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「墓じまい」を依頼した女性が唖然… 終活業界の“時代錯誤”なローカルルール

Finasee / 2023年11月2日 11時0分

「墓じまい」を依頼した女性が唖然… 終活業界の“時代錯誤”なローカルルール

Finasee(フィナシー)

最愛の母親の葬儀を終えた春日暁美さん(30代・既婚)。遺骨は生前の母親の「絶対に育ての両親のお墓に入りたい」という希望通りA寺のお墓に納骨する予定だったが、想定外のトラブルが起こる。夫との話し合いの結果、A寺の墓じまいを行って新たな共同墓地を契約することに決めた。

●前編:【養子だった母を看取った30代女性…「納骨」をめぐるトラブルで迫られた選択】

寺業界のローカルルールに絶句

ところが、墓じまいするにもスムーズには行かなかった。墓じまいを依頼する石屋は、A寺と付き合いのある1社しかNGと言われたのだ。

しかも、紹介された石屋を調べようにもホームページもなく、住所も知らされていないためどこにある業者なのかも不明。仕方なくA寺から聞いた電話番号に連絡してみたところ、突然「費用は30~35万です」と言われ、春日さんは絶句。思わず「見積りは? 業者も選べず相見積もりもとれず、言い値ですよね?」と返すと、「見積りを出すとなると、高い方の料金である35万になってしまいます」と平然と言い放つ。

「せめて10万円ほどだと思っていたので驚きましたし、見積もりを出すと高くなると言われ、話にならないなと呆れました。墓じまいの相場を夫とネットで調べたところ30万ほどだったので、ぼったくられているわけではないと思って諦めました。仕方ないです」

1月末。「4月の復職までにすべて終わらせたいので、急ぎでお願いします」と言い、A寺から紹介された石屋に墓じまいを依頼。

だが3月になっても音沙汰がない。しびれを切らした春日さんが問い合わせると、「職人がケガをしたので3カ月くらい作業できないかも」と平気で言われ、さすがに頭にきた春日さんが「私は3月末までに納骨したいと伝えましたよね?」と督促すると、ようやく4月下旬から動き出した。

「寺業界のローカルルールに翻弄されまくった感じです。寺家系の夫も、『これじゃ全国の寺はなくなっていくわけだ』と呆れ果てていました」

墓じまいにかかった費用

現地調査をしたあと石屋は、「新しいお墓なので作業が大変」「お骨の下に土葬があるかどうかも掘り起こして確認しないといけない」と連絡してきた。

育ての祖母が亡くなったとき、春日さんはまだ生まれていなかった。育ての祖母の死後、育ての祖父と母親とで建てた墓なので、まだ40年ほどしか経っていない。石屋は“新しい墓”と表現したが、春日さん的には、「40年で新しいのか……」「土葬の有無なんて建てる前に確認してるはずでしょう?」と面食らった。

結局、墓じまいにかかった費用は、石屋に30万。育ての祖父母2人の遺骨を受け取る日にお別れの法要を行うということで、A寺にお布施を2万。新しく契約した合同墓に、育ての祖父母と母親の3人分で90万円払った。

春日さんはお布施の相場的には2万は少ないと分かっていたが、「どうせこれで縁が切れるんだから」という夫のアドバイスに従った。

残された生みの祖母の墓問題

これで母親と育ての祖父母の墓問題は解決したが、春日さんにはまだ生みの祖母の墓問題が残っていた。

生みの祖父母が生まれたばかりの母親を手放した理由は、春日さんは詳しくは知らなかった。ただ、生みの祖母は、離婚した後、母親が祖父の家で育てられていると思っており、養女に出されていることを知らなかったらしく、探偵に母親を見つけ出してもらい、再会を果たしたときは泣いていたという。どうやら、「資産家の生まれである生みの祖父が、親に逆らえず祖母と母を捨てたのではないか」という話は聞いていた。

生みの祖母は祖父との離婚後、独身で定年まで航空会社の経理職をしており、その年代の女性にしては資産があった。

再会後、母親は生みの祖母と親しく交流を続けた。生みの祖母は加齢により体調を崩すようになると、自らサービス付き高齢者向け住宅に入所。母親は父親とともに足繁く面会に通い、最期を看取った。

すると、生みの祖母の死後、「(生みの祖母の)弟Sとその嫁、春日さんの母親の3人に均等に相続させる」という遺言の存在が判明。

「祖母は妹1人、弟2人の4人きょうだいです。そのうちのTさんという弟さんとは家族ぐるみでお付き合いさせていただいていました。そのTさんも母も、遺言の存在も内容も知らされておらず、祖母の死後初めてTさんでないもう1人の弟のSさんの嫁が祖母の養女になっていたことを遺言書で知り、大問題になったようです。どうやらSさんと嫁が祖母の遺産を騙しとるために嫁を養女にしたのでは……と言われています」

生みの祖母が亡くなったとき、すでにSさんは亡くなっており、真相は不明。祖母の遺産はその嫁と母親とで分けることになった。

母親が教えてくれたこと

現在、生みの祖母の墓は、生みの祖母の一族たちの墓と同じ寺院にある。

「私としては、同じお寺に一族が揃っているのだから、生みの祖母のお墓も親族の中の誰かが墓守りしてくれれば無縁仏になることはないと思っています。でも、生みの祖母のお墓にはもう誰も入ることはないので、私の娘の負担を減らすためにも墓じまいしたほうがいいと思うのですが、一族が許してくれるかわかりません。祖母の養女になっていたSさんの嫁が墓守りしてくれたら良いのですが、遺産相続を終えた後、お付き合いは断絶しています……」

30代で自分の死後のことを見通し、現在1歳にもならない娘の負担まで考えて動く母親はなかなかいない。

「母が私を想ってしてくれたように、私も娘には、私がこの1年で経験した認知症介護や施設、葬儀やお墓、親戚等に関する悩みや負担を絶対に与えないように、母よりもさらに早めに準備しようと心に決めています」

それもこれも、母親が最期に身をもって教えてくれたことなのかもしれない。

旦木 瑞穂/ジャーナリスト・グラフィックデザイナー

愛知県出身。アートディレクターなどを経て2015年に独立。グラフィックデザイン、イラスト制作のほか、終活・介護など、家庭問題に関する記事執筆を行う。主な執筆媒体は、プレジデントオンライン『誰も知らない、シングル介護・ダブルケアの世界』『家庭のタブー』、現代ビジネスオンライン『子どもは親の所有物じゃない』、東洋経済オンライン『子育てと介護 ダブルケアの現実』、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、日経ARIA「今から始める『親』のこと」など。著書に『毒母は連鎖する〜子どもを「所有物扱い」する母親たち〜』(光文社)がある。

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