父が他界…葬儀後、50代男性が「エンディングノート」を見つけて落胆した理由
Finasee / 2023年9月26日 11時0分
Finasee(フィナシー)
文也さん(男性、56歳)は私立大学の教授。社会学の分野である程度名の知られた研究者です。
大学院卒業後、若いころは地方の大学を転々とし、安定したポストが得られず苦労しましたが、15年前にとある地方都市の大学に職を得て、10年前に教授のポストに就きました。
大学院時代の同級生と結婚し、娘と息子にも恵まれました。妻は首都圏の大学で同じく教授をしており、一緒に住んだことはほとんどありません。子どもが小さい頃は毎週妻と子の住む家に帰っていましたが、子どもが独立した後は季節に一度集まる程度です。子ども2人は成人しそれぞれ一人住まいをしています。
とはいえ、妻や子どもとはLINEやインスタグラムで頻繁に連絡をしており、お互いの生活の様子はよく知っています。それぞれに趣味を楽しんでお互いの投稿にコメントすることもしばしばです。一般的ではないかもしれないけれど、自立した個人の集まりで、新しい家族のかたちだと文也さんは誇りに思っています。
父の死――“その日”は突然やってきた文也さんの父母は文也さんの幼少期から不仲で、文也さんの父親が祖父母の介護のため退職後に地元に帰ったのを機に別居となりました。祖父母はその後亡くなり、父はそのまま生家にとどまっていました。
父本人から1年前にがんがみつかり療養中であることは知らされていたのですが、病院から容体が急変して亡くなったという連絡がありました。
母に連絡すると一切を文也さんに任せるとのことだったので、文也さんは父の地元の葬儀社をインターネットで探し、急いで契約して遺体の引き取りから葬儀の段取りを依頼しました。また、父のきょうだいたちの連絡先を年賀状から見つけて葬儀の連絡をしました。あらためて連絡してみると、父のきょうだいたちも体調が悪かったり、施設に入っていることが分かったりして、実際に葬儀に来るのは1人となりました。子供のころお盆に集まった時に遊んでくれたおじやおばが、葬儀にも来られないくらい高齢になったことを実感して文也さんはさびしさを覚えました。
知らせのあった翌日、なんとか都合をつけて父の生家に行き葬儀をしました。とはいえ、親戚以外に誰に連絡してよいかわからず、結局父の弟と文也さんだけの小さい葬儀となりました。
父のエンディングノートを発見父のお骨をもって父の生家に帰り、少しホッとしたところで見回すと、きれいにはなっていますが、何しろ古い家でモノがたくさんあります。誰が住む予定もないので、いつか片付けないといけません。立派な仏壇や代々の親族の遺影もあり、池には鯉まで泳いでいます。これらをどうしてよいか見当もつきません。
とりあえず、通帳などを探そうと父の机の引き出しを開けてみると、もともと事務仕事をしていた父らしくきちんと整理がされており、すぐに見つけることができました。さらに違う引き出しを開けると、そこにはエンディングノートが残されていました。どうやらがんが見つかった際、書き記したようです。昔の思い出から、治療や葬儀の希望まで、きちんと書き込まれていました。
また、実は葬儀の段取りも考えていたようで、友人の連絡先や葬儀社との契約書がありました。結構多くの人とのお付き合いがあり、葬儀もかなり立派なプランを契約していたようです。急なことでもあり、父がこんなに備えていることを文也さんは想像もしていなかったので、自分なりの方法で父を見送りましたが、結局は希望通りにしてあげられなかったことが分かってがっくりしてしまいました。がんの治療についても、父の思いが十分に伝わったのかどうか定かではありません。
ただ、読み進めると文也さんが生まれたときのことも書いてあり、父が自分のことを思ってくれていたことを知って涙したのでした。
●葬儀を終え、ホッとしたのもつかの間。エンディングノートにも書かれていなかった驚きの事実が次々と明らかに……。後編(父の他界後、50代男性が知った「驚きの事実」)で、今回の文也さんのケースから学ぶべき教訓とともにお届けします。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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