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金利が上がるとどうなる? 預貯金の利率が上がる一方、“苦しい状況”に追い込まれる人も…

Finasee / 2023年10月16日 17時0分

金利が上がるとどうなる? 預貯金の利率が上がる一方、“苦しい状況”に追い込まれる人も…

Finasee(フィナシー)

みなさんは「金利」を意識したことはありますか?

住宅ローンを組んでいる人は、多少なりとも意識していると思います。フラット35の融資額90%以下の金利は、融資期間20年以下で年1.40%、21年以上で年1.88%が最低金利ですから、低いと言えば低いのですが、それでも融資利率は年1%を上回っていますから、多少なりとも金利の負担感はあります。

ただ、運用することに関しては、おそらく「利息を受け取った」という実感はないと思います。大手銀行の預金利率は、預入期間の長短、預入金額の多寡に関係なく年0.002%でしかありません。これがどれだけ低いかというと、1000万円を1年複利で10年間運用し続けたとしても、2000円の利息しか受け取れないことを意味します。

日本の金利がここまで下がった背景

なぜ、ここまで金利が下がってしまったのでしょうか。

一番の要因は、1990年に入ってからのバブル崩壊です。戦後、最悪の経済情勢になるなかで、日本銀行は大幅な利下げを余儀なくされました。不景気の時は、金利を下げて景気の活性化をはかるのが定石です。

日銀は幾度となく利下げを行い、金利水準を大幅に引き下げました。一時期、ITバブルによって景気が回復したことで、利上げを行う姿勢を見せたものの、2000年に入ってから金融不安が浮上。さらに物価が継続的に下がり続けるデフレ経済が深刻になり、超低金利政策が継続されることになりました。

その後は言わずもがな、ですが、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショック、2010年の欧州通貨危機、2011年の東日本大震災、2020年のコロナショック、というように、ようやく景気が持ち直すかと思えば、再び景気悪化が深刻化するということの繰り返しによって、日本は利上げのタイミングを失い、現在に至っています。

金利が上昇に転じた要因は?

その日本において、ようやく金利上昇の気配が見えてきました。三井住友アセットマネジメントが10月6日にリリースしたレポートのタイトルにもあるように、「金利のある世界」が示現してきたのです。

三井住友アセットマネジメントのレポートによると、「日銀は7月28日に、イールドカーブ・コントロール政策(YCC)の運用柔軟化を決定し、長期金利の事実上の許容上限を0.5%から1.0%に引き上げました。それ以降、長期金利は少しずつ水準を切り上げており、10月4日に一時0.805%を付けました。ついに、日銀の黒田前総裁が導入した量的・質的金融緩和(QQE)がスタートする前の水準に戻ってきました」ということです。

ここまで金利が上昇に転じた要因は、インフレです。一足先に物価が急上昇した欧米に続き、長年デフレ経済に悩まされた日本でも、インフレの兆しが見えてきました。

黒田前日銀総裁が導入した量的・質的金融緩和は、消費者物価指数で前年同月比2%、という物価目標を設定しましたが、8月の消費者物価指数は、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数で、前年同月比4.3%の上昇となり、政府・日銀が想定した物価上昇率を大きく上回っています。

もちろん物価上昇率を上回る賃金上昇率があれば、何も問題ありませんが、先般発表された7月の実質賃金は、前年同月比で2.5%減となり、16カ月連続でマイナスが続いています。

賃金の上昇率が、物価の上昇率を16カ月も下回っているということは、それだけ人々の生活水準が悪化していることを意味します。政府・日銀としては、この状況を看過することはできず、ある程度の金利上昇を容認せざるを得ないという状況なのでしょう。

金利上昇で住宅ローンはどうなる…?

では、仮に金利が本格的に上昇したら、どういうことになるでしょうか。

まず、預貯金の利率が上がります。それ自体は、お金を運用する側からすれば悪い話ではありません。一方、お金を借りる側にとっては、決してうれしい話ではありません。特に、住宅ローンを変動金利型で組んでいる人にとって、この金利上昇は大いに気になるところでしょう。

住宅ローンに関しては、固定金利型と変動金利型で分けて考える必要があります。固定金利型の住宅ローン金利は長期金利に連動しますが、すでにローンを組んだ後であれば、返済が終わるまで同じ金利が適用されるため、返済する利息は変わりません。

ただし、新規で固定金利型の住宅ローンを組む場合は、長期金利の上昇にともなって適用されるローン金利が上がりますから、ローンを組む前に長期金利が上昇すると、返済が終わるまでの利払いが増えることになります。

したがって昨今のように、長期金利が上昇傾向をたどっている局面で、新規に固定金利型の住宅ローンを組もうとすると、高いローン金利が適用されてしまいます。ここからさらに長期金利が上昇すると見るならば、少しでも早いうちに固定金利型の住宅ローンを組むべきでしょう。

一方、変動金利型の住宅ローンの適用金利は、短期金利の影響を受けます。現状、日銀は短期金利の上昇を認めていないため、そのスタンスが今後も続くのであれば、返済額が増えることはありませんが、いつまで短期金利の水準を現状の水準に据え置けるかは、何とも言えません。今後、短期金利が上昇に転じたら、変動金利型の住宅ローンは返済額が増えます。

ただ、変動金利型住宅ローンは、「5年間は返済額が一定」というルールがあるのと共に、返済額が増える場合は、「従前の返済額の1.25倍が上限」というルールもありますが、仮に月々の返済金額が10万円だとして、1.25倍の上限一杯まで返済額が増えると、返済金額は12万5000円になります。

一般的な家計で、ローン返済額が月2万5000円も増えるのは、かなりの負担増ですし、前出のルールではカバーできないほどに短期金利が上昇した場合、最終的には返済期間の終了時に、元金と未払い利息を一括で返済せざるを得ないケースも生じてきます。

住宅ローンだけじゃない! 金利上昇のさまざまな影響

金利の上昇は、他にもさまざまな影響を及ぼします。利払い増で苦しい状況に追い込まれるのは、住宅ローンを組んでいる人だけではありません。

国も国債発行によって多額の借金をしているため、国の財政状況が厳しくなり、公共サービスの内容が悪化する恐れが生じてきますし、株式市場で言えば、積極的に借入を増やして投資を行い、さらなる成長を追い掛けるような成長企業にとっては、資金調達コストの増加が業績にとってネガティブになることも考えられます。

昨今、グロース銘柄ではなくバリュー銘柄が堅調なのは、世界的な金利上昇による影響と考えられます。

さらに細かい点を言えば、J-REITにとっても金利の上昇はネガティブ要因になります。というのも、J-REITに投資している機関投資家は、常にJ-REITの分配金利回りと長期金利の利回り差を見て、どちらに投資するかを考えているからです。

この利回り差をイールドスプレッドと言うのですが、一般的にJ-REITの分配金利回りが長期金利を3%超上回っていると、J-REITが買われる傾向があります。現状、J-REITの平均分配金利回りは4.18%前後で、対する長期金利が0.8%ですから、イールドスプレッドは3.38%あります。

ただ、長期金利が1%を超えて上昇するような事態になると、イールドスプレッドが縮小して、J-REITにとってネガティブな環境になることも想定されます。

なお、ドル/円への影響ですが、一般的に金利上昇はその国の通貨の買い要因です。とはいえ、為替取引は相対的なものです。米国の長期金利が低下する一方で日本の長期金利が上昇すれば、円買い・ドル売りで円高が進むことも考えられますが、現状、米国の金利も上昇傾向をたどっているため、金利差が及ぼす為替レートへの影響は、中立です。円安は金利差以外の別要因によるものと考えられます。

このように、金利の動きは実体経済やマーケットに大きな影響を及ぼします。特に今は長期金利を中心にして上昇圧力が強まっていますから、「金利が上がったら生活にどのような影響が生じるのか」という視点を、常に持つことをお勧めします。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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