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スマホ市場の縮小続く… 村田製作所が財務良好でも苦戦する理由

Finasee / 2023年12月5日 17時0分

スマホ市場の縮小続く… 村田製作所が財務良好でも苦戦する理由

Finasee(フィナシー)

村田製作所の株価が冴えません。2021年1月の高値から下落傾向が続いており、翌年4月に発表した800億円(発行済株式の2.5%)の自社株買いも反応は限定的でした。足元で続く減収減益に投資家は買いにくさを感じているのかもしれません。

【村田製作所の業績】

  売上高 純利益  2022年3月期 1兆8125億円 3141億円  2023年3月期 1兆6868億円 2537億円  2024年3月期(予想)   1兆6200億円  2250億円

※2022年3月期および2023年3月期は米国基準、2024年3月期(予想)は国際会計基準
※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想

出所:村田製作所 決算短信

【村田製作所の株価(月足、2020年10月~2023年10月)】

出所:Investing.comより著者作成

村田製作所は「JPXプライム150指数」の構成メンバーでもあります。「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」をコンセプトにJPX総研が算出する指数で、村田製作所は市場評価性(PBR基準)の高さが認められ採用されました。

村田製作所が苦戦する理由はなんでしょうか。直近の業績から読み解いてみましょう。

京都系エレクトロニクスの顔 電子部品で高シェア

村田製作所は京都を代表する電子部品メーカーです。1944年の創業から手掛けるセラミックコンデンサをはじめ、さまざまな製品で高いシェアを獲得しています。スマートフォンや家電など、身の回りにある電子機器のほとんどに村田製作所の製品が用いられています。

【村田製作所の主な世界トップシェア製品(2022年3月現在)】
・チップ積層セラミックコンデンサ:40%
・EMI除去フィルタ:40%
・表面波フィルタ:50%
・多層LCフィルタ:40%
・マイクロバッテリ(酸化銀電池):40%
・ショックセンサ:95%
・セラミック発振子:95%
・高周波インダクタ:60%
※値は世界シェア率

出所:村田製作所 ムラタを取り巻く業界

任天堂や京セラなど、京都には有名な大企業が少なくありません。その中でも村田製作所はトップクラスの規模を持ち、時価総額はエレクトロニクス上場企業で最大級です。

 

【本社を京都に持つ主な企業の時価総額】
任天堂:8兆9012億円
・村田製作所:5兆9293億円
・ニデック(旧・日本電産):3兆4644億円
・京セラ:3兆0961億円
・オムロン:1兆3022億円
※2023年11月24日終値

出所:Yahoo!ファイナンス

また村田製作所は好財務でも知られます。利益剰余金の蓄積を主因に株主資本が増加している一方、負債は抑制的です。株主資本比率(自己資本比率)は2023年3月期に83.6%にも達しました。

【負債と株主資本の推移(2013年3月期~2023年3月期)】

出所:村田製作所 ファクトブックより著者作成足元で続く減益傾向 原因は? 

村田製作所は近年苦戦が続いています。営業利益と純利益は2022年3月に最高益を更新したものの、翌期は大きめの減益となりました。2024年3月期も利益の減少を予想しています。

【営業利益と純利益の推移(2019年3月期~2024年3月期)】

出所:村田製作所 決算短信より著者作成

減益要因の一つが収入の減少です。売り上げの大部分を占めていた通信(スマートフォン、通信基地局向け)やコンピュータ向けで販売が減少しており、モビリティ(自動車向け)の好調を打ち消しています。2024年3月期もその傾向が続いており、第2四半期までに増収となったのはモビリティだけでした。

【用途別の売上高】

  2022年3月期 2023年3月期  通信 7792億円 6592億円  モビリティ 3363億円 3902億円  コンピュータ 2975億円 2247億円  家電 1832億円 1978億円  産業・その他     2163億円    2148億円

出所:村田製作所 決算短信

世界のスマートフォン市場は縮小が続いています。香港の調査会社のカウンターポイント・リサーチは2023年8月、世界のスマートフォン出荷台数は2023年に11億4700万台と過去10年間で最低となる見込みだと発表しました。主な理由として中国や新興国全体の景気低迷と、北米における買い替えの低水準を挙げています(出所:カウンターポイント・リサーチ プレスリリース(2023年8月))。

世界で高いシェアを持つ村田製作所はマクロ要因で業績が左右されます。減益から脱却するにはスマートフォンの世界販売の回復を待つ必要がありそうです。

増益に為替の壁 1円の円高で50億円の減益

売り上げのほとんどを海外が占める村田製作所は為替でも大きな影響を受けます。2024年3月期は通期で1米ドル=143円を想定しており、1円の円高で50億円の営業減益となる見込みです(出所:村田製作所 2023年度第2四半期決算説明会資料)。

近年は米金利の上昇などを背景にドル円は大きく円安方向に動きました。村田製作所にとっては利益を出しやすい環境で、今後も円安が続けば業績にはプラスに働くと考えられます。

【ドル円と米10年国債利回り(月足終値、2022年1月~2023年10月)】

出所:Investing.comより著者作成

しかしアメリカではインフレ率の低下が目立っており、円安を主導した米金利のさらなる上昇には期待しづらくなってきました。利上げの停止といった具体的なメッセージが伝われば、むしろドル安・円高に進む展開も考えられます。村田製作所へ投資するなら為替相場もチェックしておいた方がよさそうです。

【米インフレ率(前年同月比)】

出所:米国労働省 消費者物価指数より著者作成

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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