TSMC生産拠点建設は好機…日本経済復活のチャンスを逃さないために重要な“ただ1つのこと”
Finasee / 2023年12月15日 17時0分
Finasee(フィナシー)
新NISA開始を目前に、日本株に注目が集まっています。日本経済は「失われた30年」と言われ厳冬の時代が続いてきましたが、その日本株がようやく上昇トレンドに乗りつつあるのです。
話題の書籍『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネージャーが明かす逆転の思考法』では、JPモルガン・アセット・マネジメントの人気日本株ファンド「JPMザ・ジャパン」の運用を長年担当した中山大輔氏が日本株のポテンシャルと自身の投資手法を解説。今回は本書の第1章「今、日本株が注目される理由」の一部を特別に公開します。(全2回)
●前編:かつては官僚や大企業を目指した「最優秀な人材」の就職先に変化…この動きが日本経済復活の兆候といえる理由
※本稿は、中山大輔著『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネージャーが明かす逆転の思考法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
人にもモノにも「投資」し始めたWeb3.0世代が日本を変える可能性を秘めた世代であるのに対し、Web1.0世代、あるいはWeb2.0世代も、過去の成功体験というしがらみに囚われることなく、少なくとも現状を変えなければならないという意識が、芽生えつつあります。
では、なぜWeb1.0世代とWeb2.0世代は、「日本の現状を変えなければならない」という意識を持つようになったのでしょうか。
それは、このままの状態を続けていても、日本に後がないことに気付いたからだと思います。
少なくともこの30年、日本企業は過去の成功体験に囚われ続けてきました。世界はどんどん変化しているにもかかわらず、昭和の時代の成功体験に囚われ、組織を変えるために必要な改革や投資に後ろ向きになり、内部留保を貯め込んで非効率性を積み上げることになってしまったのです。
その結果、確かにバランスシートの安全性は高まりました。内部留保の蓄積=自己資本比率の向上によって、資金繰りは非常に良くなったものの、人にもモノにも投資してこなかったため、企業の力はどんどん削がれていきました。それでも何とかここまで持ちこたえることができたのは、国内人口が1億人以上いて、バブル経済時に蓄えた競争力が辛うじて残り火のよう燻(くすぶ)っていたからです。
しかし、これから先、何もしなければ、この残り火も消えてしまうでしょう。すでに日本は人口減少・超高齢社会に入っており、とりわけ働いて稼ぐ世代の人口が著しく減少しています。これから加速度的にそうなっていきます。
国内設備投資は、過去最高水準に人口が減少すると、せっかくの収益チャンスを取り逃がすことにもなりかねません。最近では、日本の観光業がまさにその状況にあります。新型コロナウイルスが5類にダウングレードされ、世の中全体が正常化へと進み、海外からの観光客が大挙して日本に押し寄せているにもかかわらず、宿泊施設で働く人たちが大幅に不足してしまっているのです。
パンデミックによる行動制限期間中、宿泊施設は大幅な人員削減によって危機的な状況を乗り越えようとしました。
その間、宿泊施設を辞めた人たちは他の仕事に移ったわけですが、インバウンドが回復したからといって、再び宿泊業に戻る人は少なく、その結果、7、8割のホテル・旅館が人手不足に陥っているというデータもあります。
ここまで働く人が減ってしまうと、いくらインバウンドによって外国人観光客が増えたからといって、すべてを受け入れることができません。働く人が半分になれば、単純計算でも、半分の宿泊客しか受けられなくなります。それでは、せっかくの収益機会を、みすみす取り逃がすことになってしまいます。
グローバルの視点から見ても、日本のポジションが改めて注目され始めています。グローバルサプライチェーンの見直しによって、これまで中国をはじめとする諸外国にあった生産拠点を、日本に移転させようという動きもあります。それだけ日本の労働力が、国際水準で見て安くなったともいえるのですが、たとえば韓国サムスン電子の横浜半導体開発拠点建設や、台湾の半導体受託製造大手である、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場建設などは、まさにその一例といってもよいでしょう。
ちなみにTSMCは日本に2カ所目の生産拠点を設ける方向性を打ち出しています。
TSMCは台湾企業なので、中国との地政学リスクの高まりから、生産拠点をグローバルに分散させるという狙いもありますが、いずれにしても日本が生産拠点として再び脚光を集めつつあるのは事実です。
しかし、こうした動きも日本に十分な労働力がなかったら、絵に描いた餅になってしまいます。こうしたなかで、日本が何もせずに手をこまねいていたら、人手不足はますます深刻化し、経済にマイナスの影響が生じてくるでしょう。
だからこそ、人口減少社会のなかでも一定の生産量を確保できるように、DX、AIの導入をはじめとして、設備や人、モノに多額の投資をし、日本企業の生産性を大きく向上させなければならないのです。
とはいえ今、国内の設備投資が90年以来のピーク水準まで拡大していることは心強いことです。一歩、二歩、進み始めているといえましょう。
こういう瀬戸際の中で、Web1.0世代、あるいはWeb2.0世代も、ようやく変わらなければならないという意識を強く持ち始めたのではないかと思うのです。
この流れが強まれば、「少子高齢化、人口減少」といった課題解決の先駆者として、世界をリードし、評価を高めていくことができるでしょう。
『日本株で30年 好成績を上げたファンドマネージャーが明かす逆転の思考法』中山大輔 著
発行所 PHP研究所
定価 1,650円(税込)
中山 大輔/元JPモルガン・アセット・マネジメント ファンドマネジャー
1969年生まれ。大阪大学経済学部卒業。93年日本生命保険に入社し、株式部、年金運用部、ニッセイアセットマネジメントで経験を重ねる。2005年JPモルガン・フレミング・アセット・マネジメント・ジャパン(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。同社の代表的な日本株アクティブファンド「JPMザ・ジャパン」の運用担当者を、06~23年3月末まで務めた。23年8月からPolymer Capital Japanで日本株アクティブファンドの運用に携わる。
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