Q.新NISAが始まるけれど…現行NISAの運用分は「売却 or 継続運用」どっちが正解?
Finasee / 2023年12月14日 17時0分
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Finasee(フィナシー)
2023年もあと少し。本年を持って一般NISAとつみたてNISAで構成された現行NISAは終了し、2024年1月から新たに新NISAがスタートします。
詳細は各メディアを通じて報じられているので、ここで多くは説明しませんが、さまざまな点で使い勝手が大きく向上しました。簡単に言えば、生涯非課税枠が1800万円にまで大きく増額され、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能に。また、非課税期間の無期限化と制度の恒久化も実現しました。加えて生涯非課税枠のなかでは、何度でも売却(解約)と買付を繰り返すことができます。
今回は既にNISAを利用している人が、新NISAへ切り替えるにあたって注意すべきことを解説します。
現行のNISAで運用している分は「継続運用」でOK表題にもあるように、すでに現行のNISA(以下、現行NISA)を利用している方が、新NISAを継続して利用するに際してまず悩むのは、「現行NISAで運用している分をどうすればいいんだろう?」ということだと思います。
この点については、特に支障がないのなら、そのまま継続運用すれば良いでしょう。2023年に投資した分について、一般NISAは2027年まで、つみたてNISAは2042年まで、非課税運用できます。
したがって、現行NISAの口座に残っているお金はそのまま非課税期間が終わるまで運用し続け、これから投資する分を新NISAで継続していけば良いでしょう。
新NISAを別の金融機関で始めるなら、タイミングが重要次に、現行NISAとは違う金融機関に、新NISAの口座を開設したいと考えている方もいらっしゃると思います。これが結構面倒です。
まずA銀行からB証券に口座を変更する場合は、A銀行から「金融商品取引業者等変更届出書」を提出し、その後にA銀行から届く「勘定廃止通知書」をNISA口座開設の申込書に添えて、B証券に提出します。これでA銀行からB証券への口座移管は完了するのですが、問題はタイミングです。
2024年1月から、新NISAを別の金融機関で始めるには、2023年11月中の手続きが必要です。一応、12月中でも口座の移管手続きを取ることはできますが、変更後の金融機関では税務署の審査も必要なので、それに要する期間を考慮に入れると、2024年1月からスタートできるかどうか分からなくなります。
また、2024年に入ってから「やっぱり他の金融機関に変更しよう」などと心変わりして、変更手続きを行おうとしても、2024年に入ってから1度でも、変更前の金融機関にあるNISA口座で買付が行われてしまったら、2024年中の金融機関変更はできません。
この場合は、2025年にならないと他の金融機関の口座移管はできませんが、2024年10月1日から、遅くとも11月中に変更手続きを済ませれば、2025年1月から新しい金融機関で、NISAを始めることができます。
この口座移管で特に注意しなければならないのは、現時点で銀行に現行NISAの口座を持っていて、つみたてNISAを活用している場合です。
銀行の場合、NISAを通じて購入できるのは投資信託だけです。現物株式やJ-REIT、ETFは証券会社にNISA口座を開設しない限り、購入できません。したがって、銀行でつみたてNISAを利用している人が、新NISAで株式やJ-REIT、ETFまで投資対象を広げようとしたら、やはり口座の移管が必要になります。
しかし、上記の変更手続きをギリギリまでしないでおくと、2024年をもってつみたてNISAは、そのまま新NISAのつみたて投資枠に移行され、かつ初回の買付をされてしまう恐れがあります。そうなったら、2025年になるまでは金融機関の変更ができないので、注意が必要です。
成長投資枠の投資では、セールストークに気を付けて少し運用面に踏み込んでみましょう。生涯非課税枠が1800万円まで拡大したことによって、「何か新しいこと」にチャレンジしてみたいと考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、これまで月3万3333円(年40万円)までしか積立投資できなかったつみたてNISAは、つみたて投資枠で月10万円(年120万円)まで積立投資できるようになり、月10万円(年120万円)までが限度額だった一般NISAは、成長投資枠になったことで月20万円(年240万円)まで投資できるようになったので、枠が広がった分だけ、今までとは違うものにも投資してみたいという気持ちが湧き上がってくるのは、当然だと思います。
ですが、これが結構、落とし穴にもなるので注意してください。
恐らく金融機関のなかには、こうした気持ちにつけこんで、コストが割高な商品を勧めてくる恐れがあります。インターネット証券などであれば、利用者を勧誘する営業担当者はいないので、自分自身の判断で投資先を決められますが、すべてのNISA利用者がインターネット証券会社を選んでいるということはないでしょう。
特にある程度、年齢層の高い人には多いと思うのですが、対面の金融機関でNISA口座を持っている場合、営業担当者から直接、さまざまな商品の営業を受けるケースも考えられます。
そのような場合、利用者にとってコストが割高な、そして販売側からすれば高い手数料などでもうかるような投資信託を勧められるようなことも、十分にありうるでしょう。資産形成で大事なのは、投資先の判断を他人に委ねないことです。
どれだけ良い商品であるかのように思えたとしても、金融機関側はその金融商品を販売したいがためのセールストークを述べているだけに過ぎませんから、話半分に聞くことをお勧めします。
同じ金融機関でNISAを続けるにしても、別な金融機関に口座を移管させるにしても、それが金融機関と付き合う際の基本的なスタンスです。あなたが損をしたとしても、金融機関は何もしてくれないし、責任のかけらも感じていないはずですから、自分の身は自分で守るようにしてください。
優先して見直すべきは「投資金額」もし、現行NISAで資産形成を始めた時に熟考を重ねて選んだ投資対象、あるいは投資法であるならば、新NISAに変わったからといって、それらを見直す必要性はないと考えます。しばらくの間、「新NISAにピッタリの投資法はこれだ!」的な記事が目につくかと思いますが、いちいち気にしないようにしましょう。
これは、実は口座を開設する金融機関にも当てはまることで、現行NISAで選んだ金融機関が、自分の資産運用に対するスタンスに合っているのであれば、選択肢が多いという理由だけで、インターネット証券会社に口座を移管させる必要はありません。
近年、直販をメインにしている投資信託会社から口座が流出している、という話を聞きます。投資対象の投資信託が少ないからというのが、その理由のようですが、自分が自信を持って選んだのが直販投信会社のファンドなのであれば、口座を閉じる必要はどこにもありません。そのまま継続すれば良いでしょう。
新NISAのスタートに際して唯一、見直してもいいかもしれないのは投資金額です。現行NISAに比べてより大きな金額を投入できるようになったのですから、資金力があるならば、これを利用しない手はありません。ぜひ最短距離で1800万円を目指してください。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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