静かに上昇するKDDI株 金融ビジネス戦略は第二の柱となるか
Finasee / 2023年11月21日 17時0分
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Finasee(フィナシー)
KDDIの株価が長期上昇しています。業績も安定しており、純利益は2023年3月期に過去最高を更新しました。翌期も増収増益を予想しており、投資家の買いを誘っているようです。
【KDDIの業績】
売上高 純利益 2022年3月期 5兆4467億円 6725億円 2023年3月期 5兆6718億円 6775億円 2024年3月期(予想) 5兆8000億円 6800億円※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想
出所:KDDI 決算短信
【KDDIの株価(月足、2020年10月~2023年10月)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/4/1/800m/img_41c44dedb1bace45925cb2f25ede399856901.jpg)
KDDIは「JPXプライム150指数」採用銘柄でもあります。構成銘柄は資本収益性と市場評価性を基準に選ばれますが、KDDIは双方を満たし採用されました。
KDDIには投資対象としてどのような魅力があるのでしょうか。設立の経緯と業績および配当金の推移から探ってみましょう。
経営の神様が作ったNTTのライバルKDDIは「au(エーユー)」や「UQモバイル」などのブランドで通信サービスを提供する企業です。通信事業は戦後しばらく日本電信電話(以下・NTT)による独占が続きました。KDDIの前身となる第二電電は、通信の自由化を目指す電気通信事業法の施行に合わせて設立されます。
第二電電は稲盛和夫(いなもり・かずお)氏を中心に設立された企業でもあります。稲盛氏は京セラの創業者でもあり、組織を細分化し独立採算制を採る「アメーバ経営」で知られます。経営破綻した日本航空の再建にも尽力し、わずか2年8か月で再上場させました。その経営手腕などから「経営の神様」と称されることもあります。
業界の盟主として君臨するNTTに対し、後発でしかも異業種からの参入である第二電電は苦戦するとみられていました。事実NTTのシェアは圧倒的で価格競争力も強く、競争の中心となった移動通信でも支配的な立場が続きます。
これに対抗するため第二電電は他2社の通信会社を吸収し、2001年に社名をKDDIへ変更しました。KDDIは業界2位となり、通信業界はNTTと日本テレコム(現・ソフトバンク)の3社に集約されます。KDDIは音楽配信サービスなどを武器に移動通信でシェアを伸ばし、現在もNTTグループに次ぐ契約数を維持しています。
【携帯電話契約数(2023年9月末)】
・NTTドコモ:8851万件
・KDDI:6517万件
・ソフトバンク:5300万件
※KDDIは沖縄セルラー電話除く。ソフトバンクはPHS除く。
出所:電気通信事業者協会 事業者別契約数
【KDDIとNTTの比較(連結)】
KDDI NTT 創業 1984年 1952年 売上高 5兆6718億円 13兆1362億円 純利益 6775億円 1兆2131億円 時価総額 10兆7352億円 15兆8282億円 従業員の数 4万9659人 33万8651人※売上高および純利益は2023年3月期、時価総額は2023年11月14日終値時点
※従業員の数は2023年3月末時点
出所:各社の有価証券報告書
KDDI発足から負け知らず 22期連続増益を達成KDDIの強みは安定したビジネスにあります。収益の要である移動通信事業は大手3社で寡占状態にあり、新規参入した楽天モバイルとKDDIは提携関係にあります。政府主導で価格の引き下げが図られたこともありますが、基本的に競争は緩やかで利益を確保しやすい状況にあるでしょう。
業績からも安定性がうかがえます。営業利益はKDDI発足後から減少したことがなく、2001年3月期から22期連続で増益を果たしました。2019年3月期には初めて1兆円に到達しています。
【KDDIの営業利益(2001年3月期~2023年3月期)】
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配当も堅調です。増配こそ2002年3月期に見送っていますが、減配や無配に陥ったことはありません。純利益が減少した年も配当金を増やしており、連続増配の記録は2023年3月期で21に達しました。
【KDDIの純利益と配当金(2001年3月期~2023年3月期)】
![](https://finasee.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/800m/img_88fc12cbe71bb3ffc559d9f2f26c871392066.jpg)
通信業界では金融領域への進出が一つの潮流となっています。ソフトバンクグループはPayPayやLINEなどを通じ個人向け金融サービスを提供し、NTTはネット証券大手のマネックスグループを子会社化しました。
その中でもKDDIは特に金融領域への進出に積極的です。2008年にじぶん銀行(現・auじぶん銀行)のサービスをリリースしたほか、2011年にはau損保のサービスを開始しました。
さらに2019年には個人向け金融サービスを総合的に提供する「スマートマネー構想」を公表し、金融に特化した中間持株会社としてauフィナンシャルホールディングスを設立しました。今やKDDIは、銀行・証券・保険といった多数の金融会社を持つ金融グループとしての側面を持っています。
【KDDIの主なグループ金融会社】
主な業務・サービス auじぶん銀行 銀行業 auカブコム証券 金融商品取引業 auアセットマネジメント 投資運用業、投資助言・代理業 au損害保険 損害保険業 auフィナンシャルパートナー 保険代理業 auフィナンシャルサービス 貸金業、クレジット業 auペイメント 電子マネー、スマホ決済サービス出所:auフィナンシャルホールディングス 事業案内
ただし現時点では金融部門の貢献は大きくありません。auフィナンシャルホールディングスの業績はKDDI全体から見れば小規模です。
【auフィナンシャルホールディングスの業績(2023年3月期)】
・売上高:2148億円
・営業利益:360億円
・(参考)連結売上高:5兆6718億円
・(参考)連結営業利益:1兆0757億円
出所:KDDI 決算詳細資料
KDDIは中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)において、金融をはじめとした非通信事業の成長を目指す事業戦略を公表しました。金融事業では2桁のCAGR(年平均成長率)を目指す計画で、5Gやその他の注力領域と合わせ2兆円規模の成長投資を実施するとしています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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