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コロナ禍で苦戦したブリヂストン 復活の鍵を握った“前向き”なリストラと価格戦略

Finasee / 2023年12月19日 17時0分

コロナ禍で苦戦したブリヂストン 復活の鍵を握った“前向き”なリストラと価格戦略

Finasee(フィナシー)

ブリヂストン株式が好調です。2019年から2020年にかけて見られた下落は底打ちし、2021年以降はおおむね右肩上がりで上昇しています。足元で進む業績の改善が投資家の買いを誘っているようです。

【ブリヂストンの業績】

  売上高 純利益  2021年12月期 3兆2461億円 3079億円  2022年12月期 4兆1110億円  3055億円  2023年12月期(予想)   4兆1500億円 非開示

※2023年12月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想
※非継続事業(米国建築資材、防振ゴム、化成品ソリューション)を除く

出所:ブリヂストン 決算短信

【ブリヂストンの株価(月足、2018年11月~2023年11月)】

出所:Investing.comより著者作成

ブリヂストンは投資家に人気がある銘柄の一つです。2023年5月には市場評価性(PBR基準)の高さから「JPXプライム150指数」にも選ばれました。同株式に注目する人は少なくないでしょう。

業績回復の背景にはリストラと高単価戦略があるとみられます。ブリヂストンはどのような施策を行ったのでしょうか。それぞれ概要を紹介します。

タイヤ世界首位級 九州生まれの大グローバル企業

ブリヂストンはゴムの世界的大手です。乗用車やバス・トラック向けのタイヤ、鉱山車両や航空機といった特殊車両タイヤが主力商品です。タイヤ以外では建築用の免震ゴムなど、ゴム以外では自転車やゴルフ用品なども生産しています。また『タイヤ館』や『コクピット』のブランドで小売事業も手掛けています。

ブリヂストンは1931年に福岡県久留米市に誕生しました(当時はブリッヂストンタイヤ)。社名の由来は創業者の石橋正二郎(いしばし・しょうじろう)氏の姓を英語風に読み替えたものです。当時のタイヤは外国製が主流だったこと、当初から海外への輸出を想定していたことから英語風の商号を採用しました。

社名に込められた願いはかない、今やブリヂストンはグローバルトップの地位を占めています。米ファイアストン買収を足掛かりに海外進出を強め、現在は150ヵ国以上で事業を展開しています。タイヤ売上高は世界2位(2021年度)、売上高に占める海外の比率は75%に達しています(2022年度)。

【世界のタイヤ市場シェア上位5社(2021年度)】
・ミシュラン:14.8%
・ブリヂストン:12.5%
・グッドイヤー:8.4%
・コンチネンタル:6.8%
・住友ゴム:4.1%
※売上高ベース

出所:ブリヂストン BRIDGESTONE DATA 2023

【地域別売上高(2022年度)】

出所:ブリヂストン 業績・販売実績 推移データより著者作成大幅リストラを断行 非タイヤ事業の見直しに着手

ブリヂストンはコロナ禍の影響を比較的強く受けた企業です。感染が拡大した2020年度はタイヤの販売が急減し69期ぶりの最終赤字に転落しました。

【当時の業績(2019年度~2020年度)】

  2019年度 2020年度  売上高  3兆5072億円  2兆9945億円  純利益 2401億円 ▲233億円  グローバルタイヤ販売本数 
(前期比)(※1) ― ▲16%

※非継続事業(米国建築資材、防振ゴム、化成品ソリューション)を含む
※1.乗用車用・小型トラック用タイヤ

出所:ブリヂストン 業績・販売実績 推移データ

ブリヂストンは事業再編に着手します。それまで進めてきたタイヤ以外の事業を再評価し、競争力に期待できない事業からは撤退を進めています。

2021年には米国建築資材事業、防振ゴム事業、化成品ソリューション事業を売却しました。またコンベヤベルト事業からは2024年末に撤退するとしています。

タイヤ事業においてもグローバルで生産拠点の閉鎖や集約を進めています。ブリヂストンの従業員数は近年で減少傾向にありますが、背景にはこれらのリストラがあると考えられます。

【従業員の推移(2011年12月~2022年12月)】

出所:ブリヂストン 業績・販売実績 推移データより著者作成コロナ後に成長 高単価戦略で初の売り上げ4兆

コロナでは苦戦したブリヂストンですが、その後は回復しました。事業譲渡益の計上もあり2021年度の純利益は3940億円と過去最高を更新しています。翌期は最終減益(調整後営業利益は増益)となったものの、売上高は同社として初めて4兆円を突破しています(非継続事業(米国建築資材、防振ゴム、化成品ソリューション)を含む)。

【売上高・純利益の推移(2019年度~2022年度)】

出所:ブリヂストン 業績・販売実績 推移データより著者作成

ただし販売が伸びたわけではありません。タイヤ販売本数は2020年度からは大きく回復しているものの、コロナ前(2019年度)の9割程度にとどまっています。

【タイヤ販売本数の推移(グローバル、2019年度~2022年度)】

出所:ブリヂストン 業績・販売実績 推移データより著者作成

業績を押し上げたのは高単価戦略にあると考えられます。ブリヂストンは高付加価値商品の販売を強化しており、グローバルで好採算の高インチタイヤの販売比率が上昇しています。高インチタイヤに高価格帯ブランドを含めたプレミアム領域の販売比率は2023年度に55%に達する見込みです。

【高インチタイヤ販売比率(欧米、18インチ以上)】

   新車用   市販用   2019年度 53% 25%  2022年度 61% 37%  2023年度(計画値)  65% 40%


【高インチタイヤ販売比率(新興国、17インチ以上)】

   新車用   市販用   2019年度 53% 27%  2022年度 65% 34%  2023年度(計画値)  70% 35%

出所:ブリヂストン 中期事業計画(2021―2023)進捗 説明会資料

値上げも奏功しました。ブリヂストンは原料の高騰を背景に国内外で値上げを実施しています。利益の押し上げ効果は2021年度で790億円分、2022年度で3250億円に達しました。原材料や営業費の増加をこなし好業績につながっています。

新しい中期経営計画(2024年度~2026年度)の策定進捗によると、ブリヂストンは2030年以降にプレミアム領域の減速を想定しています。同社はリストラで浮いた経営資源を成長領域へ投入することで成長を目指します(出所:ブリヂストン 中期事業計画 (2024―2026) 策定進捗 説明会資料)。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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