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骨肉の争いの末に消滅した大塚家具 ヤマダの買収戦略は成功したのか

Finasee / 2023年10月11日 18時0分

骨肉の争いの末に消滅した大塚家具 ヤマダの買収戦略は成功したのか

Finasee(フィナシー)

経営者の交代は企業生命を脅かすことがあります。大塚家具は2015年に創業者から子へ引き継がれました。しかし業績不振に陥り、2019年にヤマダホールディングスに買収されます。そして2022年に消滅しました。

大塚家具はなぜ姿を消すこととなったのでしょうか。経緯を振り返ります。

骨肉の争い後に経営不振 43億円で買収される

大塚家具では2014年頃から創業者の大塚勝久(おおつか・かつひさ)氏と娘の大塚久美子(おおつか・くみこ)氏が経営権を巡って対立するようになりました。勝久氏が高級路線を目指す一方、久美子氏はミドル層をターゲットとするなど、経営の考え方の違いが内紛につながったとみられています。

対立は先鋭化し、両氏は互いに退任を求める議題を2015年3月の株主総会へ提出しました。議決権の保有割合は拮抗(きっこう)していたため、上位株主を巻き込んだ委任状の争奪戦へと発展します。

争いを制したのは久美子氏でした。大塚家具は従来の高級路線から脱却し、中価格帯の商品を扱うようになります。しかしビジネスモデルの転換はうまくいかず、大塚家具は大幅な赤字を計上するようになりました。株価も経営権が久美子氏に移る前の水準を割り込んで値下がりします。

【大塚家具の純利益】

出所:大塚家具 有価証券報告書より著者作成

【大塚家具の株価(月足 2014年12月~2018年12月)】

出所:Yahoo!ファイナンスより著者作成

経営不振に陥った大塚家具は2019年12月、ヤマダホールディングス(当時はヤマダ電機)を引受先とした第三者割当増資を実施し43.7億円を調達します。議決権の過半をヤマダホールディングスが握ることとなり、大塚家具は子会社化されました。

大塚家具は消滅 現在はブランドのみ存続

大塚家具はヤマダホールディングスの下で再建を図りますが、業績の回復には至りません。最終赤字は2020年4月期に77.2億円まで拡大し、翌期も23.7億円の純損失を計上します(決算期の変更に伴い、2020年4月期は16カ月間の変則決算)。

ヤマダホールディングスは経営効率とガバナンスの強化を目指し、2021年9月に大塚家具の完全子会社化に踏み切ります。これにより大塚家具は上場廃止となりました。さらに2022年5月には傘下のヤマダデンキを存続会社とする吸収合併を実施し、大塚家具は消滅します。50年以上の歴史を持つ家具の老舗が姿を消した瞬間でした。

【大塚家具の株価(月足 2019年12月~2021年8月)】

出所:Yahoo!ファイナンスより著者作成

企業体は消滅したものの、「大塚家具(IDC OTSUKA)」の名前はブランドとして残ることとなりました。現在もショールームなどの専門店やヤマダデンキの店舗などで家具の販売が続いています。

「暮らしまるごと」カバーするヤマダの戦略

ヤマダホールディングスが大塚家具を取得した狙いもまた、ビジネスモデルの変革でした。

ヤマダホールディングスは2010年代前半から「第三の創業期」と位置付け、衣食住の「住」に特化し家電以外の領域、特に住宅分野への進出を強化しています。2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化したほか、2012年には住宅設備メーカーのハウステックを、さらに2017年には住宅リフォームのナカヤマを買収しました。大塚家具の買収は、インテリア部門の強化を目指したものとみられています。

店舗の改革も進められました。2017年から展開する「家電住まいる館」では、家電だけでなくインテリアの販売を行うほか、住宅リフォームも請け負っています。2021年には、2018年に公表した「暮らしまるごと」戦略を体現する新コンセプト店「LIFE SELECT」をスタートさせ、非家電の割合を高めた大型店舗の展開が進んでいます。

家電以外の取り組みは業績にも貢献しています。家電や情報家電の売上高は減少傾向にありますが、住宅や家具・インテリアはおおむね堅調で、本業の落ち込みをカバーする構図が続いています。特に住宅事業が含まれる「住建事業」は堅調で、セグメント利益は営業利益全体のおよそ2割を占めるほどになりました。

【部門別売上高(2023年3月期)】
・家電:8582.10億円(-3.1%)
・情報家電:3091.19億円(+1.6%)
・住宅関連:2918.23億円(+1.8%)
・家具・インテリア、GMS:785.67億円(+3.3%)
※()は前期比

出所:ヤマダホールディングス 決算説明会資料

【ヤマダホールディングスのセグメント業績(2023年3月期)】

  売上高 営業利益  デンキ事業   1兆3108.95億円 318.16億円  住建事業 2723.60億円 85.76億円  金融事業 24.78億円 2.83億円  環境事業 318.03億円 14.89億円  その他事業 325.26億円 10.65億円 (参考)全体     1兆6005.86億円    440.66億円


出所:ヤマダホールディングス 決算短信

ヤマダホールディングスは2021年、2024年度までに売上高2兆円を目指す中期経営計画を発表しました。「暮らしまるごと」戦略は根幹を担っています。家電以外の事業の成否は、今後もヤマダホールディングスにとって重要な要素となりそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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