いよいよ新NISAスタート! とりあえず始める? 金融教育を学んで理解してから?
Finasee / 2023年12月12日 11時0分
Finasee(フィナシー)
来年2024年の1月からNISA制度が大きく変わります。投資に興味はあったけどきっかけがなかった人、ニュースや雑誌で取り上げられるのを見て興味が湧いてきた人など、これまで投資をしてこなかった人たちが、新しいNISAをきっかけに、投資を始めることが予想されています。また、国は2024年中に官民一体で金融教育を推進していくために「金融経済教育推進機構」を設立、8月に本格稼働していく予定としています。
そんな流れの中、NISAや投資を始めるには「全然わからないけど、とりあえず始めてみる?」それとも「きちんと金融や投資の知識を学んでからでないとダメ?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。NISAや投資の基本については、たくさんの記事がありますので他の方にお譲りして、この疑問について、10年以上にわたりメガバンクで資産形成のお手伝いを担当し、今は金融教育に携わり教材づくりや全国の学校・社会人向けセミナーなどで講師を行っている私の視点から考えてみたいと思います。
NISAは魔法の制度か。必ず増えるのか『この100万円を今から全額NISAで運用したら、1年後の長女の大学受験の時に少なくとも150万円まで増やせますかね? できれば200万円』。
メガバンクで資産運用を担当していたある夏、店頭に来店した40代のご夫婦にこう聞かれた私は衝撃を受けました。窓口担当の後輩が『NISAをやりたいと言っている人がいます! なんの商品が良いか相談したいそうです』と言いに来たので、これは新規顧客がゲットできるな、などとうっかり邪な考えを持ちながらカウンターに向かい話を聞いてみた時のことです。
よくよく聞いてみると、子どもが3人いて、それぞれに学費として貯金をしているそうです。高2の長女用の口座には100万円貯まったものの、そこから塾代も出すことになるし、来年の受験費用や大学入学資金も考えると足りそうにない、ということ。だから投資して増やしたい、NISAという制度があるらしい、全額つぎ込もうか、何も知らないけど良いらしいから、とにかくやってみよう、と。
結論として、私はこの話をお断りしました。『NISAだからといって、投資である以上、絶対に増えるというわけではありません。むしろ1年くらいの期間しかないことを考えると元本割れする可能性が高いです。今必要なことは、収支を見直すこと、引き続き頑張って今より少しでも多めに貯めて学費を用意すること、ここまで貯めた資金を少しでも確実に増やすことを考えるなら、当行ではなくネット銀行の高い金利の定期預金で回した方が良いです』と。ちなみに、下のお子さん2人はまだ年齢が低く大学受験まで10年以上の時間があったので、学費用の預金積立額の一部を積立投資に回し、今後の資金を用意していくことにしました。
お金の増え方のイメージを感覚的にでも持っているかこの記事を目にしていただいている方は、1年間の運用で100万円を200万円にすることは可能だと思うでしょうか? 私はなかなか難しいのではないか、と思っています。投資初心者にはなおのことです。過去の実績としては確かに存在しますし、投資の世界に「絶対」はないので、もしかすると現在達成している方もいるかもしれませんが、そう多くはないはずです(インターネットでは“1年で資金を確実に倍に増やすノウハウ公開!”という記事をよく見かけますが)。
加えて、1年という期間の中では何が起こるかわかりません。長期間であれば、大きく下げたマーケットも戻してプラスになる可能性がありますが、短期間では何かのニュースの影響で大きく下げて戻らないまま、結果は元本割れという可能性も大いにあります。話はそれますが、メガバンクで担当していたお客さまの中には2007年のサブプライムローン問題直前の価格の高いところで購入、その後10年近くマイナスのまま保有している方がいらっしゃいました。お客さまにとって私は何人目かの担当者でしたが、プラスに転じた時にはお互いほっとしたものです。そんなふうに、長期で持っていると、“もう戻らない”と思っていたものもプラスに転じる可能性も十分にあるのです。
さて話は戻りますが、この時に思ったことが2つあります。1つ目は、お金の増え方・動き方のイメージを持てているか、ということです。現在の預金金利では増やせないことは多くの人が知っています。けれど、年利3%、5%、10%の時はどうでしょうか。私自身もそうですが、物心ついた時、社会人になった時、既に預金金利が1%を割り込む時代に生きてきた世代には想像しづらいものがあります。正確な数字は必要ありませんが、どのような曲線を描くかをイメージできるか、投資であっても年利100%はかなり難しいという感覚を持っているか(年利回り100%はゼロではありません。コロナ禍ではそういうファンドもありました)、もっと簡単に言えばローリスク・ハイリターンの商品はないといった基本的なことを知っているか、は大切です。
2つ目は、もう少し早い段階から資産形成にもいろいろな方法があることを知っていたら、ということです。NISAは2014年からの制度ではありますが、子どもが生まれてから17~18年、少額ずつでも積立投資(場合によっては学資保険でも良いかもしれません)を行っていたら、今よりも増えていたかもしれません。その知識の差により、生活面では貧困層と富裕層の差は広がり、学習面では教育資金不足等により子どもたちの将来の可能性も狭められてしまう可能性があります。お金がある、ということは現実問題、選択肢が広がる、すなわち将来の選択肢も広げられるということにつながるのではないでしょうか。
金融教育はこうした問題を解決する一つのきっかけになるのではないかと信じています。ちなみに、金融教育は投資教育ではないので、日々のお金のやりくりなどもその中に含んでいます。そのために、多くの人が正しい金融教育を受ける機会があることが大切だと思っています。この出来事をきっかけに、学生から社会人まで多くの人に、自分がこれまで培ってきた経験や知識をお伝えしたいと思い、金融教育の道に進むことになりました。
勉強しつつ、まずは投資へ一歩ふみだそう!投資を始めてみなければ身につかないこともあります。投資をすることで、実際にマーケットがどう動くのか、ニュースや誰かの発言がどう影響するのか、といったことを実感できる側面もあります。ただ、投資を始める前には、預金との違い、増え方や動き方のイメージ、投資したら増える可能性も元本割れの可能性もあることを知っているかどうか、細かいことは知らなくても「長期・積立・分散」という手法を聞いたことがあるかないかでは、全く何も知らない状態で始めるのとはだいぶ違うのではないかと思うのです。
皆がみんな、プロのようにさまざまな分析ができる必要があるとは思いません。現に私も証券アナリストやエコノミストのように正確に分析できるわけではありません。ですから、金融について、経済について、投資について、勉強して完全に理解しないと投資を始めてはいけない、ということもないですし、かといって、「本当に何にも分からないけど、とりあえず始めちゃえ」というのも違うと思うのです。
最近は金融リテラシーや投資などのセミナーが多く開催されているので、一度参加してみたら良いと思います(怪しそうなところはやめましょう)。それが難しい方は、金融庁や金融機関が出しているパンフレットを一読してみる、HPに目を通してみる、それだけでも全然違うと思うのです。
「投資はとりあえず始める? 金融教育を学んで完全に理解してから?」という疑問に対しては、月並みではありますが「勉強はしつつも、とりあえず少額から、長い目で投資を始める」というのが私なりの回答です。NISAや投資は、構えすぎず、まず1歩ふみだして始めてみるのが良いこと、同時にそういう感覚を持つことの大切さ、金融や投資の基本をお伝えして、迷っている方の背中を押すお手伝いをしていきたいと思っています。
中川 裕美子/金融教育アドバイザー
新卒でメガバンクに入行、10年以上にわたり資産運用を担当。資産づくりをしたい大学生から、資産を上手に相続していきたい富裕層まで幅広く担当。お客さまと接する中で、多くの人がお金の知識を持つことで、経済格差や教育格差を少しでも減らせるのではないかと思いはじめ、金融教育活動に転じる。全国の学校や社会人向けセミナーなどで金融リテラシーやNISAなどの講座を数多く担当。金融教育に携わる先生のための研修も担当する他、教材作成や監修にも携わる。小学生2児の母。子どもたちが大人になる頃には、みんなが当たり前にお金について話ができる世の中になっていれば良いなと活動中。
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