1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

9年前、当時“最大の負債総額”で破綻… エルピーダを買収したマイクロンが日本に積極投資をする理由

Finasee / 2023年11月8日 18時0分

9年前、当時“最大の負債総額”で破綻… エルピーダを買収したマイクロンが日本に積極投資をする理由

Finasee(フィナシー)

日本で半導体株といえば東京エレクトロンやディスコといった製造装置メーカーが連想されます。ロジック(CPUなど)やメモリなどの半導体製品は、インテルやサムスンといった海外企業が高いシェアを持ちます。

かつては日本にも世界的な半導体企業が上場していました。エルピーダメモリはDRAMで世界3位のシェアを握ったものの、経営破綻しアメリカのマイクロン・テクノロジーに買収されました。

エルピーダメモリはなぜ破綻したのでしょうか。経緯を振り返りましょう。またマイクロン・テクノロジーが日本に投資を繰り返す理由も紹介します。

NEC・日立・三菱電から生まれた日本唯一のDRAMメーカー

エルピーダメモリは1999年、NECと日立製作所が共同出資して誕生しました(当時はNEC日立メモリ)。2003年には三菱電機のDRAM事業も合流し、日本で唯一、世界3位のDRAMメーカーとなります。

当時は業績も好調でした。パソコンや携帯電話向けに売り上げが伸び、2004年度に黒字転換します。また東京証券取引所への上場も果たしました。2007年3月期には売上高4900億円、営業利益684億円を計上しています。

しかしその後は暗転します。競合との競争が激化し、DRAM価格が大きく下落しました。DRAMに特化していたエルピーダメモリのダメージは大きく、2008年3月期に249億円の営業損失に転落しました。赤字額はリーマンショックを含む2009年3月期に拡大し、営業損失は1474億円、最終損失は1789億円に上りました。

経営危機に陥ったエルピーダメモリは公的支援が決定し、日本政策投資銀行から300億円の出資と100億円の融資を受けました。さらに銀行団の協調融資や台湾企業からの出資も受け、エルピーダメモリは再起を図ります。

過去最大の破綻 米マイクロンが買収

官民から資金を得たエルピーダメモリは、いったんは回復に向かいます。市況がやや回復したこともあり、営業利益は2010年3月期に268億円と3期ぶりの黒字を確保しました。翌期も358億円の営業黒字を計上します。

しかしこれ以降、エルピーダメモリが通期の決算を発表することはありませんでした。2012年2月に経営破綻したためです。

最後の決算発表となった2012年3月期第3四半期(2011年4月~12月)では900億円の営業損失を計上していました。スマートフォンの台頭などから主力のパソコン向けの需要が低迷し、再びDRAM価格が下落したことなどが赤字の理由です。

エルピーダメモリは資金ショートを避けられないと判断し、会社更生法の適用を申請します。負債総額は4480億円に上り、製造業としては過去最大の破綻となりました(現在は2017年に破綻したタカタが最大とみられる)。

エルピーダメモリは2012年7月、アメリカのメモリ大手マイクロン・テクノロジーに買収されました。日本からDRAMメーカーが姿を消した瞬間でした。

なおエルピーダメモリは社名をマイクロンメモリジャパンに変更し、マイクロン・テクノロジーの子会社として現在も国内に存続しています。

計1兆8200億円 マイクロンが日本へ資金を投じる理由

エルピーダメモリの買収以来、マイクロン・テクノロジーは日本への投資を繰り返しています。旧・エルピーダメモリの広島工場を先端DRAMの生産拠点と位置づけ、2015年から1000億円を投じ最新設備を導入したほか、2017年には次世代DRAMの量産のため2200億円を投じると決定しました。

マイクロン・テクノロジーによると、同社が2013年から2022年に日本へ投資した額は130億ドル(1ドル=140円で1兆8200億円)に上ります。また2022年までの5年間では最大の海外投資家だったと発表しています。

マイクロン・テクノロジーが日本へ積極投資する理由の一つは政府の支援です。半導体市場における日本のシェア低迷を受け、政府は国策として半導体を後押しする姿勢を強めています。

マイクロン・テクノロジーは2023年5月、日本政府の支援を前提に広島工場に最大5000億円を投じると発表しました。日本はこれに答え、同工場へ最大1920億円の支援を決定しています。

充実したサプライチェーンも理由の一つでしょう。半導体の製造は多数や素材や機械がかかわります。特に先端半導体の製造となると求められる品質も非常に高くなります。

これらは日本に強みがある分野です。シリコンウェハやレジスト(感光材)といった素材のほか、製造に用いる露光装置や洗浄装置などの大手メーカーが多数存在します。半導体の製造に欠かせない企業が充実する日本は生産拠点を構えやすく、マイクロン・テクノロジーの投資を促していると考えられます。

【マイクロン・テクノロジーの業績】

  売上高 純利益  2021年9月期 277.05億ドル 58.61億ドル  2022年9月期 307.58億ドル 86.87億ドル  2023年9月期     155.40億ドル   -58.33億ドル

出所:マイクロン・テクノロジー

【マイクロン・テクノロジーの株価(月足、2020年10月~2023年10月)】

出所:Investing.comより著者作成

文/若山卓也(わかやまFPサービス) 

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください