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たばこ販売数世界3位のJT ロシア依存は今後どうなる?

Finasee / 2023年10月17日 17時0分

たばこ販売数世界3位のJT ロシア依存は今後どうなる?

Finasee(フィナシー)

日本たばこ産業(JT)へ投資する人が増えているようです。株価の上昇が続いており、3年間でおよそ1.8倍に値上がりしました(2023年9月末時点)。

【日本たばこ産業の業績】

  売上高 純利益  2021年12月期 2兆3248.38億円 3384.90億円  2022年12月期 2兆6578.32億円 4427.16億円  2023年12月期(予想)     2兆7590.00億円   4570.00億円

※2023年12月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想

出所:日本たばこ産業 決算短信

【日本たばこ産業の株価(月足、2020年9月~2023年9月)】

出所:Investing.comより著者作成

日本たばこ産業は収益性と市場評価性の双方の基準を満たし「JPXプライム150指数」に選ばれています。

日本たばこ産業とはどのような企業なのでしょうか。事業の概要と注目の配当利回りを紹介します。

JPXプライム150で最大の食料品銘柄

日本たばこ産業は国が独占販売していた葉たばこ事業を民営化し1985年に設立された企業です。代表的な食料品株で、JPXプライム150指数の構成銘柄では最大の時価総額を持ちます。

【JPXプライム150指数の食料品株、時価総額上位3銘柄】
・日本たばこ産業:6兆6060億円
・味の素:3兆0764億円
・アサヒグループホールディングス:2兆7956億円
※2023年10月6日終値時点

出所:日本取引所グループ JPXプライム150指数、Yahoo!ファイナンス

収益のほとんどは「たばこ事業」が占めています。「医薬事業」と「加工食品事業」にはそれぞれ1987年と1998年に参入していますが、業績へのインパクトは小さく補完的な位置付けにとどまっています。

【セグメント業績(2022年12月期)】

  売上高 営業利益  たばこ事業   2兆4174億円   6794億円  医薬事業 829億円 111億円  加工食品事業   1555億円 42億円  その他事業 20億円 -411億円


出所:日本たばこ産業 業績・財務ハイライト

たばこの販売となると将来性を懸念する声は少なくないでしょう。国内では市場の縮小が続いており、紙巻きたばこの販売数量は2012年~2022年でおよそ半減、販売金額は3割以上減少しました(出所:日本たばこ協会 たばこ統計データ)。

しかし世界的には成長を予想する声もあります。市場調査を手掛けるグローバルインフォメーションは、世界のたばこ市場は2023年~2028年に年間3.48%成長し、市場規模は1兆3288億ドルに到達すると予測しました(出所:グローバルインフォメーション 紙巻たばこ(シガレット)市場:世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年の予測)。

M&Aで世界3位のたばこ販社に

日本たばこ産業はM&Aに積極的な企業として知られます。1999年にRJRナビスコ社の米国外たばこ事業を取得したほか、2007年には世界最古のたばこブランド『ソブラニー』で知られるギャラハー社を買収しました。2016年にもナチュラル・アメリカン・スピリット社の米国外たばこ事業を買い取っています。

【日本たばこ産業の主な海外M&A】
・1999年:RJRナビスコ社の米国外たばこ事業(9440億円)
・2007年:ギャラハー社(1兆7200億円)
・2016年:ナチュラル・アメリカン・スピリット社の米国外たばこ事業(5914億円)
※()は当時の為替レートで算出した買収金額

出所:日本たばこ産業 有価証券報告書

海外で大型M&Aを繰り返した結果、日本たばこ産業の販売数量は世界3位を占めるまでになりました(中国専売公社を除く)。たばこ事業における海外売上高比率は6割を超えるとみられています。

【自社たばこ製品の地域別売上高(2022年12月期)】
・アジア:8049億円
・西欧地域:5388億円
・EMA(※):9715億円
※アフリカ、中近東、東欧、トルコ、南北アメリカ大陸およびすべての免税市場
※EMAにはトルコ、ルーマニア、ロシアを含む

出所:日本たばこ産業 決算短信

M&Aは売り上げの維持に貢献してきました。たばこの総需要は2018年~2022年で0.5%減少しましたが、日本たばこ産業の出荷量は同時期に0.7%増加しています。海外事業や企業の買収でシェアを獲得したことが背景にあるとみられます(出所:日本たばこ産業 統合報告書)。

好配当で人気 ロシア事業には懸念

日本たばこ産業は高配当銘柄として人気があります。配当性向(※)は上昇傾向にあり、2020年度には88%に達しました。2022年度も75%と高水準です。2023年12月期は年間で188円の配当金を予想しており、予想配当利回りは5%を超えています。

※配当性向:配当金が純利益に占める割合。

【配当金および配当性向の推移】

出所:日本たばこ産業 決算短信より著者作成

【日本たばこ産業の予想配当利回り(2023年12月期)】
・年間予想配当金:188円
・株価:3303円(2023年10月6日終値)
・予想配当利回り:5.69%
※予想配当金は第2四半期時点における同社の予想

出所:日本たばこ産業 決算短信、Yahoo!ファイナンス

利益の大部分を株主へ還元する日本たばこ産業は投資家に選好されやすく、近年は株価も好調です。

しかしロシアの動向には注意した方がよいかもしれません。日本たばこ産業はロシアへの依存が比較的高い企業です。ロシアのたばこ物流大手のメガポリス社へ出資しており、同社に対する売り上げは全体の1割を超えています。ロシア・ウクライナ問題が顕在化した際は株式市場で売られる展開も見られました。

【露メガポリス社に対する売り上げ】
・2021年12月期:2584億円(11.1%)
・2022年12月期:3875億円(14.6%)
※()は総売上高に占める割合

出所:日本たばこ産業 有価証券報告書

【日本たばこ産業の株価(日足終値、2021年12月~2022年3月)】

出所:Investing.comより著者作成

日本たばこ産業はロシア事業の継続が困難となった場合、再び売りを呼び込む可能性があります。配当利回りは魅力的ですが、地政学リスクには注意したいところです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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