「178社目」で遂に合格! 2度目の再就職活動に挑む50代男性を奮い立たせた言葉とは?
Finasee / 2023年10月30日 11時0分
Finasee(フィナシー)
Tさんは54歳の時に新卒から働いていた会社を早期退職後、専門性を活かせるポジションと、ある程度の処遇を求め、再就職先を探しました。
何とか再就職先を見つけることができましたが、そこはワンマン社長がいる中小企業で、社員の提案が通らない環境でした。矛盾を感じながら、とにかく3年は頑張ろうと思い、他の社員との信頼関係を築いてきましたが、日々募るストレスから会社を辞めることに。
その反省から、今度は自分の専門分野や給与面へのこだわりよりも、ゼロベースで“やりたい分野の仕事”に絞って就活をすることにしました。そのために利用する就職斡旋機関も幅を広げました。しかし、今度は1回目の再就職の時よりもさらに難航してしまいます。
最終的に“178社目”で合格を勝ち取ったTさん。採用された理由とは何だったのでしょうか? また、目標を実現するまでの厳しい道のりをどのように乗り越えたのでしょうか?
●前編:【50代男性が再就職先の退職を決意…2度目の転職で「給与よりも優先」した条件】
担当者の話で判明した採用の経緯Tさんは初めて会った採用担当者から、意外な話をされました。
「Tさん、実は書類選考では不合格でした。応募していた『調理員』では年齢のこともあり、お断りするつもりでした。しかし職務経歴書に人事部門でのご経験が詳細に書かれていて、その内容が我々にとって魅力的なご経験だったので、その職種で採用することにしたのです」
「それはエリアにある学校での給食調理員の『マネジメント』です。もちろん最初は経験を積んでもらうために実際に現場で給食を作ってもらいます」
Tさんにとってマネジメントは希望していた職種ではありませんでしたが、「間接的に給食に関わっていけるし、しばらくは実際に給食を作ることができる。これはラッキーな流れだ」と思いました。
念願の職場での仕事がスタートそこから、まずは慣れない給食作りの仕事がスタートしました。慣れるまでは大変でしたが、なにせやりたい仕事ができるので、不満など全くない毎日でした。しかも職場の調理員、補助員の方々はさまざまな経験を積んだ人たちなので、話していて楽しいのです。
またシニアにとって得難いメリットもありました。給食作りの時は全身を動かし体力づくりができますから、健康維持のために会費を払ってジムに通う必要もありません。また、テキパキと時間通りに動いたり、グラム通りに計測したりと、常に頭をフル稼働させなければならないので、仕事自体が一種の認知症予防のようにも感じられました。
このように、Tさんは心から楽しめる仕事を見つけたことで、前回の職場とは打って変わって本当に充実した毎日を送れるようになりました。
励みになったリクルーターからの言葉筆者は「再就職活動では、目標の実現までよく耐えることができましたね。どうしてそれができたのですか?」と聞いてみました。すると、「それはお世話になったリクルーターの言葉があったから」とTさんは言います。
最初の転職で初めて面接まで漕ぎつけた募集で不採用になった時、リクルーターの方がこんな話をしてくれたそうです。
「Tさん、不採用となることはこれからもあるかもしれません。でも、それはたまたま会社の求める経験とかみ合っていなかっただけのこと。Tさんの経験が必要ないとか、求められていないとか、価値がないとかいうものではありません。ただ、Tさんの経験やお人柄と、その会社が求めているものが合わなかっただけのこと。Tさんを求めている会社は他にあり、必ず出会えます。諦めずに頑張って下さい」
「その励ましの言葉は有難かったです。その言葉を聞いてから、上手くいかなかった時もその言葉を思い出して励みにすることで、落ち込むことはなかったのです」とTさん。
Tさんの仕事に対する誠実な態度があったからこそ、リクルーターの方から自然と出てきた言葉なのかもしれませんね。
Tさんの体験談から学ぶこと1.仕事探しは専門分野や処遇だけにこだわらない
仕事にストレスを覚えている時は、専門分野や処遇面にこだわるのでなく、一度自分のやりたい分野に視点を変え、考え直してみることが大切です。そうすることで、今まで選択肢に入らなかった意外と楽しい仕事が見つかるものです。
2.アピールポイントは詳しく書いておく採用担当者に自分のことを分かってもらうための職務経歴書などの書類には、できるだけ詳細にアピールポイントを書いておくことが大切です。現役時代の経験から強味をアピールできれば、その部分を評価されて採用されることもあります。
3.現役時代経験した様々な経験がセカンドキャリアに活きる職務経歴書に自分のスキルや経験を書くことができるように、現役時代には様々な体験を積んでおくことが大切です。定年後にはその体験や身に付けたスキルが必ず武器になります。
***後日談ですが、調理員の経験が1年半になったところで、Tさんは上司から呼び出され、職種の変更を打診されました。
「最初はエリアマネージャーの予定で話をしていましたが、別の人にやってもらうことになりました。Tさん、引き続き調理員の仕事をしてもらえませんか?」
本来希望していた調理員をこのまま続けることができるようになったのですから、もちろんTさんは心の中で微笑んで、「はい、それで構いません」と答えたそうです。
事実は小説より奇なりです。自分の希望通りのスタートでなくても、そこに近いスタート地点に何とか立つことができれば、最後には目標を実現できることもあるのです。まずは希望に近い環境に入り込むことが大切ですね。
髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰
1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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