ダイエーは今… イオンに買収された“時代の寵児”の現在
Finasee / 2023年10月25日 18時0分
Finasee(フィナシー)
かつて小売業で最大の売上高を誇ったダイエーは、競合との競争などから業績不振に陥りイオンに買収されました。ダイエーは存続していますが現在もうまく利益を出せていません。
日本一に上り詰めたダイエーはなぜイオンに買収されるに至ったのでしょうか。経緯と現在の状況を紹介します。
小売業の雄ダイエー 記録づくめの栄光時代ダイエーは1957年、中内功(なかうち・いさお)氏(※)によって創業されました。1号店として「主婦の店・ダイエー薬局」を大阪市に出店し、その後は全国へチェーン展開します。
※中内功氏の「功」は、正しくは工偏に刀。ウェブ表示上の問題から代用。
ダイエーは「価格破壊」や「流通革命」をスローガンに、あらゆる商品を手ごろな値段で販売する戦略を採りました。これがヒットし1960年代に大きく成長します。1972年には大手百貨店を抜き、小売業で売上高日本一を達成しました。
さらに1980年、ダイエーは小売業で初めて年間売上高1兆円を記録します。1980年のスーパー販売額が5兆6840億円(出所:経済産業省 商業動態統計調査)ですから、ダイエーがいかに圧倒的なシェアを握っていたかわかります。1990年代半ばには売上高が3兆円に達し、ダイエーは栄華を極めました。
【スーパーの販売額(1980年~1999年)】
出所:経済産業省 商業動態統計調査より著者作成ホテルやプロ野球チームの経営など多角経営にも積極的でした。一時はローソンやリクルートも傘下に持つ巨大グループを構築します。ダイエーは日本を代表する企業へと上り詰め、創業者の中内氏は「流通王」と呼ばれるようになりました。
専門店やショッピングモールの台頭で衰退 イオン子会社にダイエーを筆頭に小売業の花形となった総合スーパーですが、バブル崩壊から苦戦するようになります。背景には経済の停滞や不動産価格の下落などさまざまな要因がからみますが、強力なライバルの出現も衰退の理由だと考えられています。
ライバルの一つが専門小売業です。商業動態統計調査でスーパーの販売額を確認すると、飲食料品は堅調な一方、家電製品や衣料品、家具で大きく減少していることがわかります。
【スーパーの商品別販売額(2000年~2022年)】
出所:経済産業省 商業動態統計調査より著者作成これらは専門小売店の進出が顕著な領域です。例えば家電ではヤマダHDが、衣料品ではファーストリテイリング、家具ではニトリHDなどが専門小売業の代表格です。総合スーパーはこれら専門店との競争に敗れ、シェアを徐々に落としていくことになります。
ショッピングモールの台頭も痛手でした。専門店を併設する大型ショッピングモールは、さまざまな商品を扱うことで発展してきた総合スーパーと似た業態です。ショッピングモールにシェアを奪われたこともまた、総合スーパーの業績に影を落としたと考えられます。
これらを背景にダイエーも業績が悪化しました。2004年には産業再生機構の支援を受けます。しかし売り上げの低迷は続き、2009年2月期に237億円の純損失を計上しました。赤字体質からの脱却はできず、2014年2月期まで6期連続で最終赤字となります。
【ダイエーの純利益(2008年2月期~2015年2月期)】
出所:ダイエー 決算短信より著者作成産業再生機構は2006年、ダイエー株式とダイエーに対する債権を丸紅に譲渡し支援から撤退しました。イオンは2007年に丸紅からダイエー株式の一部を買い取り、さらに2014年に完全子会社化に踏み切ります。
消滅免れるも不振続く ダイエーはいつ再建できるかイオンの完全子会社化となった当初、ダイエーは2018年度ごろに消滅するとされていました。しかしダイエーの法人格は現存しており、2023年6月時点で206店舗を運営しています。
「ダイエー」を冠する店舗も全国に94店舗(2023年10月18日時点)あり、ブランドとしても存続していることがわかります。2023年11月には「ダイエー四谷荒木町店(新宿区)」も開業されます。
ただし業績は芳しくありません。ダイエーは大型の総合スーパー事業(GMS)から撤退し、都市型のスーパーマーケット事業(SM)を中心に展開しています。売上高は2000億円台後半とピーク時から大きく縮小しました。利益が安定しているわけでもなく、累積の利益を表す利益剰余金は157億円のマイナスです(2023年2月期)。イオンにとってダイエーは高い買い物だったのかもしれません。
【ダイエーの業績(2021年2月期~2023年2月期)】
売上高 純利益 2021年2月期 2975億円 41億円 2022年2月期 2866億円 -10億円 2023年2月期 2791億円 -76億円
出所:ダイエー 有価証券報告書
もっともイオン全体の業績は盤石です。2023年2月期はスーパーマーケットやドラッグストアなど多くの業態が好調で、売上高に相当する営業収益は9兆円を記録し過去最高を更新しました。利益剰余金は4118億円まで積み上がっています。ダイエーの不振はイオンにとって脅威とはいえないでしょう。
【イオンのセグメント業績(2023年2月期)】
売上高 営業利益 GMS事業(総合スーパー) 3兆2690億円 141億円 SM事業
(スーパーマーケット) 2兆6421億円 228億円 DS事業
(ディスカウントストア) 3835億円 37億円 ヘルス&ウエルネス事業
(ドラッグストア) 1兆1497億円 448億円 総合金融事業 4569億円 603億円 ディベロッパー事業 4435億円 452億円 サービス・専門店事業 7656億円 103億円 国際事業 4974億円 129億円 (参考)連結計 9兆1168億円 2097億円
出所:イオン 決算短信
イオンに体力があるとはいえ、不振が続けば再びダイエーに消滅の芽が出てくるかもしれません。経営破綻した同業のマイカルはイオンに買収され、吸収合併で消滅しています。
ダイエーは再建することができるのでしょうか。2024年で産業再生機構の支援から20年、イオンによる完全子会社から10年がたとうとしています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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