「もう50代だから」と敬遠している場合ではない…iDeCoで資産形成のラストスパートをすべき理由
Finasee / 2023年12月7日 11時0分
Finasee(フィナシー)
2024年から始まる新NISAが注目されていますが、老後のための資産形成であれば、iDeCoも忘れてはいけません。iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、老後資金のための専用積立口座です。もちろん税制優遇があります。
税制優遇に関していえば、iDeCoの税制優遇はむしろNISAより優れています。例えばiDeCoは老後のための積立を行う特別な口座ですが、その際毎月の積立金は収入から控除されるので、その分所得税と住民税がお得になります。iDeCoでも投資信託などで資産運用を行いますが、その際iDeCoで生まれた利益には、税金が掛けられません。ここはNISAと同様の税のメリットとなります。
一方NISAと異なり、iDeCoは資金の引き出しが60歳まで制限されます。万が一積立の継続が困難な場合は積立額を減額する、あるいはしばらく積立をお休みするという選択肢がありますが、途中での引き出しは一部の例外を除き認められません。その代わり、60歳以降75歳までの任意のタイミングで引き出しができますし、その際も税の優遇があります。
ちなみにNISAはイギリスの制度を模したものなのですが、iDeCoはアメリカの制度401(k)を輸入してきたものです。それぞれ海外の成功事例を日本に持ってきたわけですから国の意欲が感じられます。
確かにiDeCoは加入年齢に制限があるので、50代の方は敬遠する傾向がないとも言えません。しかしiDeCoの特徴はその税の優遇にあるので、50代とはいえ「もう老後は目の前だし、時間がないのでは?」と躊躇する必要はなく「収入があるうちは、できるだけiDeCoで積み立てて、税のメリットを最大限受け取る」が正解なのです。
計算でiDeCoのもたらす税メリットの“スケール感”を把握しようでは具体的に税のメリットがどのくらいあるのかを確認していきましょう。
例えば定年前で年収800万円のケースを考えていきます。年収800万円の場合、個人によって控除等条件が異なるので一概には言えませんが、今回は所得440万円と仮定しましょう。すると段階的に上がっていく所得税の乗率において、最も高い部分の税率が20%となります。
この方がiDeCoで会社員の掛金上限額である2万3000円を積み立てるとしましょう。すると年間27万6000円の掛金になりますから、年末調整にて5万5200円所得税が還付されます。一般的に会社員の場合、iDeCoの税メリットは、生命保険料控除等と同様に年末調整で国から送付される証明書を添付すれば手続きが終了します。
またその所得税の申告を経て住民税も計算されます。このときも年間27万6000円が全額所得控除されるので、住民税は10%の課税ですから2万7600円翌年の住民税が安くなるという意味です。合計8万2800円の節税は魅力的です。
よく比較されますが、生命保険会社の個人年金保険で同じ金額だけ保険料を支払っても、所得税の控除額は4万円が上限ですし、住民税は2万8000円が上限です。従ってこちらの税メリットは所得税が8000円、住民税が2800円で、合計1万0800円のみとなります。これが加入中ずっと継続する訳ですから、けっこう大きな差となります。
この方が60歳の定年後継続雇用を続けるうちはiDeCoに継続加入したとしましょう。年収は400万円、所得税の最も高い部分の税率が10%としましょう。会社員の場合、厚生年金に加入していれば65歳までiDeCo加入が可能ですから、2万3000円の拠出をさらに5年間継続します。
年の掛金合計は27万6000円ですから所得税の還付は2万7600円、住民税も同様2万7600円節税ができることになります。仮に50歳から60歳までが年収800万円、60歳から65歳まで年収400万円でiDeCoに月々2万3000円の積立をすると15年間で税のメリットが100万円以上となります。
当然年収により所得税の税率が異なりますから、継続雇用で収入が下がれば税のメリットも小さくなりますが、収入があるうちなら、この「掛金全額所得控除」というiDeCoならではのメリットを使わない手はないでしょう。
積み立てたお金は15年間で414万円、それに対して掛金の節税効果が100万円以上です。もちろんここから利益が生まれても税金は一切引かれませんし、65歳になって引き出す際も「退職所得控除」という特別ルールにより、このケースであれば、600万円まで課税されません。あるいは75歳までは非課税運用を継続してから引き出すという選択もできます。
iDeCoは「公的年金」加入とセットであることをお忘れなく!会社員であれば65歳までiDeCoの活用が可能ですが、60歳定年後アルバイトをするとか、契約で働くなど“厚生年金に加入しない”状態で収入を得る場合は、少し注意が必要です。
なぜならば厚生年金加入であれば最長70歳まで年金制度に加入することになりますが、それ以外の働き方の場合は原則年金への加入義務がなくなります。例外的に、過去の国民年金保険料の未納期間を補うために国民年金の任意加入者となる場合は、その同期間のみiDeCo加入が認められます。
少し複雑な感じがするかもしれませんが、これはiDeCoが公的年金を補完するという役割を担っているからです。例えば、国民年金を満額に近づけるために任意加入すると、iDeCoの掛金は月2万3000円が上限ではなく6万8000円となります。税の優遇で「公的年金を補完する個人の努力」を応援すると考えると納得感があると思います。
納得感といえば、あまり知られていませんが加入中(掛金を積み立て中)に万が一自己破産をしてもiDeCoの資産は差し押さえ対象財産となりません。
やはり国の制度はセーフティーネット。資産形成においても最初に活用したい土台のようなものです。
もう50代だからと言わず、ここからがラストスパートだと思って最大限活用しましょう。
山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー
FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。
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