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明治時代に始まった「定年制」に縛られなくていい…! 日本人に必要な「脱・定年時代」の歩き方

Finasee / 2023年12月11日 11時0分

明治時代に始まった「定年制」に縛られなくていい…! 日本人に必要な「脱・定年時代」の歩き方

Finasee(フィナシー)

人生100年時代といわれる現代、定年後も雇用延長で働く人が増え、働き方の選択肢も増える一方です。そんな時代にあって、働き盛り世代の会社員には老後に対して不安をかかえる人は少なくないようです。

話題の書籍『脱 定年時代の歩き方』では、従来の定年の考え方に縛られず、将来の不安に備えて幸せな老後生活を手に入れるノウハウについて、老後問題解決コンサルタントの横手彰太氏が解説。今回は、本書冒頭の「プロローグ」、序章「脱・定年時代を生き抜くための7つのヒント」の一部を特別に公開します。(全3回)

●第1回:50歳で堅実な優良企業からスタートアップへ転職…不安定に見える道を選んだ「深い理由」

※本稿は、横手彰太著『脱 定年時代の歩き方』(Gakken)の一部を再編集したものです。

50歳からの20年間で人生が決まる

「人生100年時代」は本当でしょうか。100歳まで続く人生が当たり前になる時代は、やってくるのでしょうか。

厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命(0歳の平均余命)は81.47年、女性の平均寿命は87.57年で、この40年間で男女ともに着実に寿命は延びています。

仮に100歳まで生きると仮定すると、50歳はちょうど人生の折り返し地点です。

確かに数字上はちょうど半分ですが、日常生活に制限がなく暮らせる年齢を示す健康寿命は、2019年の時点で男性72.68歳、女性75.38歳(内閣府2020年版「高齢社会白書」)でした。

何歳まで健康に暮らせるか……は、個人差があるため、大まかに70歳をリタイアの目標値に設定してみましょう。すると50歳から70歳までは20年間となります。

「もう20年しかない」と考えますか?
それとも「まだ20年もある」と考えますか?

有名な「コップ半分の水」というたとえ話があります。コップに半分入った水を見て、ある人は「まだ半分もある」と答えました。また、ある人は「もう半分しかない」と答えました。

この話は、物事のとらえ方によって人の感じ方が変わることの例として引用されます。

20年間は約240か月、240か月は約7300日です。すでに51年間、18000日以上を過ごしている私には、とても短く感じられます。

「たった7300日で人生に悔いを残さない満足感が得られるのか」
「現時点からスタートして、どこまで到達できるのか」

そう考えると、正直、不安になる気持ちもあります。

1972年生まれ、現在51歳になった私が、長年勤めていた不動産会社から転職したのは2022年のことでした。新たな就職先は「家族信託」専門のスタートアップです。

50歳になってからの転職なので、内心はドキドキしていましたが、今は決断したことを後悔していません。

会社員として新たな舞台に立ちつつ、本を書いたり、老後問題解決コンサルタントとして取材を受けたりしながら活動しています。

10年前(3650日前)の私は、今の自分の姿を全く想像していませんでした。ですから、20年もあれば、まだまだ今の自分が予測できないことを達成できると楽観的に考えることもできます。

そういう意味で「まだ20年もある」と捉えることもできます。あなたは、どう考えますか。

自分で決める人になることで「脱・定年」を実現する

不確実性の時代を言い換えるなら、「正解がない時代」でしょうか。

この20年で働き方は大きく変わりました。職場の人間関係も、生き方に対する価値観も変化し、隔世の感があります。

「昔はよかった」と懐かしむ気持ちはありません(個人的には、今のほうがよいと感じています)。良い悪いではなく、私が30代のころと50代の今を比べると、働く環境が変化したことは事実です。

日本の企業は従来から、会社依存型(メンバーシップ型)と呼ばれる雇用形態を長年採用してきました。特定の会社にぴったりの人材を社内で育成するこの方法は、年功序列・終身雇用と相性のよい制度で、日本の高度成長期を支えてきました。

一方、スタートアップなどを中心に広がりつつあるジョブ型雇用は、仕事の内容を基準に人を割り当てる雇用形態です。

アメリカ式のジョブ型雇用では、必要な仕事に応じて社内外からスペシャリストを採用するため、職能さえあれば、年齢に関係なく高給を得られる可能性があります。

日本は解雇規制が厳しいため、ジョブ型雇用がなかなか浸透しにくい一面もありますが、少しずつそちらにシフトしているのは事実でしょう。ジョブ型雇用は、本来ドライな成果主義であるのも事実ですが、そこに、過去の経験や実績を加味した日本独自のジョブ型雇用のスタイルが生まれる可能性もあります。

問題の本質は、会社依存型かジョブ型かを選択するところにはありません。日本人の場合は「定年制」という枠組みから自由になることのほうが、ずっと大切だと思います。

現在の日本では、会社の規模にかかわらず、勤務延長制度や再雇用制度を採用する企業が年々増えています。

勤務延長制度とは、定年の年齢を60歳のまま据え置きにしつつ、定年後も退職させることなく雇用契約を延長する仕組みです。

一方、再雇用制度は、60歳に到達した時点で一旦定年退職させたあと、改めて再雇用の契約を結び、期間を決めて契約を更新する制度です。こちらは、雇用形態の変更とともに人件費を低く抑えることができるため、企業側に大きなメリットがあります。

どちらも、高齢化する日本社会に合わせて、働く期間の延長を目指す制度ですが、従来の定年制から大きくはみ出すものではありません。

そもそも、定年制は、企業が定める年齢に到達した際に一律で雇用を終了する仕組みで、明治時代にスタートしました。当初は「55歳」が定年でしたが、1986年に法律の改正があり、その後、定年60歳が定着しました。

さらにその後、2012年の改正で原則65歳まで雇用することが定められ、2025年4月からは、すべての企業に「65歳への定年の引き上げ」「定年制廃止」「65歳までの継続雇用制度」のいずれかが義務づけられます。

65歳以降も働けるのは嬉しいことでしょうか。それとも、65歳以降も働き続けるのは辛いことでしょうか。

私が提案したいのは、日本企業の現況がどうであれ、以下の3つができる人になることです。

・どんな老後を過ごすかを自分で決める
・いつまで働くかを自分で決める
・どんな仕事をやるかを自分で決める

「会社から仕事をもらう」ではなく、自分が得意な仕事を会社に提供する。「会社に働かせてもらう」ではなく、自分が働きたくなくなるまで働く。「認知症や老後資金や親の介護を心配しながら生きる」のではなく、自分の老後を充実させる方法を自分で見つける。

それらをすべて実現するのが、「脱・定年時代」の歩き方です。

給料をもらう主体を変えるスモールビジネス

それでは、このような人生の歩き方を実現するためには、どうすればいいでしょうか。

自分の会社を立ち上げればいいのでしょうか。
脱サラをして、起業すればいいのでしょうか。

起業の志を持つことは悪いことではありません。リスクはありますが、起業後に会社の規模を拡大して大成功する人がいるのは事実ですから、それを否定する必要はありません。

しかし、コツコツ型を自認する私が提案するのは、もう少しローリスクの方法です。

あなたが今、会社員なら、そこを足場にして、スモールビジネスを目指しましょう。この場合のスモールビジネスとは、個人事業主やフリーランスなど、個人で行える範囲の事業を指す言葉です。

そして、できれば、まとまった資金や従業員を必要としない「ひとり企業」を目指してください。

このスモールビジネスのメリットは、たくさんあります。

・生活スタイルに合わせて仕事ができる
・自分の裁量で仕事の種類を決められる
・人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
・少ない資金でスタートできる
・変更や軌道修正がすばやくできる
・引退の時期を自分で決められる

しかも、このスモールビジネスは、最もリスクの少ない自分のタイミングで実行できます。

「まだスタートできない」と判断したら、会社の中で独立できるような立場を目指せばいいのです。「何かをやりながら片手間でできるほどビジネスは甘くない」と主張する人もいますが、それは副業の話だと思います。

今回、提案するスモールビジネスは、現在の仕事に縛られず、自由に働き方のスタイルを変えていくというものです。本業と並行して、「自分ができそうなこと」を探し、芽が出たら、それを育てて伸ばしていけばいい、と考えてください。

ただし、スモールビジネスは脱・定年時代の歩き方を実現するためのひとつの手段です。「絶対にスモールビジネスを成功させなければならない」と考えないでください。

「できそうなときにやってみる」と気楽にかまえるだけで十分なのです。

●第3回(お金、人間関係……尽きない「老後の悩み」と向き合うとき絶対してはいけないこと)では、定年後の悩みに対するマインドや対処について解説します。

『脱 定年時代の歩き方』

発行所:Gakken
定価:1,760円(税込)

横手彰太
老後問題解決コンサルタント、家族信託エキスパート

1972年生まれ、中央大学経済学部卒。ABCマート、ニセコで飲食店経営、不動産会社の日本財託を経て、現在は、スタートアップのファミトラにて家族信託エキスパートとして従事。著書に『認知症になる前に知っておきたいお金の話』(ダイヤモンド社)、『老後の年表』(かんき出版)、『頭語の心配まるごと解決ノート』(宝島社)、『脱 定年時代の歩き方』(Gakken)がある。

Finasee編集部

「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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