新NISAではアクティブファンドも選ぶべき? 企業型DCにも有効?
Finasee / 2023年12月20日 11時0分
Finasee(フィナシー)
今回は、一部の界隈で盛り上がっているアクティブファンドについて考えてみたいと思います。投資信託の運用方法を大きく分けると、インデックス(パッシブ運用)とアクティブ運用に分けられます。
ちなみに、インデックス(指数)とは、日本の株式市場を対象としている代表的な株価指数である日経平均や、世界の株式を対象とした株価指数であるMSCI ACWI Index(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)などのことで、市場(マーケット)の動向などを表す指標のことをいいます。株式市場だけではなく、債券や不動産(REIT)など、さまざまな投資対象に対して指数があります。
その指数に連動するように運用されているファンドをインデックスファンドと言います。
インデックスファンドが人気ですここ10年で、インデックスファンドの手数料はどんどん安くなってきており、投資家のみなさんにとっては嬉しい環境が整ってきていると言えるでしょう。下記の表は2023年10月末の国内籍ファンドの残高(純資産総額)ランキングです。
出所:投資信託資料館
ちなみに、その10年前である2014年10月時点の同ランキングが以下です。10年前には、1本もインデックスファンドはランクインをしていませんでしたが、2023年10月には、4本もランクインしており、投資信託残高の上位を占めております。
出所:投資信託資料館
しかも、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に至っては、2018年07月に設定されている比較的新しいファンドです。ほぼネット取引でしか購入できない商品となっていますので、営業員によって販売されたファンドではなく、個人投資家達の力で積み上げられた人気ファンドと言えるでしょう。
アクティブファンドって?アクティブファンドはインデックスファンドと違い、インデックス(指数)に連動しないファンドなのですが、FPのみなさんの説明を拝見すると、市場(ベンチマーク)を上回るリターンを目指すファンドと紹介されています。 確かにひと昔前のファンドは、どのファンドも「指数を上回るリターンを目指す」と書かれていた印象でした。一方で、その多くが、インデックスファンドにリターンで負けていました。
今でも成績が怪しいファンドがどんどん増えて来てしまってはいるのですが、しっかりとファンドのコンセプト(特色)を持ったファンドも出てきています。例えば、ファンドの目標について
・年率〇%を目指します
・基準価額の変動リスクを年率2%程度に抑えることを目標とします
・米国株式指数および金を投資対象とし、「米国株式自動配分戦略」により、信託財産の成長を目指します
などと明示しているファンドです。
ですので、アクティブファンドとは?聞かれますと、「掲げているコンセプト(ファンドの特色)に沿った運用をしているファンド」とお伝えしています。もちろん「市場(ベンチマーク)を上回るリターンを目指す」も1つの目標と言えます。
だからこそ、コンセプト(特色)や運用目標のチェックは大事だと思っています。
コンセプトだけではなく、やはり成績も気になります。定説として長期に渡って勝ち続けるアクティブファンドはほとんどない、と言われてきましたが、2023年4月に金融庁から発表された「資産運用業高度化プログレスレポート2023」からは、ちょっと意外なデータが発表されました。
どのようなデータかいいますと、自国に投資するアクティブファンドがベンチマークを上回っている割が、米国・欧州に比べて日本の方が高いというデータです。10年単位で見ても、米国では13.4%しかベンチマークに勝っていないのですが、日本では33.3%の勝率でした。レポートでは「ベンチマークに勝っているファンドの本数割合が高く、アクティブ運用の拡大余地が大きい。」と締めくくっています。
図「資産運用業高度化プログレスレポート2023」より
個人的には、アクティブファンドも保有しているので金融庁の言うようにアクティブファンドに期待したいところです。ただ、そう甘くないのが金融市場だと思っていて、日本市場もどんどん厳しくなっていくと感じています。その大きな理由が日本の市場の効率性です。
日本市場はまだまだ効率性が低いと感じています。「資産運用業高度化プログレスレポート2023」から、欧米の投資信託の開示は進んでいると感じます。保有銘柄の状況は月次で開示されていることも多く、エクセルなどのデータで提供されてします。またファンドマネージャーの経歴やファンドマネージャーが運用してからの経過年数が記載されていたり。手数料をもらっている分、その働きや結果を検証できるように開示されていると思うのですが、その誠実性の反面、開示性が高くなってきたことで、勝ち続けるのが難しくなると感じています。ファンドのリターンの要因には、情報の格差があったからです。
また日本市場自体の効率性の低さもあると思います。新規上場に比べ、合併や非上場化の理由以外で上場廃止される銘柄はかなり少ないですし、PBR1倍を下回っている、解散価値よりも市場評価額(時価総額)が低く評価されている、いわゆる残念な企業も多く、上場を続けています。言い換えるとだらだらと上場している企業も多く、日本は市場自体が非効率と言えます。非効率な市場では、銘柄を選んで投資するアクティブファンドが優位であることも多く、だからこそ勝てている割合が多かったのだと思いますが、最近では日本でも市場の効率性を上げようとしていますので、今後はアクティファンドが勝ち続けるのは難しくなると思います。そして、より勝ち負けがはっきりしていくと感じています。
企業型確定拠出年金ではアクティブファンドは選ばなくてよい勝ち負けがはっきりしていくと書きましたが、特に企業型確定拠出年金(企業型DC)ではインデックスファンドのみに商品選びを絞って良いと感じています(アクティブファンドは不要)。それには、大きな理由があります。
そもそも当たりは入っていますか? ということです。
どういう意味かと言いますと、宝くじを想像していただけますでしょうか。みなさんは、テレビでも放映される大きな”宝くじ売場”か、街の小さな”宝くじ売場”、どちらで買ってみたいと思いますか。私は大きな”宝くじ売場”です。
なんとなくですが、小さな”宝くじ売場”で買う方が自分に当たりクジが巡りあう可能性が高そうな気がします。もちろん、宝くじには絶対に当たりが入っているという、その気持ちは分かるのですが、そもそも小さな”宝くじ売場”に当たりクジがあるとは思えないんです。企業型確定拠出年金(DC)では、アクティブの商品数が限られており、そういう意味では売り場が小さいといえます。
また、これは私の調べた結果なんですが、DC専用ファンドの中から10年以上運用されているアクティファンドの成績です。
出所:著者作成
「資産運用業高度化プログレスレポート2023」では、アクティファンドの優位性が示されていましたが、DC専用ファンドに限ってみると状況が違うようです。このような状況から、いわゆる”当たりクジ”を企業型確定拠出年金の中から調べるのも難しいと感じています。
それでもアクティブファンドを選ぶならNISAやiDeCoでただ、良いアクティブファンドがあるのは事実です。例えば、NISAであれば多くの商品から選ぶことができるので、アクティブファンド選びはありだと思っています。また、確定拠出年金という制度上入れ替えが難しいので過度な期待は禁物ですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)の場合も運営管理機関によって商品選びに力を入れているところもありますので、アクティブファンドを探してみるのはありだと感じています。
ただ、日本のアクティブファンドからアドバイザー(販売会社・IFA)に入る手数料はまだまだ高く、良いファンドを買いやすい状況ではないと思っています。冒頭で述べたように、一部の界隈でアクティブファンドが人気というのが少し気がかりです。
図「資産運用業高度化プログレスレポート2023」より
欧米のようにどれを買っても販売側に入る手数料が一律であれば、アドバイザーから提示されたとしても、商品をより客観的に評価しやすいと言えると感じます。
そうは言っても、私自身もアクティブファンドも買っていますし、良いファンドはたくさんあるのも事実なので、気になる人はアクティブファンドもチェックしてみてください!
FPかえる(尾上堅視)/ファイナンシャルプランナー
2005年個人投資家として日本株式への直接投資や投資信託を用いた資産形成をスタート。その後、証券会社や運用会社などへ取材を行うライターとして活動し、2010年家計の総合相談センターの相談員(FP)となり現在に至る。個人投資家の金融リテラシーの向上、お金と仲良くおつきあいする方法を広く伝えるため活動中。
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