「延命処置」希望する・しないをいきなり聞く前に―もっと知るべき「大切なこと」
Finasee / 2023年11月29日 11時0分
Finasee(フィナシー)
絵美さん(女性、55歳)は、フリーのイラストレーター。両親はすでに他界し、一人暮らしではありますが、近所にパートナーが住み、CAの妹とも関係は良好で、忙しいながらも充実した生活を送っていました。
叔母に再会し、少し前からはがきの往復で交流を深めていた矢先、叔母が病院に搬送されたので来てほしいという連絡が入りました。そして、病院に着くと、医師から「ご本人は延命処置を希望されていますか? ご家族はどのようにお考えですか?」と聞かれ、叔母の意思については何も知らない絵美さんは困惑してしまったのでした。
●前編:叔母が病院に搬送され…50代女性が困惑した、医師からの「延命処置の確認」
本人の意思が分からないとき、延命処置は家族→医療・ケアチームの順で決定を下す厚生労働省は、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を出しています。そこでは、人生の最終段階における医療・ケアの決定方針は、医師等から十分な情報提供をした上で、本人と医療・ケアチームが十分に話し合い、本人の意思決定を基本として最終的に方針を決めることになっています。
それも、一度ではなく、繰り返し話し合うこととされています。本人の意思が確認できない場合は、家族等が本人の意思を推定できるなら、その推定意思を尊重することになっており、意思の推定が難しければ本人に代わる者として医療・ケアチームが家族等と十分に話し合うこととなっています。
家族等がいなければ、医療・ケアチームが本人にとっての最善の方針を取ることになっています。「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」では、成年後見人やケアマネジャー、ホームヘルパーなどが繰り返し最善の方法を話し合うこととされており、医療機関の臨床倫理委員会で検討されることもあります。
ただ、親族がいる場合にはやはり親族の合意を得ることは重要視されていますので、絵美さんのように判断を求められることが現実的には多いと思われます。
延命処置の意思を周囲と分かち合うための具体策は…幸い、叔母の意識は1週間で回復し、一般の病棟に移ることができました。心臓がもともと弱かったところに風邪を引いてしまい、一時的に心肺機能が低下したようで、後遺症もなく施設に戻れそうです。
絵美さんはまた仕事が忙しくなりそうで、退院に付き添うことはできないので、施設の人と相談して、同じ法人が運営する付き添いのサービスを自費で利用することにしました。
延命処置について調べていくと、「リビング・ウィル」「事前指示書」「アドバンスト・ケア・プランニング」などの言葉があることが分かりました。様々な形はありますが、自分の希望を周りと話し合い、文書の形で残しておけるものです。
絵美さんはまず、自分は何を希望するのかを書いてみようとしましたが、実際自分がその時になったらどう思うかはわからないと悩んでしまいました。もし、妹があと数週間で外国から帰ってくると言われたらそれまでは延命したいし、すぐに会えるなら延命処置を希望せず、会えたのちに「逝かせてほしい」気がします。苦痛が大きいことは嫌だけど、それほどでもないならできるだけ長く生きていたいと思います。書面の例はシンプルに見えますが、決めるとなると難しく、記入できませんでした。
絵美さんですら悩んでしまうのに、体が弱く認知機能が低下している叔母にいきなりこのような判断を迫ることは気が引けます。ですが、この間のようなことがまた起きた場合、何も知らずに“判断だけ”下すこともできません。「まずゆっくり話をすることからかな」とパートナーに話すと、「もしバナゲーム」というものがあると教えてくれました。一般社団法人iACPが翻訳しているもので、カードゲームの形をとって、自分にとって大事なこと(家族と一緒に過ごす、人との温かいつながりがあるなど)を取捨選択していくものです。
確かに、自分のことを考えたときも、いきなり延命をしたいかどうかではなく、妹のことが真っ先に頭に浮かんでいました。死について考えるより、叔母が何を大切に思っているかを知るほうが、これから先何か代わりに考えなければならない時に、よりよい判断ができるような気がします。今度訪問した時に、母の思い出も話したりしながら、一緒にやってみるつもりです。
沢村 香苗/日本総合研究所 スペシャリスト
東京大学文学部卒業。同大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学。研究機関勤務を経て、2014年に株式会社日本総合研究所に入社。研究・専門分野は高齢者心理学、消費者行動論で、「高齢者の身元保証人、身元保証等高齢者サポート事業に関する調査研究」など実績多数。著書に『自治体・地域で出来る!シニアのデジタル化が拓く豊かな未来』(学陽書房)。
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