「まだ世話になる必要はない!」80代父が要介護認定や手すり設置を拒否した“言い分”
Finasee / 2023年10月26日 17時0分
Finasee(フィナシー)
大輔さん(男性、52歳)は食品会社で営業部に所属する会社員。元々は医薬品卸の会社にいましたが、30代半ばで現在の会社に転職しました。今の職場では課長で、20人の部下がいます。地元の草野球チームに所属していて、毎週練習に参加するのが楽しみです。
大輔さんには30代半ば頃離婚した経験があり、遠方に25歳の息子がいます。息子が就職した3年前に一度会ったものの、普段は連絡をとっていません。離婚して以来ずっと父(82歳)、母(79歳)と同居しています。
父は元教師、母はずっと専業主婦で、大輔さんたちきょうだい(兄と妹)を育てあげました。父は厳格で、今も図書館に通っては歴史を研究しているようです。地域の活動に参加するのは主に母です。大輔さんが両親と住んで、家事全般を母に任せていることについて、隣県で家庭を持っている妹は「子ども部屋おじさん」といってからかいます。兄はまだ独身で、遠方の発電所で技術者として働いています。兄は父に似て無口でやや取っつきにくく、大輔さんは少し苦手です。
父、大けがで入院。大輔さんがサポート先日、大輔さんの父は事故に遭って転倒し、入院していました。全身の打撲と手首や足首の骨折があり、数週間の入院となりました。
救急搬送されたので、入院中も大輔さんが家から必要なもの(メガネや入れ歯や補聴器など)を病院に持っていくことが必要で、ある程度の現金も手元にないと不便なので、大輔さんの口座からおろして持っていきました。着替えや歯ブラシなどは有料サービスを利用すれば不要なので助かりましたが、羽織るものや下着は使い慣れたものがよいと思いましたし、全く顔を出さないのもよくないと思い、仕事の都合をつけて週に数度は病院に行くようにしていました。
父はこれまで、「飼い犬みたいでいやだ」と携帯電話を持たないでいたのですが、足りないものを聞いたりするのに不便なので、高齢者用のスマートフォンを契約して持たせることにしました。
ある日見舞いに行くと、病棟の看護師から、退院計画についての話がありました。どうも他に入院を待っている人がいるため、できるだけ早く退院をしてほしいようです。
とはいえ、今の父の状態で――つまり事故前のような歩行は難しい状態で、そのまま家に帰れるとは思えません。家は古い戸建てで、玄関の段差は大きく、トイレや風呂に手すりがありません。父の書斎は急な階段を上った2階です。そこに父が収集した歴史の書籍が大量にあるのです。父は普段ほぼ書斎で過ごしているのですが、トイレは1階にしかありませんし、これまでのような生活は難しいように思われます。
大輔さんが少しパニックになってそのようなことをまくしたてると、看護師からは退院調整室で相談してはどうかと勧められました。
幸い、その日のうちに退院調整室での相談ができることになりました。ソーシャルワーカーからは、介護保険の申請を勧められ、入院中に手続きを始めることになりました。入院時にある程度調べておいたので、ケアマネジャーが重要な相談相手であることは分かっています。市役所か、地域包括支援センターに行けばリストがあるらしいので、もらいに行かねばなりません。
病室に戻り、退院できそうだと話すと父はうれしそうです。ですが、要介護認定や手すりをつけること、部屋を1階に移すことなどを提案すると途端に不機嫌になってしまいました。「まだそのようなものの世話になる必要はない!」、そして「これまでのように2階での生活をすることがリハビリになる」と言い張るのです。
すっかり疲れてしまい、大輔さんはその日はそのまま帰宅しました。
●そんな大輔さんにとって、“この先”の大きな支えとなる情報を会社で発見……! そして、父の入院を通じて、大輔さんがふと思ったことは? 後編【「自分が要介護になったら誰が手続きを?」50代独身男性の複雑な胸中】にて、お届けします。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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