“4人に1人”がNISAを利用! シニアのおひとりさま女性に学ぶ「老後資金」の作り方
Finasee / 2023年11月27日 17時0分
Finasee(フィナシー)
間もなく、新NISAがスタートします。現行制度における一般NISAは2014年1月から、つみたてNISAは2018年1月からスタートしましたが、いずれも2023年12月末でその使命を終え、新NISAでは成長投資枠、つみたて投資枠という2つの枠が設けられます。
シニア層におけるNISAの利用状況現行NISAでは、日本国内に住む20歳以上の人なら誰でも利用できます。0歳から19歳までの未成年者(当時)を対象とするジュニアNISAという制度もありましたが、これは新NISAへの移行に伴って廃止されるため、ここではあくまでも一般NISAとつみたてNISAの話に限定します。
その一般NISAとつみたてNISAですが、65歳以上のシニア層のうち、最も利用者が多いのは未婚女性だという調査結果があります。ニッセイ基礎研究所が行った調査「4人に1人がNISAを利用するシニア未婚女性~投資への意識・行動が最も積極的な消費主体に注目」によると、65歳以上の未婚女性の約26%が、何らかの形でNISAを活用しているのです。
公益財団法人生命保険文化センターが2020年に行った調査である「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」のデータを基にして、ニッセイ基礎研究所が分析したところ、「老後の生活資金の備えとして行っていること」という設問に対し、未婚女性の25.8%が「NISAを利用している」と回答したそうです。
この数字は、かなり高いものと考えられます。というのも、同じ設問に対して「NISAを利用している」と回答したのは、男性全体の平均で10.3%、女性全体の平均で9.0%だったからです。
ちなみに、男性未婚者の場合だと、NISAを利用している比率は8.8%に過ぎません。同じ未婚者で男性が8.8%、女性が25.8%なのですから、この差は非常に大きいと言えます。
果たして、こうした違いはどういうところから生まれてくるものなのでしょうか。
シニア未婚女性が「老後の備え」として行っていることとは?同レポートでは、4人に1人がNISAを利用している、65歳以上のシニア未婚女性の像を、具体的な数字を用いて浮き彫りにしています。
まず、「老後の生活資金の備えとして行っていること」について、NISA以外の利用商品を見ると、「NISA、iDeCo以外の株式・債券等の有価証券」という回答比が3.2%、「不動産の売買や賃貸」に至っては0%でした。逆に、「預貯金」は83.9%、「生命保険(個人年金・終身保険)」は51.6%にも達しています。
「4人に1人がNISAを利用している」などと言うと、シニア未婚女性は、「株式や株式投資信託の運用益を非課税にするNISAを積極的に活用している、投資に対してアクティブな人たち」というイメージを受けますが、預貯金や生命保険の利用比率が高い点を考えると、実はそれほど投資に対してアクティブではないのかもしれない、という印象を受けます。
逆にシニア未婚男性の場合、確かにNISAの利用比率は8.8%と、シニア未婚女性に比べて低いものの、「NISA、iDeCo以外の株式・債券等の有価証券」については11.8%、「不動産の売買や賃貸」は14.7%もあります。この数字から受ける印象は、シニア未婚男性の方が、より積極的にリスクを取っているということです。
一方、シニア未婚女性の場合、預貯金や生命保険の比率がシニア未婚男性に比べてはるかに高いことから、どちらかというと安全志向が強く、NISAを通じて購入している商品も、株式などよりは、投資信託が中心ではないかと推察されます。ちなみに、シニア未婚男性で「預貯金」と答えた人の回答比は47.1%、「生命保険」が23.5%であり、いずれもシニア未婚女性のそれを大きく下回っています。
なお、自分自身の老後をより自分事として真剣に考えているのは、圧倒的にシニア未婚女性です。何しろ「準備をしていない」と答えた回答比は、女性が9.7%と低いのに対し、男性は35.3%もいました。この点において、シニア未婚男性はもう少し、自分の老後の備えについて真剣に考えた方が良さそうです。
なぜ、シニア未婚女性は老後の準備に積極的?では、シニア未婚女性がなぜ老後の準備を真剣に考えているのでしょうか。
同レポートでは、「シニアの未婚女性の投資への積極性について考える上で、関連があると考えられる三つの特徴について紹介したい。一つ目は、老後の生活資金に対する不安の大きさである」と指摘しています。
前出のデータを見る限り、シニア未婚女性の場合、老後の生活資金の備えとして預貯金、生命保険の比率が高く、一方で有価証券や不動産が極めて低いことからすると、必ずしも投資に積極的だとは言えないような気もします。しかし、基本的にシニア未婚男性に比べれば、はるかに老後の生活資金の準備について積極的であることは事実です。それは、「準備をしていない」と答えた回答比が、女性は9.7%と低いのに対し、男性は35.3%もいることからも明らかです。
したがって、同レポートにある「シニアの未婚女性の投資への積極性」は、「シニアの未婚女性の老後の生活資金準備への積極性」に読み替えた方が、恐らく妥当でしょう。
そして、そこまで老後の生活資金準備に対して積極的な理由として挙げているのが、「老後の生活資金に対する不安の大きさ」です。
「とても不安」、「どちらかといえば不安」を合わせた不安層の比率は、シニア未婚男性の55.9%に対して、シニア未婚女性のそれは64.6%です。また同じシニア女性を属性別で見た不安層の比率は、「配偶者あり」が59.0%、「離別・死別」が56.1%で、いずれもシニア未婚女性に比べて不安層の比率が低く出ています。
そして、この不安感の強さが後押しするのかどうかは定かでありませんが、シニア未婚女性は総じて資産状況が良い、という数字があります。
同レポートにある「性・配偶関係別にみた高齢者世帯の資産状況」の数字を見ると、シニア未婚女性で保有資産が100万円未満は9.7%であるのに対して、シニア未婚男性は29.4%でした。
1000万円以上2000万円未満については、シニア未婚男性が20.6%で、シニア未婚女性の6.5%を大きく上回っています。ところが、2000万円以上を保有している比率を見ると、シニア未婚男性の11.7%に対し、シニア未婚女性は25.8%と大きく上回り、さらにそのうち5000万円以上の比率を見ると、シニア未婚男性の8.8%に対して、シニア未婚女性は16.1%にもなります。
加えて言うなら、5000万円以上のうち1億円以上の比率は、シニア未婚女性が3.2%であるのに対し、男性は0%でした。
シニア未婚女性に学ぶ最善の資産形成法とは?冒頭の話に戻りますが、「老後の生活資金の備えとして行っていること」で、シニア未婚女性は預貯金、生命保険が圧倒的に高く、NISAもシニア未婚男性に比べれば高いけれども、株式や債券等の有価証券、不動産の売買や賃貸は低めの数字になりました。
この点から考えると、資産状況でシニア未婚男性よりも豊かに見えるシニア未婚女性は、「たまたま保有していた株式が何十倍にもなったから」とか、「相続した不動産が高額で売却できたから」といったのとは違う理由で、これだけの財を確保したとも考えられます。
同レポートでは、そこまで詳しい分析内容は記載されていませんでしたが、仮にシニア未婚女性が「老後の生活資金の備えとして行っていること」で高い比率を占めた預貯金や生命保険、あるいはここ数年間ではNISAを中心にして、ある程度の資産形成を実現できているのだとしたら、一獲千金など考えず、長期的な計画性を持ってコツコツ積み上げていくことこそが、一番の資産形成法と言えるのかもしれません。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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