ESGファンドが資金流出額第1位に ESGへの逆風はどこまで高まるのか
Finasee / 2023年10月23日 16時0分
Finasee(フィナシー)
新規設定ファンドで「隔月分配型」が増える
9月の新規設定ファンドは59本 と、8月の18本から増加し、設定額も約1900億円と8月の590億円から増加した。新規設定ファンド59本のうち、限定追加型が11本で全体の2割、隔月決算型が15本と、全体の約2.5割を占めた。2024年1月から始まる新しいNISAでは毎月分配型が対象にならないので、代替商品として隔月決算型が増えているのだ。投資信託の年決算回数は1回、2回、4回、6回(隔月)、12回(毎月)のどれかが一般的だが、毎月分配型は新しいNISAでは除外された。代わりに「分配頻度が毎月ではないこと」という条件を満たした隔月分配型が注目を集めている。隔月分配型は、間隔はやや空くものの、定期的に分配金を受け取りたい投資家のニーズに応えることができる。分配金の支払いで複利効果が働きづらくなる点はあるものの、新しいNISAの選択肢の一つとして、隔月分配型の投信を選択する投資家が増える可能性は高いだろう。
個別で設定額がもっとも多かったのは、「三井住友DSワールド・ボンド・フォーカス2023-09(限定追加型)」の754億円だった。SMBC日興証券と三井住友銀行で販売され、世界各国・地域の米ドル建ておよびユーロ建ての債券に投資する。原則として信託期間内に満期を迎える債券に投資し、満期まで保有する「債券持ち切り運用」を行う。同ファンドは保有コストである信託報酬を0.7425%(税込)と業界最低水準に抑えている。この低価格設定の背後には、外部の運用会社に頼らず、欧米やアジアの拠点を活用したリサーチ体制により、自社で運用を行っていることがある。外部委託にかかるコストを抑え、よりリーズナブルな設計を提供しているのである。
「インベスコ世界厳選株式オープン(毎月決算型)」に資金流入が続く外国株式型のアクティブファンドで資金流入額が一番多かったのは、「インベスコ世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(約762億円)だった。純資産残高は約8500億円で、公募株式投資信託(ETF除く)の中で8位となっている。同ファンドは世界の株式のうち「成長」「配当」「割安」の3つの観点に着目して投資する毎月分配型のアクティブファンドである。長期にわたって高い分配金を出していることや、米国に偏りすぎない投資手法などを理由に個人投資家の支持を集めている。毎月決算型で20年以上の実績を持つ唯一の世界株式ファンドであり、今後も高水準の資金流入が続く可能性は高いだろう。
■インベスコ世界厳選株式オープン(毎月決算型)
基準価額 9267円
信託報酬 1.903%(年率・税込)
純資産残高 8146.14億円
<騰落率>
1カ月 1.70%
3カ月 11.69%
6カ月 17.39%
1年 31.23%
※8月末時点
9月の資金流出額1位は、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の約153億円だった。同ファンドの8月末時点における1年騰落率は+ 34.52%と好調だったものの、利益確定の売りがでたと考えられる。また、2022年からESG投資は逆風にさらされている。ロシアによるウクライナ侵攻やエネルギー危機、物価上昇などの出来事が、多くの人々の意識を変え、近視眼的な考え方や危機感の増大が背景にある。
特に米国では、年金基金や運用機関がESG投資を採用することに対して批判が高まっている。批判の主張は、ESG投資が政治的な意図を含み、受益者の収益を犠牲にしているというものである。年金基金や運用機関は、ESGだけでなく他の事情も考慮すべきだとの声がでている。一方、日本では金融庁が「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」を公表し、ESG投資に対して透明性や公平性などの課題に取り組むよう促している。ESG投資で評価される事業会社側もストレスを感じており、それが逆風の起点になっている可能性もあるからだ。ただ、足元のESGへの逆風は、手法を改善させていく可能性もある。「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」のパフォーマンスは好調であり、資金流出がいつ止まるかに注目している。
■グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)
基準価額 1万3429円
信託報酬 1.848%(年率・税込)
純資産残高 9764億円
<騰落率>
1カ月 2.03%
3カ月 12.25%
6カ月 28.90%
1年 34.52%
※8月末時点
執筆/山下耕太郎(フィナシー/Ma-Do 投資信託研究会)
Finasee編集部
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