東芝は再建できるか? TOB成立で上場廃止に 2017年にはウェスチングハウス破綻で損失1.2兆円
Finasee / 2023年9月27日 18時0分
![東芝は再建できるか? TOB成立で上場廃止に 2017年にはウェスチングハウス破綻で損失1.2兆円](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_12542_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
成長の起爆剤として活用されるM&Aも、失敗すれば経営に打撃を与えることになります。東芝によるウェスチングハウス買収はその代表的なケースといえるでしょう。日本を代表するエレクトロニクス企業は、一転して経営危機に苦しむようになります。
原子力大手を6200億円で買収東芝は2006年2月、原子力発電大手のウェスチングハウスを54億ドル(約6210億円)で買収しました。目的はエネルギー関連事業の強化です。
東芝は国内の原子力発電プラントで高いシェアを獲得しており、エネルギー事業は重要な稼ぎ柱になっていました。原子力発電への需要がさらに増加すると見込み、世界市場で実績のあるウェスチングハウスの買収を決めます。東芝が沸騰水型原子炉(BWR)、ウェスチングハウスが加圧水型原子炉(PWR)とそれぞれ異なる技術に強みがあり、補完関係が期待できたことも買収を後押しした要因だとみられます。
ウェスチングハウスの買収は、短期的には業績に大きく貢献しました。2007年3月期から連結が始まり、翌期にはエネルギー事業を含む「社会インフラ」セグメントは最大の収益源へと成長しています。
【当時のセグメント営業損益(2006年3月期~2008年3月期)】
2006年3月期 2007年3月期 2008年3月期 デジタルプロダクツ(パソコンなど) 209億円 158億円 150億円 電子デバイス
(半導体など) 1233億円 1197億円 741億円 社会インフラ
(電力など) 765億円 968億円 1313億円 家庭電器 27億円 97億円 39億円 その他 180億円 187億円 147億円
出所:東芝 決算短信
順調だったウェスチングハウスが傾きだしたのは2016年です。原子力発電所の建設を手掛けていたストーン・アンド・ウェブスターの買収がきっかけでした。
ストーン・アンド・ウェブスターでは米国原子力発電所4基の建設が進行していました。しかし想定よりも建設コストが大幅に増加し、巨額損失が避けられないことが判明します。2016年12月には東芝本体にも数千億円規模の損失が発生する可能性について発表しています。寝耳に水の発表は市場に衝撃を与え、東芝株式は大きく売り込まれました。
【当時の東芝株式(日足終値、2016年1月~2017年3月)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/9/b/800m/img_9b163f4211c47d710c501ac16b23a14272467.jpg)
ウェスチングハウスは2017年3月、再建を断念し破産を選択します。東芝はウェスチングハウス破綻に関連する損失として1兆2400億円を計上し、全体でも9600億円以上の純損失となります(2017年3月期)。利益剰余金の大幅な減少を主因に株主資本が約8800億円も失われ、5500億円を超える債務超過に転落しました。2015年に露呈した不正会計問題もあり、東芝は存続が危ぶまれる事態に陥ります。
【当時の純損益(2013年3月期~2017年3月期)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/800m/img_ecbafee35ebc7115a600bba485a86b8b43925.jpg)
東芝は2017年12月に約6000億円の増資を実施し、債務超過を解消します。これにより当面は上場を維持することに成功しました。しかしその後は一転して上場廃止へと歩みを進め、70年にわたる上場の歴史に幕を下ろすことになります。
TOBで上場廃止に 東芝は再建できるか経営危機後の東芝では、外資系ファンドによる買収案や会社を分割して企業価値を高める案など、さまざまな再建案が模索されてきました。しかしいずれも実現には至らず、東芝は2022年4月に再建案を公募します。
公募には投資ファンドなど複数の陣営が応募しますが、最終的に国内企業連合による出資をまとめた日本産業パートナーズの案が採用されました。株式公開買い付け(TOB)により約2兆円で東芝株式の3分の2以上を取得する計画です。
株式公開買い付けは2023年8月から始まり、およそ8割が応募し成立しました。東芝は上場廃止となり、応募しなかった個人株主もスクイーズアウト(強制買い取り)によって現金化される見込みです。
東芝は増資でアクティビスト(物言う株主)を自ら招き入れており、経営陣との対立などから経営の混乱がたびたび指摘されてきました。日本産業パートナーズは、非上場化後は安定株主の下で経営再建を目指すとしています。
東芝はどれくらいで復活できるのでしょうか。報道によると、日本産業パートナーズは5年程度での再上場を検討しているとも伝えられています。しかし稼ぎ柱を失った東芝の再建は簡単ではないでしょう。日本を代表する大企業の行方は今後も注目を集めそうです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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