50歳で堅実な優良企業からスタートアップへ転職…不安定に見える道を選んだ「深い理由」
Finasee / 2023年12月11日 11時0分
Finasee(フィナシー)
人生100年時代といわれる現代、定年後も雇用延長で働く人が増え、働き方の選択肢も増える一方です。そんな時代にあって、働き盛り世代の会社員には老後に対して不安をかかえる人は少なくないようです。
話題の書籍『脱 定年時代の歩き方』では、従来の定年の考え方に縛られず、将来の不安に備えて幸せな老後生活を手に入れるノウハウについて、老後問題解決コンサルタントの横手彰太氏が解説。今回は、本書冒頭の「プロローグ」、序章「脱・定年時代を生き抜くための7つのヒント」の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、横手彰太著『脱 定年時代の歩き方』(Gakken)の一部を再編集したものです。
脱・定年時代の地図を手に入れようもう50歳なのか、まだ50歳なのか。
昨年、50歳になった私は、某優良企業からスタートアップに転職しました。あと10年、安定した収入の生活を維持するために、会社に残るという選択もありました。
しかし、混沌とした今の日本の状況では、安定を求めれば求めるほどリスクが高くなります。逆説的な発想です。私はあえてリスクを選択したほうが実際のリスクは低くなると考えています。
私は成功した経営者でもなく、エリートサラリーマンでもありません。振り返ると山ほど失敗を重ねてきました。それでも、大学在籍中も卒業後も、そして今も、人生の岐路に立たされたときは、あえてリスクをとることを選択してきました。
はたから見ると常に不安定な道を選択しているように見えたかもしれません。もちろん、大成功ばかりではありませんが、その選択を悔やんだことはありません。
まず提案したいのは「はみ出す勇気」を持つことです。人生の分岐点で、リスクを覚悟しつつ「変わろうとする気持ち」を押し殺さないようにしてみてください。
「安定したまま現状維持を目指したい」と考える人もいます。でも、本当にそんなことができるのでしょうか。
仕事も生活も人間関係も目まぐるしく変化しています。ですから、その変化に合わせて自分が変わらなければ、現状維持は難しいのです。現状維持を望む人も、それ以上を望む人も、まずは変化を恐れないようにしてみるのはいかがでしょうか。
日本は「リスク回避社会」といわれています。
1981年から定期的に行われている世界価値観調査においても、「日本人はリスクをとらない」と指摘されています。
旧・定年時代と現代社会を比較してみる少しだけ歴史を振り返ってみましょう。
バブルが崩壊するまで右肩上がりの経済成長を維持していた日本では、多くの企業が年功序列の終身雇用制度を採用していました。この制度では雇用期間が長くなればなるほど人件費は増大しますが、それを超えるスピードで業績が上がっていたため問題はなかったのです。
一つの企業に60歳定年まで勤め、退職金をもらって老後は悠々自適な生活を送る。受験勉強を勝ち抜いて大手企業に入社すれば将来は約束されていました。
バブルが崩壊してからも、しばらくはその風潮が残っていたように思います。「エリートコースを歩めば将来が担保される」という意味では、分かりやすい時代だったといえるでしょう。
しかし、時代は変わり、現在は2023年です。年功序列の終身雇用制度は崩壊し、人生100年時代を迎え、少子高齢化が進みました。AIにまつわるテクノロジーが急激に進化し、新型コロナの影響で毎日会社に通勤する人が減りました。
目まぐるしい変化の波に吞み込まれず、安全性や安定のみを追い求めるのは、至難の業です。明らかに以前と異なっているのに、現状維持を追い求めるのはなぜでしょうか。
それは、「旧・定年時代」の価値観にしばられているからではないでしょうか。
旧・定年時代と脱・定年時代の歩き方上図のように、従来の終身雇用制度から逸脱しない生き方を無意識に選んでいませんか。心のどこかで、定年、再雇用、年金生活の定番コースをたどることが、「最も安全で確実」と考えていませんか。
繰り返しになりますが、リスクを回避することが安全圏に逃げ込むことにつながる時代は終わりました。
残念ながら、あなたの目の前に見える、最も安全そうに見える道には、非常に危険なトラップがいくつも仕掛けられているのです。
その昔、高度成長期の日本では、還暦を迎えると、会社の仲間に「ご苦労様でした」というねぎらいの言葉とともに送り出されました。
必ずしも全員が悠々自適の生活を送れるわけではありませんが、少なくとも、現在のように老後の資金を心配する必要はありませんでした。よくも悪くも、入社後の社会人生活は一本道でした。
時代が変わったことを嘆いても仕方がありません。
大丈夫です。時代の変化に合わせて、新しい道を開拓すればいいのです。50代で転職をしてもかまいせん。自分のタイミングでスモールビジネスの準備を進めたり、不動産投資などで不労所得を狙ったりしてもかまいません。
独立のタイミングも自分で決めるのが、脱・定年時代の作法です。
もちろん、独立せずに会社から業務委託を受けるという選択肢もあります。転職もスモールビジネスも業務委託も、すべて自分で自分の道を切り拓くための手段に過ぎません。「こうあらねばならない」という王道の確定ルートは存在しないことを理解してください。
自分だけの地図を頼りに老後の不安と向き合うこれから、旧・定年時代に縛られない人生の歩き方を提案しますが、この先、50代、60代、70代の未来では、あなたが今予測できないトラブルが発生することでしょう。
そんなときも、決してあきらめず、行く手に立ちはだかる問題に向き合い、一つずつ片づけて前進してください。
あなたが今50歳で、人生を100年と見積もれば、余生は2600週以上あります。行き先が決まっている電車を降りて、ときには歩き、バスに乗り、また電車に乗る。いろいろ試しながら、残りの2600週を生きてください。
これからあなたがたどる道をつくるため、あなたの人生のロードマップを描いてください。自分だけの地図をつくるつもりで、それぞれの分岐点であなたらしい決断をしてください。そして、決断をするときは「リスクを恐れない」と自分で自分を励ましてみてください。
問題に立ち向かった経験は、必ずあなたの武器になります。そして、経験を積み、武器をたくさん持つことで、人生の後半戦になればなるほど怖いものがなくなっていきます。
ロールプレイングゲームでは、勇者は、地図を片手に冒険の旅に出ます。武器や防具、薬草を買いそろえ、仲間と出会いながら旅を続けます。最後にドラゴンを倒したりお姫様を助けたりしますが、本当に大切なのは(充実しているのは)、旅の過程ではないでしょうか。
老後の不安はだれにでもあります。しかし、不安を抱えながら悩むだけでは、何も変わりません。今すぐ準備を始めることが大切です。
そして、自分だけの地図を手に入れてください。未来には、さまざまなサプライズが待ちかまえています。あなたが、そして私が予想もできないような激動の時代が訪れるかもしれません。
でも、安心してください。未来はそれほど暗くはありません。あなただけの地図を頼りに、一歩ずつ歩いていってください。
●第2回(明治時代に始まった「定年制」に縛られなくていい…! 日本人に必要な「脱・定年時代」の歩き方)では、現在の日本で働くうえで持っておきたいビジネスの方法について解説します。
『脱 定年時代の歩き方』発行所:Gakken
定価:1,760円(税込)
横手彰太
老後問題解決コンサルタント、家族信託エキスパート
1972年生まれ、中央大学経済学部卒。ABCマート、ニセコで飲食店経営、不動産会社の日本財託を経て、現在は、スタートアップのファミトラにて家族信託エキスパートとして従事。著書に『認知症になる前に知っておきたいお金の話』(ダイヤモンド社)、『老後の年表』(かんき出版)、『頭語の心配まるごと解決ノート』(宝島社)、『脱 定年時代の歩き方』(Gakken)がある。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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