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退職前に亡くなったら…遺族は退職金を受け取れるor受け取れない? 【「万が一」のケースを解説】

Finasee / 2023年11月22日 11時0分

退職前に亡くなったら…遺族は退職金を受け取れるor受け取れない? 【「万が一」のケースを解説】

Finasee(フィナシー)

退職金は、会社を退職するときにもらえるお金です。企業年金も、原則60歳以降に受け取れるものです。もしも、退職金や企業年金をもらう前に亡くなってしまったら、これらの給付はどうなってしまうのでしょうか? また、退職金や企業年金を将来もらう予定の人が離婚した場合は、財産分与にどう影響するのでしょうか?

今回は、退職金や企業年金が「もしも」のときにどうなるのかを調べてみました。

退職金や企業年金をもらう前に亡くなるとどうなる?

退職金は、長く勤めた人への慰労金やご褒美ではありません。「労働の対価として支払われる賃金の後払い」という性格のお金です。労働者が働いて稼いだ賃金の一部ですから、本人が退職する前に亡くなったからといって、消滅することはありません。一般的には、死亡退職金として労働者の相続人が受け取ることになります。

本人が生きている間に受け取る退職金と、本人が亡くなった後で遺族が受け取る死亡退職金で異なる点は、退職金にかかる税金です。

生きている間に、本人が退職金を一括で受け取る場合には、退職所得控除を差し引いた金額の2分の1に所得税がかかります。一方、死亡退職金を相続人が受け取る場合は、所得税はかかりませんが、労働者が亡くなった後3年以内に支払いが確定したものは相続財産とみなされて相続税の対象となります。

ただし、死亡退職金は、全額が相続税の対象になるわけではありません。死亡退職金は、故人がもともと持っていた預貯金や不動産などの財産とは異なり、死亡をきっかけに受け取ることになった財産で「みなし相続財産」という位置づけになります。

「みなし相続財産」の死亡退職金には非課税枠があり、500万円×法定相続人の数が非課税になります。たとえば、労働者が死亡したときに、相続人が配偶者と子ども2人であったとすると、死亡退職金が1500万円以内であれば、相続税の課税対象にはならないということです。

退職金が確定給付企業年金(DB)で準備されている場合

では、会社の退職金が、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)といった、企業年金で準備されていた場合はどうなるのでしょうか?

まず、DBの場合は、規約の定めがあれば、遺族に年金または一時金として遺族給付金が支給されます。

DBの遺族給付金は、受け取ることができる遺族の範囲が次のように決められています。

1.配偶者(事実婚を含む)
2.子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
3.1、2以外で給付対象者が死亡当時生計を維持していたその他の親族

受け取り順位については、規約の定めに従います。

DBを遺族給付として受け取る場合、一時金でも年金でも所得税はかかりません。ただし、死亡退職金同様、相続税の課税対象になります。

DBの相続税は、DB加入者が亡くなったタイミングによって相続税の課税関係が異なります。本人が在職中に亡くなった場合の遺族一時金、遺族年金は「みなし相続財産」の非課税枠の対象となり、500万円×法定相続人の数まで税金はかかりません。

一方、DBを年金として受給中に亡くなった場合は、みなし相続財産の非課税枠が使えません。残りの年金額が相続税法上の定期金の評価に基づいて「有期定期金」「無期定期金」「終身定期金」の種類ごとに評価され、相続税の課税対象になります。

ちなみに、同じ年金でも厚生年金や国民年金から給付される遺族年金は、原則として所得税も相続税も課税されませんのでご安心ください。

退職金が企業型確定拠出年金(DC)で準備されている場合

次に、企業型DCはどうかというと、本人が亡くなった後で遺族が受け取れるのは「死亡一時金」です。こちらは、年金で受け取ることはできません。

死亡一時金を受け取ることのできる遺族の範囲は次の通りです。

1.指定受取人(本人が生前に事実婚を含む配偶者、子、父母、孫、祖父祖母又は兄弟姉妹のうちから指定していた場合)
2.配偶者
3.本人が死亡当時に生計を維持していた子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
4.本人が死亡当時に生計を維持していた親族
5.子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で3に該当しないもの

 受け取り順位は、上記に挙げた順番となります。同順位に2人以上いるときは、その人数によって等分支給されます。

死亡一時金を受け取る人は、死亡後5年以内に請求しないと、受け取る遺族がいないものとみなされ、死亡した人の相続財産とされます。

では、死亡一時金にかかる税金はどうなるのでしょうか?

死亡一時金の請求は5年以内ですが、「みなし相続財産」の非課税枠が適用されるのは、死亡後3年以内に支給が確定したものに限られます。3年過ぎて請求すると500万円×法定相続人の数の非課税枠が適用されなくなるので注意が必要です。3年経過後に請求すると、一時所得扱いとなり、控除額は50万円になってしまいます。また、控除後に残った金額の2分の1に相当する金額が、給与などの所得と合計して所得税の課税対象となります。

さらに、請求せずに5年経過すると、相続財産に組み込まれてしまうので、もう「みなし」でもなく「一時所得」でもありません。故人が遺した他の預貯金や不動産などと合算されて、相続税の基礎控除以上の財産がある場合は、相続税がかかるというしくみです。

大変ややこしいですが、企業型DCの死亡一時金は、3年以内に受け取ったほうが、税金がかからない可能性が高そうです。

病気やケガで退職する場合はどうなる?

企業に勤める人が病気やケガで働けなくなり退職するときは、就業規則や退職金規程に従って退職時までの期間に応じた退職金が支給されます。また、病気やケガによって障害認定を受けた場合は、障害の程度に応じて厚生年金や国民年金から、障害年金が給付されます。

DBや企業型DCでも、規約に定めがある場合は、障害給付金の支給が受けられます。

DBは、病気やケガで医師や歯科医師の診察を受けた日(初診日)に加入者であった人が、初診日から1年6カ月経過した日(障害認定日)に、その病気やケガを起因とする障害の状態に至った場合、年金または一時金として障害給付金が支給されます。

障害の程度は、厚生年金保険法で定められた1級~3級の障害等級の範囲内で規約に定めることとされています。

企業型DCの場合は、初診日から起算して1年6カ月経過した日から75歳になる日の前日までに、一定以上の障害状態(障害等級1~2級、身体障害1~3級、重度知的障害、精神障害1~2級)に至った人が、障害給付金を請求できます。受け取り方は、原則として年金ですが、規約によりその全部または一部を一時金として受給することもできます。

このように企業年金は、一般的な退職金と異なり、病気やケガで働けなくなったときの生活をカバーしてくれる給付が受けられるしくみもあるのです。

離婚する場合は財産分与の対象になる?

さて、病気やケガ、死亡などで退職金や企業年金がどうなるかを見てきましたが、最後に、離婚した場合の退職金や企業年金の扱いについて紹介しておきます。

夫婦が協議離婚をする場合、財産分与が行われます。

財産分与とは、離婚をした人が、他方に財産の分与を請求できる制度のことです。財産分与の基本は、夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配です。夫婦が共働きでも、一方が専業主婦(夫)であっても、夫婦の財産を2分の1ずつ分けるのが原則になります。

退職金や企業年金は「給料の後払い」という性質上、婚姻期間に形成された財産の一部と考えられるため、財産分与の対象とされています。すでに支払われた退職金や企業年金だけでなく、将来支払われる予定の退職金や企業年金も対象です。まだ、支払われていない退職金や企業年金は、離婚する時点で受け取ることができる支払い予定額で計算されるようです。

財産分与をするときは、夫婦の財産の清算を基本に、離婚後の生活保障、離婚の原因をつくった側の損害賠償といった要素も考慮しながら、夫婦間で話し合って金額を決めるのが原則です。話し合いが調わない場合や、話し合い自体ができない場合は、家庭裁判所に調停または審判の申し立てをして決定することになります。財産分与は離婚と同時でも、離婚してからでも請求できますが、家庭裁判所への申し立ては離婚から2年過ぎるとできなくなるのでご注意を!

以上、今回は、退職金と企業年金にまつわる「もしも」の事態を調べてみました。当たり前のことですが、何事もなく定年を迎え、無事に退職金や企業年金を受け取れるに越したことはないですね。

加茂 直美/フリーライター・行政書士

主に年金、老後資金、行政手続きなどの細かい情報をリサーチし生活に活かすための記事を執筆。行政書士。2級DCプランナー。行政書士事務所オフィスリーガルブレーンを主宰。『役所や会社は教えてくれない! 定年と年金 3つ年金と退職金を最大限に受け取る方法』(大江加代 監修/ART NEXT)『アメリカ人が当たり前に知っているお金のこと全部』(西村隆男 監修/宝島社)『60歳からの得する年金!働きながら「届け出」だけでお金がもらえる本 2023-2024最新版』(小泉正典 監修/講談社MOOK)などの取材、企画、構成、執筆等を担当。

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