Q.新NISAの「投資枠の使い分け」や「積立金額の設定」…どう戦略を考えればいい?
Finasee / 2023年12月18日 17時0分
Finasee(フィナシー)
投資戦略は年齢にあわせて考える
「新NISAの投資戦略を、どう考えるべきだろうか?」
目前に迫った新NISAのスタートに際して、そんなことを考えている方は多いのではないでしょうか。ただ正直なところ、それほど凝った投資戦略を考える必要はまったくありません。考えて始めるとキリがありませんし、考えあぐねた末に何もしていない……などということにもなりかねません。
ですので、極力シンプルに考えた方が良いと思います。まず、自分の年齢が「資産形成層」なのか、それとも「資産活用層」なのかを考えてみてください。ざっくり申し上げて、20~55歳は資産形成層、65歳以降は資産活用層だと考えます。
間の55~64歳の層は、「やる気になれば何とか老後の資金が作れないでもない」と申し上げておきます。できれば、55歳には資産形成の必要性に気付いて、65歳までの10年間という時間を有効活用していただきたいと思います。
資産形成層は「つみたて投資枠」をフル活用する資産形成層は、何も悩む必要はありません。月々、できる範囲の金額をひたすら積み立ててください。新NISAはつみたて投資枠だけで年間120万円の枠がありますから、大半の人はこれだけを使い続ければ十分でしょう。投資対象も、全世界株式に投資するインデックスファンド1本に絞ります。するべきことはただこれだけです。
少額投資の落とし穴に注意!ただし、少額資金で積み立てていったとしても、なかなか1800万円もの枠を満たすことはできません。よく少額投資を勧めるような意見を聞きますが、そのペースではまったく資産形成になりません。
たとえば月1万円をコツコツ投資しても、元本で1800万円の枠を満たすためには1800カ月かかります。150年間です。
何もしないよりは幾分かマシですが、30歳から65歳までの35年間、ずっと毎月1万円を積み立てたとしても、この間に積み上げた元本部分はたったの420万円です。せっかくの非課税枠なのですから、できるだけ1800万円を満たせるような計画を練る必要があります。
理想の積立金額はどれくらい?かといって30歳から毎月10万円を積み立てるのは、恐らく大変でしょう。だから30代は毎月3万円ずつ、そこから40代、50代、60代というように少しずつ積立金額を増やすという方法を考えてみてください。たとえば次のようにします。
<積み立て金額の例>
30歳~39歳(120カ月)=毎月3万円
40歳~49歳(120カ月)=毎月4万円
50歳~59歳(120カ月)=毎月5万円
60歳~64歳(60カ月)=毎月6万円
このように積み立てていくと、65歳になった時点で1800万円分の投資元本を積み上げられます。しかも、30歳から積み立てている分はかなりの期間、運用をし続けていますから、それに応じた運用益も出ているはずです。
積み立てた元本部分は1800万円でも、30歳から64歳まで35年間運用し続けているわけですから、恐らく3000万円、3500万円くらいの資金にはなっているでしょう。
55~64歳は「積み立て」と「退職金運用」で資産を作る問題は資産形成層の最終年齢に近い人が、これから資産形成を始める場合です。
といっても55歳から始めるなら、まだ可能性はあります。たとえば60歳で定年を迎えた人が65歳まで雇用延長で働き、その間に受け取った退職金も含めて運用に回せば、それなりに格好はつくはずです。
たとえば55歳から64歳までの10年間、毎月6万円ずつ積み立てていくと、10年間で積み立てた元本部分は720万円になります。これに加えて、この年齢層の人たちにとっては退職金も、重要な運用原資になります。
一般的な高齢者向けのライフプランニングでは、どうやら退職金の額を2000万円程度に想定しているケースが多いようですが、これは大企業のケースです。日本は大半が中小企業なのですから、中小企業の退職金をモデルにするべきでしょう。1000万円程度がその額になります。
退職金が1000万円で、55歳から64歳まで積み立てられる元本が720万円ですから、合わせて1720万円。生涯非課税枠の1800万円には若干届きませんが、ここまで積み立てられれば御の字でしょう。
しかし、せっかくですから、インデックスファンド1本だけで積み立てるのは、何だか工夫がなくて面白くありません。55歳からの資産形成にはもう少し工夫を凝らしてみましょう。
アイデアの1つとして、成長投資枠とつみたて投資枠の合わせ技を考えてみたいと思います。この事例で問題になるのは、1000万円の退職金をどうやって運用するか、ということです。
毎月6万円はつみたて投資枠を用いて、全世界株式に投資するインデックスファンドを積み立てていけば良いと思います。ですが、1000万円を一括で受け取った場合、それを預金に置いておきますか?
そこで退職金の1000万円は、成長投資枠で運用することにします。投資対象はJ-REITです。J-REITの分配金利回りは、ファンドにもよりますが、年4~5%程度になります。仮に5%の分配金利回りで運用できれば、1000万円の投資元本から毎年50万円の分配金収入を得ることができます。
しかも新NISAを利用すれば分配金も非課税ですから、まるまる50万円を受け取ることができます。1カ月にすると4万円とちょっとです。同時に、65歳になる直前には全世界株式のインデックスファンドで720万円の投資元本が積み上がっているので、運用収益も含めれば800万円程度にはなっているでしょう。
その後、そこから200万円分を成長投資枠に移してJ-REITを買っていきます。そうすれば、全世界株式のインデックスファンドとJ-REITのポートフォリオを持てます。1200万円のJ-REITから年5%の分配金収入が得られるとしたら、その額は年間60万円、月にすれば5万円になります。公的年金に加えて毎月5万円の分配金収入が得られれば、老後の資金計画はそれなりに楽なものになるでしょう。
資産活用層は「分配金」を得て、年金の足しにするところで、先ほどご紹介したJ-REITに投資して、そこから分配金を得るという戦略は、実は「資産活用層」にとって最も有効な手段だと考えます。
「老後2000万円問題」では、無職の高齢者2人世帯が30年間で不足するお金を2000万円としました。毎月5万5000円が不足する計算です。
ですが、前述したように、成長投資枠の1200万円いっぱいまで、5%の分配金利回りが得られるJ-REITを買っておけば、毎月5万円の分配金が得られるのですから、2000万円問題のかなりの部分はカバーできるはずなのです。
もちろんJ-REITだけでなく、株式の高配当利回り銘柄でも良いですし、最近は高配当利回り銘柄で構成されたインデックスに連動するETFも登場していますから、これらに分散投資するという手もあります。
この手の高配当利回り株やETF、高分配利回りのJ-REITのポートフォリオは、買い付けた時点の株価や取引所価格で利回りが確定するので、その先、株価などが大きく値下がりしたとしても、業績や家賃収入の悪化で減配にならない限り、ずっと5%の利回りを享受できます。
参考
・金融庁「新しいNISA」
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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