1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

新NISA・iDeCo・企業型DC 三大税優遇制度の賢い活用方法

Finasee / 2023年11月30日 11時0分

新NISA・iDeCo・企業型DC 三大税優遇制度の賢い活用方法

Finasee(フィナシー)

2024年1月から少額投資非課税制度(NISA)が新しくなります(新NISA)。
格段に使いやすくなる新NISAの基本と活用法を考えてみましょう。

現行NISAから新NISAへ。4つの変更点

NISAは、簡単に言ってしまえば「運用益が非課税になる」お得な制度です。例えば100万円を投資して、120万円で売却すると20万円の利益ですが、通常は20万円から約20%の税金が差し引かれて、116万円にしかなりません(※1)。それがNISA口座であれば、120万円を受け取ることができます。

現在のNISA(現行NISA)も新NISAも、この運用益非課税のメリットは同じですが、新NISAはより使い勝手がよくなります。新NISAの「新しい」点は、大きく4点です。

①制度の恒久化
②年間投資枠の大幅増加(つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円)
③非課税保有限度額の増加(1800万円)
④つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に

第一に、現行のNISAが将来的には効力の切れる時限措置であるのと異なり、新NISAは制度の恒久化によってずっと保有できる安心感があり、長期投資を実践できます。そのため、より長期間の資産形成が必要な老後資金にも活用しやすくなるといえるでしょう。

次に、年間投資枠が倍以上になります。現行の「つみたてNISA」は1年あたり40万円ですから3倍の120万円に、「一般NISA」は年120万円から成長投資枠の240万円へと倍増します。さらに、現行NISAでは1年ごとに「つみたてNISA」と「一般NISA」のどちらかを選ぶ必要がありましたが、新NISAでは双方を利用可能になり、年間投資枠は合わせて360万円まで増加します。また、1年ごとの投資枠を使いきる必要もなくなり、生涯で非課税保有限度額の1800万円まで活用できることになります。さらに、新NISA枠で購入した運用商品を売却すると、購入時点の価額(簿価)分が翌年以降の非課税保有限度額に復活するため、現行NISAのデメリットが解消されているといえます。

(※1)復興所得税や手数料等は考慮していません。

NISAよりさらに手厚い税優遇の確定拠出年金(DC)

NISAは、運用益非課税という税優遇により、個々人の資産形成を国が応援している、ともいえます。

一方の確定拠出年金(DC)には企業型と個人型(愛称iDeCo)の二種類があります。運用益非課税のメリットはNISA同様ですが、さらに拠出時の所得税・住民税の控除対象となります。つまりDCは、掛金拠出した分だけ、所得税・住民税の軽減効果があるのです。

所得控除のメリットを数字でみると(所得税の下限5%、住民税10%で計算)、例えば月1.2万円を1年間DC制度に拠出した場合、14.4万円の15%で、少なくとも2.16万円の節税になります。ただし、大きな税優遇は、使い道を老後所得に限定しているからこそのため、注意点もあります。

・DCは原則60歳までは引き出せない資産になる
・DCは公的年金の被保険者でなければ掛金拠出ができない
・DCの拠出限度額は他の企業年金制度の有無等により複雑な設定で金額も大きくない(自営業者の6.8万円が最大で公務員の1.2万円が最小・いずれも月額)

DCの所得控除には、定期的な掛金拠出が必要です。iDeCoは個人が掛金拠出するので所得控除の対象となります(※2)。企業型DCは原則、事業主が掛金を負担するため、本人拠出は加入者掛金(マッチング)拠出が定められている必要があります(※3)

(※2)2020年10月以降、企業型DCの加入者もマッチング拠出をしていない場合で拠出限度額に余裕がある場合はiDeCoへの掛金拠出が可能。
(※3)マッチング拠出が定められている規約の加入者数782万人(全体の49.9%)、実際にマッチング拠出を行っている加入者数131万人。出所:「確定拠出年金統計資料(2022年3月末)」運営管理機関連絡協議会

NISAとDCは併用可能、ライフプランを考えて活用を

NISAとDCは両方を併用できるのか?と質問をいただくことが多いのですが、答えは「両方を活用できます」となります。資金に余裕があるのであれば、両制度を活用しましょう。とはいえ、新NISAの非課税保有限度額が上がり、恒久化されたことで、どちらを優先すべきか、に迷われる方も多いと思います。まずは、いつどんな場面でお金が必要になるかを想定することが重要です。

年代や収入などによって考え方が異なるため、ケースごとに考え方を整理してみましょう。

【Aさんのケース】60歳 再雇用勤務(妻はパートタイマー)

・60歳になったときに37年3カ月務めた企業を定年退職し、退職一時金1500万円を受給
・退職一時金のほかに企業型DCにも800万円の残高があり、受け取っていない
・世帯貯蓄3000万円(うち退職一時金1500万円、その他1000万円、妻名義500万円)
・60歳から10年間は生命保険会社の年金支払が年130万円
・生活費(年)350万円、世帯の手取り年収350万円(Aさんの給与とパートタイマーの妻の収入)
・住宅ローンは完済

〈対応案〉
1)再雇用の間は厚生年金保険の被保険者のため、iDeCo口座を新たに申し込み、毎月5000円の掛金拠出をします。
→Aさんの勤続期間に対応した退職所得控除額は2060万円で、企業型DCの資産も一時金で受け取ろうとすると、課税が発生する。
→iDeCoへの掛金拠出で退職所得控除の計算に使う勤続年数を延ばすことが可能。
→生命保険会社の年金支払が69歳で終了するため、70歳でDC資産の給付手続きを行う前提。
→企業型DC800万円は国内株式型投資信託100%を選択しているため、定期的にスイッチングしながら株式投資信託の比率を下げる。
→企業型DCは給付手続き開始までの間に、iDeCoに資産移換し、退職所得控除の勤続年数(60歳までの期間から退職一時金で活用した分を引いた期間にiDeCo拠出5年分を加算)を一本化。
2)退職金を含む預貯金は、新NISAに資産を移していきます。つみたて投資枠で月10万円ずつ年間120万円、成長投資枠でも同様に月20万円ずつ年間240万円を投資信託の購入にあてます。現行NISAと異なり、成長投資枠でもつみたて投資枠の投資信託を活用できます。
→当面の生活費は収入で賄え、生命保険会社の年金支払いもあることからAさんの非課税保有限度額分を5年間で使いきる計算。
→リスクを抑えたバランス型投資信託を選択することで、給与がなくなる65歳以降は運用しながら取り崩すことを想定し、資産寿命を延ばす。

【Bさんのケース】54歳・自営業(妻は派遣契約社員)

・世帯の手取り年収800万円
・世帯貯蓄4000万円(うち遺産相続分3000万円)
・生活費(年)450万円
・住宅ローンの返済額150万円

〈対応案〉
1)BさんはiDeCoに毎月6.8万円を拠出し、64歳まで継続します。
→国民年金の未納期間が4年間あるため、64歳まで国民年金に任意加入することでiDeCoを継続可能。
→年間81.6万円分が所得控除となり節税効果は年間24万4800円(課税所得450万円で試算)、10年間で245万円弱の節税効果がポイント。
→公的年金等控除を活用して年金で受け取ることを想定(退職所得控除はiDeCoへの掛金拠出10年で400万円)。
→運用商品は65歳をターゲットイヤー年にしたバランス型。
2)当面の年間収支はiDeCoの掛金分を差し引いても200万円の余裕があるため、貯蓄はなるべく早く新NISAに移行します。Bさん本人は、つみたて投資枠と成長投資枠のそれぞれに毎月10万円ずつ、バランス型の投資信託を購入します。Bさんの妻は、つみたて投資枠で全世界株式型を毎月10万円ずつ、投資していきます。
→世帯での投資リスクは高めだが、相続分の資産もあることから積立投資で時間分散をしながら投資し、将来的なインフレリスクに対応する。

【Cさんのケース】35歳・フリーランス(独身)

・平均月収30万円(手取り)
・貯蓄500万円
・生活費(年)300万円(経費を除いた金額)
・事務所兼の賃貸マンションに居住
〈対応案〉
1)新NISAのつみたて投資枠に毎月5万円ずつ投資していきます。投資期間が長いことから、米国株式型投資信託を選択します。
→公的年金は国民年金のみのため老後資金も気になるが、家を買うかどうかを検討中のため、必要に応じて現金化ができる制度を選択。
→積立投資を毎日実施できる金融機関もある。その場合は毎日2500円ずつ投資。
→定期的な積立が苦しくなった場合は、いったん投資を休むことも検討。
2)iDeCoは収入が増えて余裕ができてきたら活用します。
→所得控除による節税効果が大きく、老後資金形成のため、という明確な目的をもってiDeCoを。
→退職所得控除はiDeCoの掛金拠出期間を勤続年数として計算するので、早い時期から最低金額の5000円を積み立てておくのも一つの考え方。

【Dさんのケース】27歳・会社員(妻は派遣契約社員)

・年収350万円
・貯蓄80万円
・家賃以外の生活費(年)140万円
・賃貸アパートに居住(家賃 7万円)
〈対応案〉
1)企業型DCのマッチング拠出に毎月3000円ずつ給与天引きで積み立てます。
→お勤め先に企業型DCがありマッチング拠出が可能な場合は給与天引きで活用できるので手軽。マッチング拠出分は、最初からなかったもの、として生活する習慣づけにも。
→投資のハードルを若いうちから下げるのに役立つ。
→運用商品はインデックス型の国内株式型投資信託を選択。
→TOPIXに連動するインデックス型の値動きを定期的に確認することで、株式市場の勉強も可能。
→iDeCoは最低拠出額が5000円のため、少額でスタートする場合はiDeCoよりもマッチング拠出のほうが使い勝手がよい。
2)新NISAでは、毎月1万円をつみたて投資枠で利用し、運用商品はリスクが高めの全世界株式型を選択します。
→無理のない範囲で積立投資を行う。
→長期の投資期間があるので、早めに始めて福利効果を最大限、活用。
→積立投資を毎日実施できる金融機関もある。その場合は毎日500円ずつ投資。
→貯蓄は月収の約3カ月分を確保しているので、病気やけがで働けない場合も、ある程度、対応可能。
3)これから先のライフイベント(住宅購入など)では、NISAから引き出すことも想定します。
→新NISAから引き出して活用すると、非課税保有限度額が復活するので、収入や生活費を考えながらNISAへの投資額を決定。
→将来的には老後資産形成のためにマッチング拠出の増額やiDeCoの活用も検討。

元本保証のない運用であることを意識する

DCにしろNISAにしろ、リスクのある運用商品(投資信託、上場株式)を活用するため、元本が保証されるものではありません。利用には、いくつかの注意点があります。

第一に、株式市場などの値段が上下動する運用商品を保有するため(※4)、常に評価益の状態にあるとは限りません。評価損が発生しても慌てないように、スタート時にご自身のリスクの考え方を把握しておくことが重要です。ご自身がどれぐらいのマイナスが発生したらストレスに感じるか、から考えましょう。

第二に、実際に評価損が生じた場合、あわててスイッチングや換金をしないようにしましょう。値段が下がった時は、積立投資であれば、たくさん買うことができている時期、ともいえます。安い値段でたくさん買えていれば、値段が上がった時のプラスも大きくなることが想定されます。

ただし、Aさん(60代)やBさん(50代)のように、ある程度資金に余裕があっても運用期間が限られている場合は、大きなリスクをとりすぎない、ということも重要です。リーマンショック時のように一挙に3割を超える値下がりが発生すると、復調するのは時間がかかることもあるからです。

第三に、投資信託を選ぶ際は、個々の投資信託の手数料をチェックしましょう。2023年11月2日時点のつみたてNISAの対象商品は257本です。そのうち、投資先を内外・海外とする「指定インデックス投信(※5)」には、信託報酬が0.1%を切っているものが26本もあります。例えば、信託報酬率0.1%は、運用資産100万円の手数料が年間約1000円ということです。なお、DCもNISAも投資信託の「販売手数料」がかからないことが一般的です。

第四の注意点は、NISAでは損益通算ができないことです。ある年にA社の株式をマイナス100万円で売却し、B社の株式をプラス100万円で売却した場合、一般の証券口座では損益通算されて利益がゼロになりますが、A社の株式をNISA口座で、B社の株式を一般口座で保有していた場合は損益通算ができないため、B社の100万円の運用益に20.315%課税されてしまうということになります。

(※4)DCでは投資信託のほか、定期預金などの元本確保型商品が運用商品にラインアップされている場合もある。
(※5)金融庁の基準を満たすインデックス投資信託のこと。運用期間が5年以上経過し、純資産額が50億円以上で、運用期間中の3分の2の期間で資金流入しているものが該当。

積立投資はタイミングを考える必要がない

積立投資は、購入するタイミングを考える必要がない、という点で便利です。積立投資でない場合、いつ買えばいいのか、今は高いのではないか、と考えているうちにタイミングを逃すことにもなりかねません。

株価などの値段が上がるか下がるかを当てることは誰にもできません。購入時期を積立投資によって分散することで、タイミングを考える必要がなくなります。また、値段が下がったときほど「安く買える」と思うことができる心理的効果もあります。

使い勝手が格段によくなる新NISAをきっかけにして、2024年は投資家デビューをしてみましょう。

金融庁NISA特設ページ https://www.fsa.go.jp/index.html(シミュレーション機能あり)

日本証券業協会NISA特集 https://www.jsda.or.jp/nisa/(コールセンターあり)

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください