「私は家政婦じゃない…!」穏やかだった義父が認知症に… 突然始まった在宅介護生活
Finasee / 2023年9月29日 17時0分
Finasee(フィナシー)
小林美智子さん(42歳)は、3歳年上の夫・亮太と中学2年の娘・香織、そして亮太の父である一郎(76歳)と4人で暮らしていた。散歩を日課とする穏やかな一郎は、美智子さんのことを実の娘のようにかわいがってくれた。
とくに美智子さんが作る料理を、一郎はよく褒めてくれた。決して手の込んだ料理ではなかったが、美智子さんは一郎が喜んでくれる姿をうれしく思っていた。
美智子さんは自身が小さいときに病気で父親を亡くしており、実父と過ごした記憶がほとんどなかったが、義父の優しい姿におぼろげな実父の姿を重ねることすらもあったそうだ。
突如として訪れた義父の在宅介護そんな仲むつまじい家族に亀裂が入るきっかけが生まれたのはある夏のこと。一郎が自宅の階段を踏み外し、腰に大けがを負ってしまう。パートから帰宅した美智子さんは倒れている一郎を見つけ、慌てて救急車を呼んだ。
幸い、命に別条はなかった。しかし一郎は右脚を骨折してしまっていた。満足に歩くことができなくなってしまったことで介護が必要になってしまった。
「当時、夫は出張も多い仕事で忙しく、私は近所のスーパーのパートタイムで働いていました。経済的な余裕があるわけでもありませんでしたし、時間を作りやすい私が頑張らないといけないんだと思いました」
美智子さんは夫と相談し、娘も含めた家族3人で協力しながら自宅介護をしていくことに決めた。
「自宅介護するからといって、お金がかからないってわけじゃないんですよね」と、美智子さんは当時を振り返る。可動式のベッドを購入し、自宅の廊下やお風呂場などに手すりを設置するリフォームをしたことで急な出費が生まれ、貯金をとりくずす事になった。当然、一郎の通院費もかさんでいった。
「でも、1番つらかったのはお金のことじゃありません」と美智子さん。
もともと散歩が日課だった一郎さんは事故以降、出掛けることが少なくなった。比例して家でぼんやりとしていることが多くなり、思うように身体を動かせなくなってしまった一郎は少しずつ変わっていく。
まるで人が変わってしまったかのような義父あるとき、美智子さんが掃除機をかけていると一郎の寝室から異臭が漂ってきた。掃除機を止めて様子を見に行くと、一郎がベットの横で立ち尽くしている。
「私がさらに近づくと、お義父(とう)さんが来るなと大きな声を出しました。私はお義父(とう)さんが声を荒らげるのを初めて見たので驚きました。お義父(とう)さんは足が不自由なせいでトイレに間に合わなかったんです」
それがきっかけかは分からない。しかしその出来事が一郎のプライドを深く傷つけたことは確かなのだろう。
以来、一郎は美智子さんにちょっとしたことでもつらくあたるようになっていく。
いつもと変わらない味付けの煮物を塩辛くて食べられないと言われ、薄味に気を付けたみそ汁は味がしないと文句をつけられた。
どれもかつて一郎が褒めてくれた料理だった。美智子さんは夜中、食べ残された料理をゴミ箱に捨てながら誰にも見られないよう涙を流したこともあった。
「夜中に大声で呼ばれることも増えました。水を飲ませろ。トイレに行かせろ。部屋が暑い。穏やかだった頃からは想像もつかないお義父(とう)さんの物言いに、ショックを受けました」
美智子さんの心身は少しずつすり減っていった。しかし夫は相変わらず仕事ばかり。家に帰れば疲れているの一点張りで、介護についての相談すらできる状態ではなかった。
義父の介護、仕事ばかりの夫に不満が募るなか、美智子さんをさらにショックな出来事が襲う。
事故をきっかけに一段と老け込み、ふさぎ込んでいた一郎に認知症の症状が出始めたのだ。
「その日は夫が九州に出張していて、私は夜中にお義父(とう)さんに呼び出されました。理由はいつものように、水を飲ませてくれというささいなものでした。けれど、寝室に入った私をお義父(とう)さんは『淑子』と呼んだんです。淑子というのは亡くなったお義母(かあ)さんの名前で……」
ただ名前を間違えただけ。お義父(とう)さんは寝ぼけていただけかもしれない。美智子さんはそう思い込むことにした。しかしこれまで過ごした幸せだった日々の思い出や、自分が抱えていた介護の苦労が塗りつぶされていくような、大きな徒労感を味わった。
●義父の病状と美智子さんの精神状態はどうなっていくのでしょうか? 後編「『義父さえいなければ…』介護で追い詰められた40代女性、そのとき家族は…」にて、詳細をお届けします。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
Finasee編集部
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