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手間をかけずに「株式」に投資する〜投資信託を利用する

Finasee / 2023年12月27日 17時0分

手間をかけずに「株式」に投資する〜投資信託を利用する

Finasee(フィナシー)

投資信託の役割を再考する

これまで4回にわたってお話ししてきました『NISAや確定拠出年金で役立つ賢いお金の育て方』。前回は、株式投資では避けることのできない株価変動の影響を抑制する“何時でも”“選ばず”投資する考え方とその効果を確認いただきました。

今回(第5回)のテーマは、“手間をかけずに「株式」に投資する〜投資信託を利用する”です。投資信託を利用するというと、「そんなことはわかっているよ」「もう投資信託に投資しているよ」とおっしゃる方も多いでしょう。しかしながら、さまざまなお考えやご意見に接していますと、投資信託を誤解したまま利用されているケースも多いと感じています。

今回はそうした誤解を解きながら、投資初心者の方でも容易に実行できる投資信託を利用した株式投資について考えます。

投資信託は投資のための便利な“道具”

まずお話ししたいのは、投資信託は投資を実行するための道具にすぎないということです。 

皆さまは投資信託を使って、株式や債券などの“お金のなる木”に投資されるのであって、投資信託そのものに投資するわけではありません。道具を選ぶ際には、目的や使い方を決めないと選ぶことはできません。投資信託を選ぶ前に、何にどのような投資を行うかを決める必要があります。

「投資信託がリターンを産む」ので「良い投資信託を選ぶ」のではありません。「こんな投資がしたい」が「投資信託を使うと便利」なので「一番便利な投資信託を選ぶ」わけです。

実行したいのは“何時でも”“選ばない”株式投資

これまで4回にわたり、どのような資産運用をするのが賢明かを考えました。頼りになる“お金のなる木”である株式への投資リターンを安定させるために、“何時でも”“選ばず”投資することが株式投資への不安感を軽減させる方法であることをご説明しました。今回投資信託についてお話しするのは、”何時でも“”選ばず“株式投資を実行するには、投資信託が非常に便利だからです。

投資信託で“何時でも”“選ばず”株式投資

“何時でも”“選ばず”長期分散投資を自ら実行するには、膨大な資金を有し、膨大な数の銘柄に投資して、それらを堅実に管理することが必要ですが、実際には不可能です。代わりに投資信託を利用することが不可欠ですが、投資信託は下表で示すようにその他にもさまざまなメリットを有する極めて便利な資産運用のための道具です。

出所:株式会社お金の育て方作成

また、投資信託を利用することによって、(新)NISAや確定拠出年金の枠内での資産運用にも容易に応用でき、そのメリット(税制優遇/長期投資など)も享受しやすくなります。

“何時でも”“選ばず”株式投資に適した投資信託
コスト同様に重要な投資対象の広さ

投資信託の選定においてコストを重視される方は多いでしょう。私もコストの重要性は否定しません。“何時でも”長期で投資する本投資戦略では、少しのコスト差は累積ベースでは大きな運用成果の差につながります。しかしコストと同等もしくはそれ以上に重要なのが投資対象の広さです。

行いたいのは“選ばない”徹底した分散投資ですから、強い確信や特別な事情がない限りは、意図的に地域/国や業種/テーマなどで投資対象を狭めた投資信託を選ぶことで、収益機会を逃すリスクを負わないことが賢明です。前回、世界株指数とその採用国の例でお話ししましたが、仮に有望と思う国を選んで投資し、見通しを外してしまうと、その機会損失あるいはリスクが大きくなります。そこで、選択投資の代わりに“攻めの”徹底した分散投資を行い、時間や手間を全くかけずに、リスクあたりのリターンの大きさでは上位の運用成績を狙う選択肢もあることを前回ご説明しました(“何時でも”“選ばず”投資の効果)

投資対象の広さで気をつけるべきもう一つの点は、時価総額の小さい「小型株」まで投資対象としているかどうかです。理由はいわゆる「小型株効果」にあります。後ほどご説明します。

2つの選択肢:「パッシブ」運用と「アクティブ」運用

投資対象を広く確保したとしても、投資信託を選ぶにはもう一つの投資戦略上の判断が必要です。「パッシブ」運用か「アクティブ」運用かの選択です。

実行困難な「パッシブ」運用の代わりにインデックスファンドを利用

“選ばない”株式投資をその文言通りに実行するには、投資可能な株式全てに投資する「パッシブ」運用を行いたいところです。しかし、日々の取引高が少ない銘柄などへの投資は実際には困難です。そこで「パッシブ」運用に近い運用として、市場指数採用銘柄全てに投資するインデックスファンドへの投資が行われています。

ただし、インデックスファンドを利用した株式投資には限界もあります。

投資対象を狭めず「アクティブ」運用

「アクティブ」運用は、投資対象全体から有望と思うものを選別投資することで、少しでも高いリターンを狙います。一見“選ばない”とは反対のアプローチのようですが、地域/国などで意図的に投資対象を狭めなければ、投資対象全体から選別投資しますので、“選ばない”投資に近い効果を狙うことはできます。

「アクティブ」運用はアクティブファンドへの投資で実行しますが、こちらにも限界があります。

インデックスファンド vs アクティブファンド

インデックスファンドとアクティブファンドの主な違いを以下の表でまとめました。運用目標や投資手法に関してはどちらが優位とは言えません。しかし投資対象や投資成果の点ではそれぞれに利用に際しての限界があります。特に注意が必要な商品性についてはハイライトしています。

出所:株式会社お金の育て方作成

(インデックスファンドの限界)
投資できる銘柄がインデックス採用銘柄に限定されている点です。 例えば日本株市場では、全上場銘柄数と主要インデックス採用銘柄数には大きな差があり、収益機会、例えば後述する「小型株効果」を逃してしまう可能性があります。

出所:公開情報に基づき株式会社お金の育て方作成

この制約を緩和するには、できる限り対象の広いインデックスに連動させるインデックスファンドを利用することです。後ほど全世界株式インデックスを例にお話しします。

(アクティブファンドの限界)
アクティブファンドではインデックスファンドに比べファンド間のリターン格差が大きいため、ファンド選定の良否が運用成果を左右してしまいます。例えば日本株ファンドにおけるインデックスファンドとアクティブファンドのリターン格差は下表の通りです。投資初心者の方々が利用するにはハードルが高いでしょうし、経験豊富な投資家の方々でもファンド選定のために多大な手間と時間をかける必要があります。 

したがって、“何時でも”“選ばない”株式投資を実行するには、インデックスファンドの利用を基本とするべきでしょう。

(注)「インデックスファンド」は野村総合研究所Fundmarkによる分類で国内株式/インデックス/TOPIXのカテゴリーに分類される83ファンド。「アクティブファンド」は野村総合研究所Fundmarkによる分類で国内株式/一般/フリーのカテゴリーに分類される235ファンド。「最高」および「最低」は同カテゴリーで最大および最小のリターンを挙げたファンドのリターン。出所:野村総合研究所 Fundmark

ただし、ファンド選定を上手く行うことができれば、アクティブファンドの利用によりさらに高い投資成果を得ることもできます。詳しくは本連載の「応用編」でお話しします。

インデックスファンド選びの留意点
全世界株式インデックスファンドを例に

前ページでは、ファンド間のリターン格差のリスクを回避するために、“選ばない”株式投資の実行には、インデックスファンドの利用を基本とすべきと考えました。しかしながら同様の投資対象に投資するインデックスファンドは複数あります。日本株式であってもTOPIXや日経225など複数のインデックスが存在しています。“選ばない”株式投資の実行には、より幅広い銘柄を対象としたインデックスに連動させるインデックスファンドを選ぶことが望ましいと考えます。

“選ばない”株式投資をシンプルに実行する方法の一つは、全世界株式インデックスファンドに投資することでしょう。ところが、全世界株式インデックスファンドでは、主に2種類のインデックスがベンチマークとして利用されています。それぞれの特性を以下の表で比較します。FTSEのインデックスでは、MSCIのインデックスが対象としない、時価総額の約13%に相当する小型株も対象となっており、それが最大の違いとなっています。

※図をクリックで拡大表示

出所:FTSE RussellおよびMSCIの開示情報より株式会社お金の育て方作成

対象の広いインデックスファンド利用で小型株効果

次に2つのインデックスの過去のリターンとリスクをできるだけ長期のデータに基づいて比較します。下表をご覧ください。小型株まで対象とするFTSEの方がリスクはやや大きいですが、リターンがさらに大きくなっています。ご覧いただいている数値は年率ですので、長期間運用した場合の累積で考えると非常に大きな差になります。

※図をクリックで拡大表示

 出所:FTSE RussellおよびMSCIの開示情報より株式会社お金の育て方作成

リターンの差はあくまで過去のものですし、たまたまとも考えられます。しかし2つのインデックスの差が小型株の有無である以上、リターンの違いは次ページでご説明する「小型株効果」によるものと考えられ、同様の傾向は今後も続く可能性が高いと思われます。

(注)当分析結果は、MSCIのインデックスがFTSEより劣っていることを示すものでは決してありません。MSCIも小型株までを対象としたインデックスを公表しています。しかし、国内で商品化されている全世界株式インデックスファンドは、この2つのインデックスのうちのいずれかをベンチマークとするものが大半となっています。

「小型株効果」を株式投資の成果の一部に

前ページで小型株への投資の有無により投資成果に大きな差が生まれる可能性があることを見ていただきました。この小型株効果が今後も生じるのであれば、インデックスファンドを利用する場合には、より対象が広く、できれば小型株まで投資対象とするものを選ぶ方が賢明でしょう。

小型株効果とは?

小型株効果とは、株式の時価総額が小さい小型株は、時価総額の大きい大型株よりもリターンが相対的に高くなりやすい傾向のことです。理由は理論的には説明できていませんが、長期間にわたり世界のさまざまな国の株式市場で見られる現象です。

下記のように全世界株式指数で大型株+中型株指数と小型株指数を比較すると、年率2%を超える小型株効果が見られています。先の全世界株式インデックスの例のように、小型株が約13%を占めるポートフォリオであれば、年間0.3%前後のリターンの底上げが期待できる可能性があります。また前ページの表の過去データでは、年間0.9%のリターン差を生んでいます。インデックスファンドであれば運用コストの差と同等あるいはそれ以上の影響度があるのではないでしょうか。

 

(注)円換算リターン。ネット配当込みベース。
出所:MSCIの開示情報より株式会社お金の育て方作成

小型株効果の生じる理由と今後の継続性

小型株効果の理由については、主なものとして以下のような説明がされています。

・市場での注目度が低いため割安に放置されやすい
・成長企業が多く今後の利益成長がより大きく期待できる
・調査・分析しているアナリストの数が少なく銘柄情報を得にくい

いずれも短期的に変化するような状況は考えにくいでしょう。小型株効果は今後も継続して生じる可能性が高いと考えられます。

まとめ

本稿がご紹介する“選ばない”株式投資、言い換えれば“攻めの”分散投資により、小型株効果も資産運用に活かすことができることになります。小型株も対象に含め幅広い銘柄に徹底して分散投資を行うことで、リスクを抑えながら期待リターンを高めることができます。したがってインデックスファンドを利用する場合には、地域や国あるいはテーマなどで投資対象を意図的に狭めることなく、かつ小型株を含む、より対象の広いインデックスファンドの利用が賢明でしょう。

次回(第6回)は、資産運用の成功確率をさらに大きく高めるために、ご自身に合わせて長期・積立で「株式」に投資する方法について考えます。

 

篠原 滋/株式会社お金の育て方 代表取締役/資産運用ナビゲーター

1996年に野村證券株式会社にて投資信託分析・評価業務を立ち上げ、独自の定性評価中心のプロセスを確立。2000年の野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社(“NFR&T”、野村フィデュシャリー・リサーチ・アンド・コンサルティング株式会社(”NFRC”)の前身)設立を経て、25年にわたり東京、ニューヨーク、ロンドンを拠点に国内外の多数の運用会社/ファンドの分析調査及び選定ファンドの組み合わせによる投資助言に従事。2021年9月に独立し、独自の視点に基づく合理的な資産運用並びに投資信託活用に関する情報発信を開始。2022年6月に株式会社お金の育て方設立に参加し代表取締役に就任。国際基督教大学教養学部卒。米国ニューヨーク大学スターン経営大学院経営学修士(MBA)課程修了。

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