ルネサスエレクトロニクスが株価6倍宣言! 実現への手法と気になる株主還元は?
Finasee / 2023年9月26日 17時0分
Finasee(フィナシー)
2023年に入りルネサスエレクトロニクスの株価が急伸しています。業績が足元で大きく拡大しており、さらなる成長を期待した買いが集まっていると考えられます。
【ルネサスエレクトロニクスの業績】
売上高 純利益 2021年12月期 9939.08億円 1195.36億円 2022年12月期 1兆5008.53億円 2566.32億円 2023年12月期(予想) 非開示 非開示※2023年12月期(予想)は、同第2四半期時点における同社の予想(Non-GAAP売上収益の予想は1兆908.83億円~1兆1058.83億円)
出所:ルネサスエレクトロニクス 決算短信
【ルネサスエレクトロニクスの株価(月足、2020年8月~2023年8月)】
出所:Investing.comより著者作成ルネサスエレクトロニクスは市場評価の高さから「JPXプライム150指数」の構成銘柄に選ばれています。ルネサスエレクトロニクスはどのような企業なのでしょうか。誕生の経緯と、注目の「時価総額6倍宣言」について紹介します。
エレクトロニクス大手3社の事業統合で誕生ルネサスエレクトロニクスは主に自動車向け半導体を手掛ける企業です。2022年はマイコン(MCU:Micro Controller Unit)で世界首位のシェアを獲得しており、大株主にはデンソーやトヨタ自動車 など大手自動車関連企業が名を連ねています(2023年6月末)。
ルネサスエレクトロニクスは電機大手3社の半導体事業を統合して誕生しました。NECから分社化した「NECエレクトロニクス」に、日立製作所と三菱電機から分社化した「ルネサステクノロジ」を統合する形で2010年に設立されます。
大手同士の合併は競争の激化が後押ししたとみられています。半導体市場では新興国企業の台頭が進み、激しい競争が起こるようになりました。NECエレクトロニクスとルネサステクノロジもうまく利益を出せず、大きな損失を計上していました。
【NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの純損益(2009年3月期)】
・NECエレクトロニクス:-826.25億円
・ルネサステクノロジ:-2032.57億円
※NECエレクトロニクスは米国会計基準、ルネサステクノロジは日本会計基準
出所:NEC リリース
現在のルネサスエレクトロニクスは好調です。半導体需要が増加し自動車向けや産業・インフラ向けで強い引き合いが続いているほか、近年は円安による増収効果も働きました。直近の2022年12月期は最高益を記録しています 。
【純損益の推移】
出所:ルネサスエレクトロニクス 決算短信より著者作成自社株買いで初の株主還元を実施 配当はいつ?ルネサスエレクトロニクスは2022年4月、設立以来で初の株主還元として自社株買いを実施しました。2023年2月にも好調な業績を背景に自社株買いに踏み切っています。
ただしこれらは主に筆頭株主の産業革新機構(INCJ)からの取得を目指したもので、買い取り価格はいずれも直近の株価より安く設定されました。したがって一般の投資家の応募は少なかったとみられます。
いずれにせよ、ルネサスエレクトロニクスの株主還元に対する積極化は多くの投資家が好感するところでしょう。現在は配当金に対する期待が高まっていると考えられます。
日本経済新聞は2023年3月 、利益に対する有利子負債の割合が低下していることを理由にルネサスエレクトロニクスが配当を検討していると伝えました。経営陣の「配当再開を具体的に検討している」というコメントも掲載され、報道直後はルネサスエレクトロニクス株式が買われる展開も見られました。
ルネサスエレクトロニクスは配当金について、中間配当と期末配当の年2回実施することを基本方針としています。2023年度は中間配当をすでに見送っていますが、期末配当は未定です。仮に実施すればさらに買いが集まるかもしれません。
時価総額6倍宣言 どう実現する?ルネサスエレクトロニクスは2022年9月、時価総額を6倍にすると発表し注目を集めています。時価総額6倍とは株価が6倍に上昇することと同義で、2022年9月末の株価(1396円)から算出すれば8376円となります。2023年は顕著に値上がりしていますが、8月末でまだ2450円であり、依然3倍以上の上昇余地を残していることになります。
時価総額6倍はどのように達成するのでしょうか。2023年5月に開催したアナリスト向け説明会「2023 Capital Market Day」では、売上高2倍、市場価値3倍を掛け合わせて説明されています。
売上高2倍は、年率7~8%で成長させるという従来の中期経営計画の実施で到達するとしています。主要な施策として生産能力の拡大と在庫の管理活用、M&Aを挙げました。
ルネサスエレクトロニクスは2017年以降、大型の買収を実施してきました。M&Aは今後も重要な成長ドライバーになりそうです。
【ルネサスエレクトロニクスの主要な買収企業】
・2017年2月:インターシル社(約3219億円)
・2019年3月:IDT社(約6930億円)
・2021年8月:ダイアログ社(約6240億円)
出所:ルネサスエレクトロニクス リリース
市場評価3倍は、当面はディスカウントの解消に努めて実現を目指すとしています。施策として、不況時に利益を確保する運営、株主還元、キャッシュ創出力の強化を挙げました。気になる株主還元は、配当金は継続的な実施を前提に小規模に開始し、自社株買いは機動的に実施するとしています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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