都内の新築マンション価格が大幅上昇!「買いたくても買えない」持ち家派が選んでいるのは…
Finasee / 2023年12月11日 17時0分
Finasee(フィナシー)
首都圏の新築マンション価格が値上がりする理由
都心の新築マンション価格が値上がりを続けています。少し古いレポートになりますが、三菱UFJ信託銀行の「不動産マーケットリサーチレポート」によると、首都圏の新築分譲マンション販売のボリュームゾーンが、過去10年間で3000万円~5000万円から、5000万円~1億円台に上昇したとされています。
少し細かく見ると、首都圏(1都3県:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における新築分譲マンションの平均販売価格は、2022年が6288万円(東京23区は8236万円)となり、2012年に比べて38.5%(東京23区は55.9%)も上昇しました。
新築分譲マンションの価格が上昇している理由について、同レポートでは2つの要因を指摘しています。マンションを建築する際にかかる建築原価が上昇していることと、用地価格が上昇していることです。
どのくらい建築用資材が値上がりしているのかというと、これはもう大変な状況です。最近でこそ若干落ち着いてきた感はありますが、原油価格や木材価格、鉄鉱石価格など資源・エネルギー価格が大幅に上昇したことに加え、円安が大きく進んだこと、電気料金が値上がりしたことも、建築原価を引き上げました。
日本は木材や鉄など多くの建築用資材を海外からの輸入に頼っていますから、円安は、その仕入価格に対してダイレクトに影響します。かつ電気料金が値上がりすれば、建設現場で使用する電気代だけでなく、建築用資材を加工するのに使う電気代などに影響を及ぼし、全体的に建築コストを引き上げることになります。
建設資材と用地の価格はどれくらい値上がりしている?一般財団法人建築物価調査会によると、2023年11月分の建築資材物価指数(東京)は、建設総合で134.8になりました。この数字は、2015年を100.0として指数化されています。そして、コロナ禍の最中だった2020年の平均が104.0なので、この3年弱の間に、29.62%も上昇したことになります。
その結果、新しくマンションを建設するにあたって必要な資材を調達するのに、マンションデベロッパーは大幅なコスト負担に悩まされているのです。
新築マンション価格を押し上げている、もうひとつの要因は用地価格の上昇です。
これについては、同レポートで「デベロッパーによる用地仕入の進捗状況(首都圏)」のデータを基に分析されていますが、要するにマンションを建設するには、ある程度大きな用地が必要であり、その用地を確保するのに、かなり大変な状況にあることが、このデータからうかがえます。
具体的には、用地仕入れの進捗状況について、「ほぼ計画通り」、「苦戦している」、「見合わせている」、「その他」の4つに分けて過去の推移を示していますが、2023年上期は86%が「苦戦している」と回答しました。とはいえ、過去においても「苦戦している」の回答比は常に高位にあるので、マンションデベロッパーは恒常的に、マンション用地の仕入れに苦労してきたことになります。
ちなみに用地の仕入れに苦戦している理由は、圧倒的に「用地価格が検討可能水準以上に高騰しているため」が多く、それだけ東京23区を中心とする首都圏における地価が、大きく値上がりしていることをうかがえます。
値上がりしたマンションの購入者では、誰がここまで値上がりした分譲マンションを、新築で購入しているのでしょうか。
同じく三菱UFJ信託銀行が、12月1日に公表した「不動産マーケットリサーチレポート」では、都心の同時期に分譲された新築マンション3棟の購入者像をサンプル調査しています。
・マンションA=城東エリア。平均分譲価格約8000万円
・マンションB=城南エリア。平均分譲価格約1億3000万円
・マンションC=城西エリア。平均分譲価格約2億7000万円
以上がサンプルです。ちなみに城南や城西の意味ですが、これは皇居(城)を中心にして、東京23区のうち、皇居がある千代田区を除いた22区を、4つのエリアに分けたものです。区で示すと、
・城南エリア=目黒区、品川区、大田区、港区の4区
・城北エリア=荒川区、文京区、豊島区、板橋区、足立区、北区の6区
・城東エリア=中央区、墨田区、台東区、葛飾区、江戸川区、江東区の6区
・城西エリア=新宿区、世田谷区、中野区、渋谷区、杉並区、練馬区の6区
となります。
平均分譲価格を見るとイメージが湧くと思いますが、マンションAは自己居住目的で購入されています。購入者の平均年齢は38歳で、世帯構成は夫婦+子。マンション購入にあたっては、住宅ローン利用ありが58%で、そのうち22%がペアローンという結果が出ました。
次にマンションBですが、これは自己居住目的が44%であるのに対し、自己居住目的以外が56%を占めています。しかも、自己居住目的以外のなかで、住宅ローン利用ありが20%に対し、住宅ローンの利用なしが37%を占めています。つまりキャッシュで高額のマンションを購入できる富裕層が、自己居住目的よりも、いわゆるセカンドハウスや賃貸ならびに投資目的で購入していることを読み取れます。
そしてマンションCですが、これは自己居住目的が58%で、自己居住目的以外が42%です。前者の住宅ローン利用なしが32%、後者のそれが37%というように、両者を併せると住宅ローンを組まずに購入している層の比率が69%にも達しています。そうである以上、もちろん富裕層が中心ですし、年齢も平均46歳と、マンションAに比べて上になります。
なお、家族構成ですが、前述したようにマンションAは「夫婦+子」が39%、「単独」が31%です。マンションBは「単独」が59%、「夫婦+子」は18%であり、マンションCが「単独」が58%、「夫婦+子」が17%というように、高額物件の所有者ほど単独世帯が多い点は、いささか興味深いところです。
「買いたくても買えない」場合どうする?恐らく、マンションAのように比較的若い人たちが、ペアローンを組んでまで購入する物件は、さらに価格が上昇すると、今度は「買いたくても買えない」状況になる恐れがあります。
それでもマンションが欲しいという人は、恐らく中古の分譲マンションに、購入ターゲットをシフトさせてくることも十分に考えられます。
実際、首都圏にある中古分譲マンションの価格は上昇傾向にあります。東京カンテイの調べによると、築5年以内の築浅物件の坪単価は、2017年第1四半期は289.2万円だったのが、2023年第3四半期には423.7万円まで値上がりしています。この6年強で46.51%の上昇ですから、新築分譲マンションの購入を諦めて、築浅の中古分譲マンションの購入にシフトした人が一定数いることを示しています。
参考
・三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポートVOL.232」(2023年11月21日)
・三菱UFJ信託銀行「不動産マーケットリサーチレポートVOL.233」(2023年12月1日)
・一般財団法人建設物価調査会「建設物価 建設資材物価指数」
・東京カンテイ「新築・中古マンションの市場動向レポート(2023年第3四半期)」(2023年11月1日)
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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