普通の会社員を襲ったお金の二重苦…崩れ去った“ゆとりある老後”への幻想
Finasee / 2023年10月13日 11時0分
Finasee(フィナシー)
槇原浩さん(仮名)は30年以上、都内の下町にあるメーカーで働いています。勤務先はIT機器の部品を手掛けていて独自の技術への評価が高い一方、70代の創業社長は経営には素人同然で、生来の人の良さから採算の取れない仕事を平気で受けてくることもありました。その上コロナ禍で業績が急激に悪化し、社長は会社を手放して引退することを決意します。
新しいオーナーはIT企業の創業者で、子飼いの若手を連れて乗り込んできました。人事や給与体系などは大きく見直され、槇原さんは年収ベースで50万円近くの減収を余儀なくされました。
さらに間の悪いことに、槇原さんは戸建ての自宅を購入した際、10年固定金利の住宅ローンを組んでいて、来年早々には固定金利期間が終了します。そのタイミングで再度固定金利を設定するか、変動金利に移行するかを決めるのですが、金利の底でローンを借りていた槇原さんにとってはいずれにしても大きな負担増になりそうでした。
このままでは老後破産まっしぐらと頭を抱える槇原さんご夫妻を救ったのが、長女から紹介されたあるお金の専門家でした。
「いただいた助言はどれも目からウロコで、大変有用でした。素人の浅知恵では限界があり、今回の経験を通してプロの意見を聞いてみることの大切さを痛感しました」。そう語る槇原さんが見事崖っぷちから脱出するに至った体験を、ご本人に振り返ってもらいました。
〈槇原浩さんプロフィール〉
千葉県在住
51歳
男性
部品メーカー勤務
パートの妻、社会人の長女・長男と4人家族
金融資産350万円
数年前、老後資金2000万円不足問題がメディアなどで大きく取り上げられた時は40代で、正直、自分ごとという感覚はあまりありませんでした。私と同じ中小企業のサラリーマンだった親も特にお金に困ったふうもなくリタイアライフを楽しんでいるように見え、自分の老後に対して楽観的に構えていたのです。
会社の買収でまさかの収入ダウンしかし、コロナ禍で勤務先の業績が大きく悪化して“身売り”をするに至り、大きく状況が変わりました。新しい社長はIT企業の創業者で、「フラットな組織作り」をモットーに人事制度や給与体系などが一から見直されました。
この見直しで割を食ったのが私たちベテラン世代です。成果型賃金制度とやらで給与がカットされた上、若手登用のスローガンの下で抜擢された年下の部下に思い切り振り回されているありさまです。
給与を元に算出されるボーナスも当然大きく減り、年収ベースで50万円を超える減収になりました。今年は3%の賃上げが実施されましたが、そんなものは“焼け石に水”です。
新聞記事に「子育てを終えた50代は老後資金を貯めるチャンス」と大書されていましたが、今の収入ではとてもそんな余裕はありません。
住宅ローンの返済も負担増が予想され……さらに間の悪いことに、わが家は自宅を購入した際に10年固定金利の住宅ローンを利用していて、来年早々、固定金利期間が終了します。その後は再度固定金利を設定するか、変動金利に移行するかを選択することになりますが、このまま金利が上がっていったら月々の返済負担が大きく増えてしまうこと必至です。
ローンを組んだ42歳の頃に思い描いた50代の自分の経済状況は、もっとゆとりがあるはずでした。ドラッグストアのパートで働く妻とは、子供たちが独立したら、私の両親のように2人でゆっくり温泉巡りでもしたいねと話していました。
しかし、現実はそのように甘いものではなく、今の状態が続けば退職金頼みで老後に突入することになりそうです。その退職金だって、どうなることか分かったものではありません。
住宅ローンはまだ1500万円以上残っており、60歳以降も返済していく必要があります。定年までは今の会社にしがみついているつもりですが、退職後はなんとか仕事を探し、老骨に鞭打って地道に収入を得ていくしかなさそうです。
心配した長女が提案した「お金の専門家」への相談先月妻が50歳を迎え、誕生日には娘と息子が私たち夫婦を都心のしゃれた和食店に招待して、お祝いの会を催してくれました。
せっかくの会なのに私たちの顔色がさえなかったことが気になったのでしょう。看護師をしている娘が「体の具合でも悪いの?」と尋ねてきたので、その場は「この年になると、老後のこととかいろいろ心配ごとが多いんだよ」と笑って取りなしました。
娘は子供の頃から人の気持ちに敏感なタイプです。私たちの様子がいつもと違うと思ったらしく、帰宅後、「老後のお金のこととか心配なら、この人に相談してみるといいよ」と名刺を渡されました。それがファイナンシャルプランナー(FP)の川端さんと出会ったきっかけです。
昭和のサラリーマンの私には、こんな情けない話を赤の他人に相談するのは恥ずかしいという気持ちがありました。背中を押したのは妻です。わが家の家計を握る妻は「今何とかしないと大変なことになる」と言って、強引に私を川端さんの事務所に引っ張っていったのです。
●槇原浩さんを突如襲ったお金の危機。FPの川端さんの助言で見出した解決策とは? 後編【老後破産を覚悟した51歳男性が、“使えるものは使う精神”で見つけた解決策】で詳説します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
Finasee編集部
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