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今後「米国の金利」が下がると何が起きる? 日本経済にも‟影響大”と言えるワケ

Finasee / 2023年11月13日 17時0分

今後「米国の金利」が下がると何が起きる? 日本経済にも‟影響大”と言えるワケ

Finasee(フィナシー)

大和アセットマネジメントが毎週、投資信託の受益者向けに出している情報提供資料に「週刊!投資環境」があります。

現在、最新号は11月2日号です。毎週末、大和アセットマネジメントのサイトにある「マーケット情報」から読むことができます。内容は、レポートが公表された週の経済情勢や金利、株式、REITの値動きなどに関する振り返りと、それぞれの来週の見通しが簡単にまとめられています。

「見通し」といっても来週のものなので、あくまでも短期間の見通しになりますが、何らかの形で、マーケットの値動きに損益が影響されるような投資商品を保有している投資家は、参考までにチェックしておくと良いでしょう。

日銀の政策修正を受けて金利はどうなる?

11月2日にリリースされた同レポートのテーマは、「長期金利は低下基調に転じるか」というものです。

10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合を受け、日本においてはYCC(イールドカーブ・コントロール)の政策修正が決定され、ついに10年国債利回りが1%を超えて上昇することを容認する、といった表現が用いられました。

日本の消費者物価指数は、9月の生鮮食品及びエネルギーを除く総合で、前年同月比4.2%の上昇です。物価がこれだけ上がっているなかで、償還までの期間が10年の長期国債利回りが1%に満たないのは、やはりいびつです。

こうしたゆがみに目ざとい海外ヘッジファンドなどが、債券先物市場で大量に日本国債を売り始めたら、堤防が決壊するように長期金利が大幅に跳ね上がるリスクがあります。YCCの政策修正は、こうした投機的な動きを未然に防ぐための策とも言えるでしょう。

したがって、日本の金利はこれから先、上振れる可能性がありますが、米国は少し事情が違います。

インフレが続いていた米国の現状

日本よりもはるかに高いインフレ率だった米国では、ようやく物価上昇に歯止めが掛かり始めました。

米国の消費者物価指数の前年同月比は、2021年2月までは1%台で推移していましたが、同年4月に4%台、5月に5%台、10月に6%台、そして12月に7%台というように上昇を続け、2022年6月には9.1%に達しました。

この急激なインフレに対して、米国の中央銀行であるFRBは、政策金利であるFFレートの誘導目標を立て続けに引き上げ、強烈な金融引き締め政策を行いました。2022年1月まで、FFレートの誘導目標は0.00%~0.25%でしたが、そこから11回にわたって引き上げられ、2023年11月時点では5.25%~5.50%となっています。また米国長期金利の指標となる10年国債利回りは、2022年1月時点では1.6%前後で推移していたのが、2023年10月時点では5%寸前まで上昇しました。

金融引き締め政策には、世の中に出回るお金の量を減らすことによって、物価を沈静化させる効果があります。一時は9.1%まで上昇した消費者物価指数が徐々に低下し、2023年9月の前年同月比が3.7%の上昇まで落ち着きつつあることからも、金融引き締め政策の効果が確認されます。

そしてマーケット、とりわけ株式市場の関心事は、いつ米国が利下げに転じるのかに移り始めています。

NYダウは2022年1月に、3万6799ドルを付けて過去最高値を更新しました。ところが、金利の上昇に伴って下落に転じ、同年6月には3万ドルを割り込み、2万9888ドルまで下げました。そこから再び上昇に転じ、2023年8月には3万5630ドルの高値を付けましたが、現時点で最高値は更新できていません。

米国の株式市場にとっては金利の上昇が、株価の重石になっていると考えられます。直近でも、9月に行われたFOMCで、FFレートの誘導目標は据え置かれましたが、FRBがまだ利上げを検討しているというマーケットの観測を拭い去れず、NYダウは9月15日から10月3日にかけて、大幅に下落しました。

逆の見方をすれば、米国の金利がピークアウトして低下に向かえば、米国の株価が上昇に転じる可能性が見えてきます。

では、本当に米国の金利は低下へと向かうのでしょうか。

雇用統計から見る米国経済のこれから

同レポートによると、「雇用統計は堅調ながらも労働需要の後退を示唆する結果が見込まれる」ということです。

これまで人手不足で悲鳴を上げていた米国の労働市場ですが、それはパンデミックに伴う各種給付金などによって家計部門が潤い、働かなくても生活できる状況が続いていたからと考えられます。

しかし、すでに経済は正常化へと向かっており、これから先、給付金の類いは期待できません。だとしたら、いよいよ働く必要があります。その証拠に、米国の労働参加率が、徐々に上昇してきました。

労働参加率は、生産年齢人口に占める「就業者+失業者」の割合です。10月時点における米国の就業者数は、9月比で34万8000人の減少。対して失業者は14万6000人増加しました。失業者の定義は、職探しをしていることが条件になります。はなから働くことを諦めている人は、失業者にカウントされません。

これらの数字から分かるのは、職探しをしている人が、いよいよ増えてきたということです。

コロナ後のインフレにも関わらず、米国の個人消費は旺盛と言われてきましたが、給付金の類いが底を尽き、職探しをする人が増える一方、労働需要が後退するとなったら、これまで旺盛だった個人消費が落ち込むはずです。米国のGDPのうち約7割は個人消費なので、その落ち込みがひどくなると、米国の景気は減速感が強まっていくでしょう。

そうなれば、米国の長期金利はピークを付けたという認識が広まり、FRBもFFレートの誘導目標をさらに引き上げられなくなるはずです。実際、一時は4.996%まで上昇した米国10年国債の利回りは、11月3日時点で4.484%まで低下しました。

米国経済の行方は日本にとって重要!

これからの米国経済は、雇用環境の悪化と個人消費の低迷によって、景気の減速感が強まる恐れはあるものの、「不景気の株高」という言葉もあります。

不景気になると金利が低下し、いずれは個人消費の回復や、企業の設備投資意欲の高まりで景気が回復し、企業業績も改善へと向かう。そこまでを織り込んだうえで、株式が買われるというケースは少なくありません。

そして、何よりも肝心なのは、米国と日本の株価が連動していることです。米国の株価が、再び最高値更新を目指して上昇傾向をたどれば、日本の株価にもポジティブな要因になります。

確かに日本の長期金利も、ひところに比べれば上昇していますが、それでも10年国債利回りで1%前後ですから、高金利とは言えませんし、この程度の金利上昇であれば、日本経済に大きなダメージが及ぶことはないでしょう。それよりも、米国における長期金利低下と株高が、日本株に対してポジティブな影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。

米国景気の行方とFRBの金融政策は、これからの日本の株価を見るうえで、重要な要素になってくるでしょう。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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