叔母が病院に搬送され…50代女性が困惑した、医師からの「延命処置の確認」
Finasee / 2023年11月29日 11時0分
Finasee(フィナシー)
絵美さん(女性、55歳)は、フリーのイラストレーター。いわゆる“売れっ子”で、その作品は誰もが目にしたことがあると言っていいほど様々なものに使われています。都心から電車で30分ほどの郊外の小さな一戸建てを40代で購入し、アトリエ兼自宅としています。一人暮らしで、スタッフも1人アシスタントを雇っているだけなので、経済的にはかなり余裕があります。
両親は絵美さんが30代の時に相次いで病気で亡くなりました。妹はCAとして忙しく働いており、絵美さん同様独身です。帰国すると絵美さんの家に遊びに来ます。また、長年交際しているパートナーも近所におり、週末はどちらかの家にいることが多いです。
ついこの間、再会した叔母とは、時折はがきのやり取りをするようになりました※。叔母は軽度の認知症があり、施設に入居していますが、絵美さんのイラストをいつも喜んでくれ、叔母の絵手紙もなかなか上手です。母を亡くした絵美さんには母親代わりのように感じられることもありました。そんな叔母もいわゆる「おひとりさま」でした。
※再会の経緯については、過去記事(“天涯孤独”の叔母が認知症に…唯一の親族が「面倒」と感じたある役割)ご参照。
突然の「ご本人は延命処置を希望していますか?」という問いそんなある日、叔母の体調が急に悪化して搬送されたので来てほしいという連絡が入りました。たまたま大きな仕事を仕上げた後で休みを取っていたので、すぐに駆け付けることができました。
叔母は集中治療室に入っており、外で待っていると、医師が二人現れました。絵美さんが親族とわかると、「ご本人は延命処置を希望されていますか?ご家族はどのようにお考えですか?」と矢継ぎ早に聞かれました。すぐに亡くなるわけではないけれど、急変した場合に備えて聞かれているようです。
両親の時は、ある程度見通しのつく病状だったので、そのようなことの判断を迫られたことはありませんでした。また、ある程度両親の希望も知っていました。ですが、叔母のことはそこまでよく知りません。人の命に関わることの判断を急に求められ、また延命処置がどのようなことを指しているのかもよくわからないので、絵美さんはその場では答えることができませんでした。
医師たちは忙しそうに戻っていき、看護師からまた後で聞くので他の手続きを済ますようにと言われました。また、オムツを買ってくるようにとも言われ、急いで院内の売店で調達して持っていきました。
延命治療は本人の希望が最優先だが、それが分からない場合は…その人に回復の見込みがある場合は、当然治療が行われるのですが、実施可能なすべての医療上の措置を適切に行ったとしても、回復の可能性がなく死期が間近に迫っている場合は「回復の見込みがない状態」となります。延命処置は、回復の見込みがない状態において、何らかの生命維持処置によって短期間に死亡することを防いで、生命の延長を図る処置のことを指します。
具体的には、抗がん剤や抗菌薬といった薬剤の投与、経管栄養や中心静脈栄養といった栄養補給、昇圧剤や強心剤の投与、輸血、酸素吸入、気管切開、気管挿管、人工呼吸器装着、補助循環装置・人工肺の装着、血液浄化療法(人工透析)などが行われます。
もう回復する見込みがない中でもこれらの医療処置を受け、できるだけ長く生きられるようにするのがよいという考え方と、これらの処置を受けないが、死期は早まったとしてもより穏やかなに過ごせるという考え方があり、基本的には本人の望むようにすることが目指されています。
ただ、絵美さんの叔母のように、本人の状態が悪く自らの意思を表明できないことがあります。事前に「リビング・ウィル」などの事前指示書を残している人もまだ多くはありません。そんな時は、治療にあたる医療チームは家族等と話し合い、本人の意思を推定し、本人にとって最善の治療・ケアを提供することとされています。
今回は緊急入院だったこともあり、そのような話し合いができないまま判断だけを求められてしまったのでした。また、仮に話し合いをしたとしても、絵美さんは最近再会し、たまにはがきのやり取りをするくらいの関係ですので、叔母の延命処置に関する意思を推定できるほどの情報を持ってはいないのです。
●叔母はどうなる? そして、この先もし絵美さんにも似た事態が起きたときにどうやって妹やパートナーに意思を伝えればいいのか……。後編【「延命処置」希望する・しないをいきなり聞く前に―もっと知るべき「大切なこと」】にて、解説します。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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