新NISA開始間近!「S&P500 vs オルカン」結局どちらを選べばいい?【徹底比較】
Finasee / 2023年12月19日 11時0分
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Finasee(フィナシー)
インデックスファンド、アクティブファンド、個別株……新NISAでは、考え方や目的に合わせた幅広い投資が可能です。一方、SNSなどで個人投資家の発信を見ていると、やはり「S&P500」か「全世界株式(オールカントリー)」のどちらかを選ぶという方が多数派。果たしてこの2つの選択に“正解”はあるのでしょうか。
S&P500と全世界株式、2つの違いは?最初に、S&P500と全世界株式の違いについておさらいしましょう。
まずS&P500とは、“米国を代表する企業500社”の株価から作られた指数。ざっくり理解するためには、「S&P500=米国全体の経済を表す数字」という認識でOKです。したがって、S&P500に連動する投資信託を買うと、米国の経済成長の波に乗ることができます。人気の商品に、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」などがあります。
そして、全世界株式型は「オール・カントリー・ワールド・インデックス」などの“世界の国・地域の企業の株価から作られた指数”に連動します。要するに全世界株式型の投資信託を買うと、世界全体の経済成長の波に乗ることができるのです。人気の商品に通称“オルカン”こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「たわらノーロード 全世界株式」などがあります。
どちらの商品も、大きな特徴は分散効果。例えば米国の企業1社だけに投資すると、その企業が倒産すれば元本をすべて失います。一方でS&P500のような指数に連動する投資信託を買えば、間接的に500社に投資することになります。つまり、1社が倒産して資産をすべて失うリスクを排除することができる。同じく全世界株式型の投資信託を買えば、米国はもちろん、他のさまざまな国の企業に投資することができ、より大きな分散効果が得られるのです。
S&P500と全世界株式型、どちらの投資信託も分散効果が高い一方で、その大きな違いは「米国全体で分散するか」「世界全体に分散するか」という点です。ここは大きなポイントになりますので、まずは概要をおさえておきましょう。
筆者が選ぶのはS&P500-理由は「成長性と安定性」米国全体に投資するS&P500。世界全体に投資する全世界株式型。新NISAの投資対象としてはこの2つの投資信託が主流ですが、投資のプロ(現役銀行員・証券アナリスト)である筆者が「新NISAでどちらを選ぶか」の個人的考えをお伝えします。
結論から言うと、私はS&P500を選びます。その最も大きな理由は、米国経済の成長性・安定性です。
例えば直近の10年間(2013~2022年)を振り返ると、新型コロナウイルス発生やロシア・ウクライナ問題など、さまざまな出来事が起こっています。当然、これらの局面では世界的に株価が下がっていますが、それでもなお、S&P500の平均リターンは10年間で14.8%となっています。
米国は、長期的に成長を続けている。加えて盤石な経済インフラが構築されているため、大きな危機で一時的に株価が下がることはあっても、そこから立ち直れる土台と体力があります。
「成長性」だけを見ると米国を超える国はいくつもありますが、そのほとんどが新興国です。新興国は人口増加や経済の発展性が魅力的ですが、まだまだインフラ面で不安が残ります。一言でいうと、「成長性はピカイチだけど、恐慌に対する経験・実力に欠ける」といったイメージです。
このように、世界経済トップであり安定性も高い米国。一方で、中国が急成長していて、2030年頃には米国を超える経済大国になるという予測もあったり、人口面ではすでにインドが世界一で、平均年齢も28歳と若く活力があったりします。いずれ米国は世界経済のトップでなくなる日が来ることも、十分ありえるのです。
それでも、私はS&P500を選びます。なぜなら「米国が世界経済のトップでなくなる日」が、遠い未来だと見込んでいるからです。世界で巨大な影響力を持つ“GAFAM(ガーファム:Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)”を見ても、すべて米国企業です。
GAFAMはほんの一例に過ぎませんが、「米国が世界経済の中心である」という風潮が変わるのは相当先であり、それまではS&P500の成長力に賭ける方が確実で安定性が高いと評価するためです。
「オールカントリー」も実は6割が米国という事実私がS&P500を選ぶ理由は、実はもう1つあります。それは、「全世界株式型の投資信託」と言っても、結局は米国が中身の大半を占めるケースが多いことです。
先ほど紹介した通り、全世界株式型の投資信託には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という人気商品があります。こちらの商品、実は中身の約60%が米国企業となっています。そのほか、日本が5.5%、イギリスが3.8%、中国が3.6%、フランスが3.2%と、投資先のうち米国のウェイトが相当大きくなっていることが分かります。加えて、全体で見ても先進国が89.1%、新興国が10.9%の割合(2023年3月末時点)。
つまり、実態としては「ほぼ先進国に投資しており、中身の6割が米国である投資信託」と言えます。ですから、全世界株式型の投資信託を買っておけば、全世界に分散されるから大丈夫! 米国一辺倒の投資になっていないから安心! と思っている方は、注意が必要です。
より世界に均等に分散したい、米国以外の国に投資したいと考えるのであれば、「ヨーロッパ型の株式投資信託」「新興国型の株式投資信託」なども組み合わせ、自分なりのバランスでポートフォリオを作ることが重要となります。
とはいえ、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が非常に魅力的な優良商品であることに変わりはありません。商品名から受けるイメージの割に米国へのウェイトが6割と高いというだけで、それでも残り4割は40ヵ国以上の株式に分散投資されているのです。
過信は禁物ながらも、「S&P500型の投資信託よりも分散が効いている」ことは確かであり、信託報酬(手数料)も非常に安い。商品性とリスクを正しく理解すれば、投資先としては非常に魅力的と言えます。
S&P500を選ぶべき人、全世界株式型を選ぶべき人最後に、「S&P500を選ぶべき人、全世界株式型を選ぶべき人」に関する私の考えをお伝えします。
まずは、S&P500を選ぶべき人。短くまとめると、「リスクを取ることができ、最大のリターンを得たい人」。そして全世界株式型を選ぶべき人は、「なるべくリスクを抑えつつ、大きなリターンを得たい人」です。
前提として、S&P500は、新NISAのつみたて投資枠での投資先としてはリターン・コスト面で最適だと考えています。一方で、S&P500のリスクが高いことは避けられません。どこまでいっても「米国のみ」に投資するため、米国経済が傾くとほぼ確実にダメージを受ける……この事実は理解する必要があります。
そして「最適」と考えるのは、この記事を執筆しているタイミング(2023年12月現在)に限っての話。今後もずっとS&P500が最適であるとは、私も思っていません。いずれ米国以外の国から、GAFAMを超えるようなグローバル企業が生まれるかもしれない。その実現は10年後か、20年後か、私が生きているうちには訪れないのか……答えは、今の私には分かりません。
今後世界経済の流れを体感し、「米国が経済トップではなくなりそうだな」という局面となったとき、はじめてS&P500から別の投資信託に切り替えていくつもりです。
米国にそこまで賭けるのは怖い。世界の潮流を読んで投資先を切り替えるなんて、面倒だし難しそう……。ここまでの話を聞き、そう感じた方。そのような方こそが、まさに「全世界株式型を選ぶべき人」なのです。
過去5年間のリターンを比較すると、S&P500の方が高くなっています。一方で、自分のビジネスや自己投資、趣味にしっかり時間を割きたいという方は、投資についてアレコレ考えすぎるのも得策ではありません。その点、全世界株式型であれば「米国寄りではあるものの、ひたすら積み立てて何十年もホールドしておく」という戦略を躊躇なく取ることができるのです。
個人的にはS&P500派ですが、やはり全世界株式型にも全世界株式型にしかない魅力とメリットがあります。新NISAで何の商品を買うか迷っている方は、ご自身の考え方に合わせ、ぜひ最適な道を選んでいただければと思います。
参考
・三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式 交付目論見書(2023/07/25版)」
浅見 陽輔/銀行員・証券アナリスト
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科を卒業後、2013年に銀行に就職。10年のキャリアで、投資運用、リスク管理、法人・個人向け融資、システム部門を経験。証券アナリスト、FP2級、簿記2級、税務上級など20種類の金融系資格を保有。趣味は優待株投資と筋トレ。本業の傍ら、Kindle(電子書籍)作家としても活動中。代表作に『図解 新NISA』『トクする株主優待の選び方』『最後のジュニアNISA』『絶対に続く筋トレ』などがある。Twitterアカウントは【@you_def】。
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