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「配当貴族」花王の増配に黄信号 停滞から脱却する“成長戦略”とは?

Finasee / 2023年11月7日 17時0分

「配当貴族」花王の増配に黄信号 停滞から脱却する“成長戦略”とは?

Finasee(フィナシー)

花王の株価が低迷しています。2020年に8000円前後だった株式は値下がりが続いており、現在は5000円台で取引されています。足元で続く減益が嫌気されているのかもしれません。

【花王の業績】

  売上高 純利益  2021年12月期 1兆4188億円   1096億円  2022年12月期 1兆5511億円 860億円  2023年12月期(予想)   1兆5800億円 410億円

※2023年12月期(予想)は同第2四半期時点の同社の予想

出所:花王 決算短信

【花王の株価(2020年10月~2023年10月)】

出所:Investing.comより著者作成

苦戦が続きますが、花王は配当を重視する投資家には人気がある銘柄です。2023年7月から算出される「JPXプライム150指数」にも市場評価(PBR基準)の観点から選ばれました。

花王はどのような企業なのでしょうか。事業内容と「配当貴族」としての側面、また成長戦略について紹介します。

洗剤・サニタリー大手 定番押さえブランド盤石

花王は日用品などの消費財大手です。特に洗剤やサニタリー用品(おむつなど)、化粧品で高いシェアを獲得しています。『アタック』や『メリーズ』など多くの有名ブランドを擁しており、消費者の知名度は抜群です。

【花王の主なブランド】

 ハイジーン&リビングケア
(衣類・食器洗剤、サニタリー)  アタック、ハミング、メリーズ  ヘルス&ビューティケア
(スキンケア、ヘアケア)  ビオレ、メリット、サクセス、バブ  ライフケア
(業務用衛生製品、健康飲料)  ヘルシア、ハンドスキッシュ  化粧品  キュレル、カネボウ、プリマヴィスタ  

出所:花王 事業領域

家庭向けだけでなく、産業向けにも強みがあります。油脂製品や印刷材料、また半導体向け洗浄剤といった化学製品で世界トップクラスのシェアを確保しています。業績への貢献も厚く、化学製品を表す「ケミカル」セグメントは主要な地位を占めています。

【セグメント業績(2022年12月期)】

  売上高 営業利益  ハイジーン&リビングケア    5165億円   307億円  ヘルス&ビューティケア 3695億円 346億円  ライフケア 557億円 0億円  化粧品 2515億円 141億円  ケミカル 4025億円 295億円

出所:花王 決算短信

代表的な「配当貴族」 増配は続くか

花王は日本を代表する「配当貴族」でもあります。配当貴族とは一定の期間以上連続で増配している企業を指す言葉です。例えばS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出する「S&P500配当貴族指数」は25年以上連続で増配する企業で構成されます。

配当金を単に出すだけでなく長期にわたって増やし続けるには、事業や財務に相応の安定性が求められます。したがって配当貴族には優良企業が多く、投資家の関心が高いと考えられます。

花王は2022年度まで33期連続の増配を記録しました。2022年度の1株あたり配当金は148円と、2013年度(同64円)から9年で2.3倍に増加しています。

【1株あたり配当金の推移】

出所:花王 決算短信より著者作成

しかし現在、花王の連続増配が危ぶまれています。純利益が2018年度をピークに減少傾向が続いているためです。配当性向(配当金が純利益に占める割合)は2017年度で37%でしたが、2022年度では81%にまで上昇しました。当期の利益で十分まかなえていた配当金は、徐々に余裕がなくなってきています。

【純利益と配当金総額の推移】

出所:花王 決算短信より著者作成

花王は2023年度の配当金を前期より2円多い150円と予想しています。対して1株あたり純利益の予想は88.2円です(いずれも同第2四半期時点)。予想通りなら、花王は当期の純利益を超えて配当金を支払うことになります。

会社法は一定の範囲内なら当期の純利益を超える配当も認めています。しかし稼いだ金額を超える分配は企業からの財産の流出を意味します。実力以上の配当は維持が難しく、増配はなおさらでしょう。

配当金の支払い限度額の目安となる利益剰余金は7226億円です(2023年12月期第2四半期)。帳簿上は余裕がありそうですが、増配を続けるなら相応の増益が望まれます。

漂う停滞感 花王の成長ストーリーは?

花王の株価低迷は、投資家が成長する姿を描けないことが理由かもしれません。売上高はほぼ横ばいの状況で、改善が見られた営業利益率も近年は下落が続いています。

【売上高と営業利益の推移】

出所:花王 決算短信より著者作成

花王に成長ストーリーはあるのでしょうか。同社は2023年8月、2027年度までの中期経営計画「K27」を発表しました。ROIC(投下資本利益率)経営の導入や構造改革で成長を目指す計画です。

【中期経営計画(~2027年度)の財務目標】

   2022年度(実績)  2027年度(目標)  ROIC(投下資本利益率)  7.8% 11%以上  EVA(経済的付加価値) 147億円 700億円以上  営業利益 1101億円  過去最高の更新(※)  海外売上高 6745億円 8000億円以上

※過去最高は2019年度(2117億円)

出所:花王 決算説明会資料

花王は成長領域とみなす3事業(スキンケア、化粧品、ケミカル)のグローバル展開、およびパートナー企業との提携を通じた新事業領域への進出で目標の達成を目指すとしています。借り入れも視野に、成長領域や新事業へ集中的に投資するとの資本計画も明かされました。

当面は事業再編を含む構造改革を優先し、競争力の強化に努めるようです。花王によれば改革の効果は2024年から発現し、2025年以降300億円の利益改善効果が継続するとしています。

花王は復活できるのでしょうか。注目する投資家は少なくないでしょう。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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