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「あなたは誰?」結婚するつもりだった彼が突然アカウントを削除… SNS恋愛の“悔しすぎる”結末

Finasee / 2023年12月14日 18時0分

「あなたは誰?」結婚するつもりだった彼が突然アカウントを削除… SNS恋愛の“悔しすぎる”結末

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

涼子(40歳)は派遣社員としてメーカーで一般事務をしている。東京の有名私大を出て、アイルランドに留学した経験もあり、準大手の商社でも働いた経験もある涼子は、「独身の派遣社員」という自分の現状に満足していなかった。

そんな時、過去に実名で登録していたSNSに、アイルランドで同じ大学に通っていたという男性からからダイレクトメッセージが届いた。

●前編:SNSから国際恋愛へ発展 40歳独身女性がハマった「あざと過ぎる」手口

SNSでの出会いから「国際恋愛」へ

最近の涼子の日課は、イアンとDMでやりとりをすることだった。

「今日も仕事行ってくるね」

「無理をしないでね。ハニー」

こんなやりとりを毎日するようになっていた。イアンの方からDMを送ってくれることもあり、アイルランドで何がはやっているのかなどを涼子に教えてくれた。

初めてイアンとやりとりをした日からもう3カ月たったが、彼の存在は涼子の中で非常に大きなものになっていた。

最初は単なる暇つぶしの相手に過ぎなかった。しかし、初めてやりとりをした数日後にイアンから送られてきたDMが涼子の心に火をつけた。

「あなたがアイルランドにいたなら、毎日会えるのに。2人の距離が離れているのがすごく悲しいです」

こんな言葉をかけられるなんて、数年ぶりだった。昔は職場で男性社員に好意を寄せられていると感じたこともあったけど、35歳を超えたあたりから、そういうこともめっきり減ってしまった。今、仕事に関すること以外で自分に声をかけてくれるのは、見た目が貧相なあの上司だけだ。だからこそ、イアンの言葉が涼子を熱くした。

イアンはアイルランドでシステムエンジニアの仕事をしているのだが、独身で彼女もいないし、仕事柄あまり人と話す機会がなく、涼子とDMでやりとりをするのが救いになっているという。そして、近いうちに会社を辞め、日本でシステム開発の会社を作りたいらしい。イアンいわく「日本は英語のできるエンジニアが圧倒的に不足しているから、英語と日本語が使える自分が会社を作れば、きっとたくさんの注文をもらえる」ということだった。

ほのめかされたプロポーズから一転…

さらに数カ月がたち、イアンは会社を辞め、本格的に起業の準備を進めているということだった。日本は春を迎えたが、アイルランドはまだ少し寒いらしい。

「日本に行ったら、最初にあなたに会いたい。ずっと相談に乗ってくれたことへの感謝の言葉を伝えたいし、どうしても伝えたいことがある。恥ずかしくて、これ以上は言えないよ」

「ありがとう。私にとってもイアンがすごく大きな支えだったよ。早く会いたいな。何を伝えたいのかは聞かないけど、私も気持ちを決めてるからね」

思わせぶりなイアンのDMにたいして、涼子は心を込めて返信した。「どうしても伝えたいこと」が涼子へのプロポーズなのは明らかだった。

翌日、イアンからいつものように届いたDMを開けると、彼が珍しく怒っているのが分かった。もちろん涼子に怒っているのではなく、日本でオフィスを借りるのに「外国人だから」と信用してもらえないことに怒っているのだった。オフィスを借りるにあたって敷金を日本円で180万円振り込まなければいけないのだが、イアン本人ではなく「信頼できる日本人の方」が振り込まなければいけないと言われたらしい。

「まさか、大好きな日本でこんな風に差別されるなんて思わなかった。そんな大金を代わりに振り込んでくれるようなビジネスパートナーもいないし、会社を作る計画は白紙だよ」

イアンからのDMを読んだ涼子もショックだった。大好きなイアンが「外国人だから」と差別されるなんて、絶対に許せないと思った。そして、イアンの来日がなしになることが何よりも怖かった。そのまま自分との関係も終わってしまうのではないか、そんな恐怖に涼子はとらわれた。

「大丈夫。私が振り込んでおくから。口座情報を教えて」

そのDMを送るのにためらいはなかった。

「国際ロマンス詐欺」の被害者に…

イアンからの連絡が途絶えたのは、180万円を振り込んだ翌日のことだった。SNSのアカウントが削除されていた。『なにか事件や事故に巻き込まれたのではないか』と思ったが、どうすればいいか分からず、思い切って110番に電話してみた。海外のことだし無駄だろうと思ったが、なにかをせずにはいられなかった。

電話してみると、警察は意外なほど丁寧に話を聞いてくれた。そして、事情を聞いてくれた窓口の警察官の口から信じられないような言葉が飛び出した。

「滝沢さん、あなた詐欺の被害に遭っているかも知れませんよ」

警察官から言われた通り、すぐに最寄りの警察署に向かった。タクシーを使ったが、休日の昼間ということもあり、道路はいつもより混んでいた。驚きと緊張のあまり「どうしてこんなに混んでるの!」とタクシーの中で声を荒らげてしまった。運転手はなにも答えず、ルームミラー越しに冷たい視線を投げつけた。タクシーが警察署の前に止まると、涼子は運転手からお釣りも受け取らず、警察署の中に駆け込んだ。尋常ではない涼子の様子を見た女性警官が「どうしました」と声をかけてくれた。涼子は、そこでやっと冷静さを取り戻した。

いわゆる「国際ロマンス詐欺」という手口らしい。イアン・レビットという名前も、アーサー大学という学歴も、システムエンジニアという職業も全てうそで、涼子とDMのやりとりをしていたのは、反社会的組織に属する日本人の可能性が高いという。

そんな話を涼子は最寄りの警察署で聞かされた。涼子が振り込んだ180万円はすでに引き出されていて、取り戻せる可能性は限りなくゼロに近いと言われた。

涼子は仕事を辞めた。派遣先の上司や同僚は驚いていたし、派遣会社の営業担当も「滝沢さんは今の職場からの評価も高くて、合ってると思ったんですが……」と残念そうだった。申し訳ない気持ちはあったが、とても仕事を続けられるようなメンタルではなかった。

自分が詐欺師のカモにされたという現実は、涼子のプライドをずたずたにした。今はアパートの部屋に引きこもり、食料を買うために近所のスーパーに行くのが唯一の外出になっていた。

もはや、生ける屍(しかばね)のようだった。今の涼子を支えているのは「自分はこんなところで終わる人間ではない」という、ずたずたになったプライドのかけらだけだった。味わったことのない屈辱の中で、涼子はプライドのかけらを糧に再び立ち上がろうとしていた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

Finasee編集部

「インベストメント・チェーンの高度化を促し、Financial Well-Beingの実現に貢献」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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