2010年以降の平均経済成長率は名目0.7%、実質0.6%となるなど、近年の日本経済は低迷を続けている。

つまり、現代の日本は、かつてのような高い経済成長が見込めないため、緊急事態への対応により発生した財政赤字という「借金」を経済成長による税の自然増収で「返済」するのが非常に困難な状況に陥っている。

この結果、図1-3のように、国の債務は累増し、日本財政の持続可能性が危惧される事態となっている。

●第2回(補正予算はもはや“年中行事”化…政府が「バラマキ」を続ける根本的な要因)では、GDPが増える仕組みや自然に解消されることは少ない赤字の種類について解説します。

『教養としての財政問題』

島澤諭 
発行所 ウェッジブックス
定価 1,980円(税込)

島澤 諭/関東学院大学 経済学部 教授

1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。著書に『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)など多数。

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