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口座から消えた「5000万円」をめぐり一家崩壊の危機…家族も呆れた“ホス狂妻の言い訳”

Finasee / 2023年12月27日 11時0分

口座から消えた「5000万円」をめぐり一家崩壊の危機…家族も呆れた“ホス狂妻の言い訳”

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

地権者の婿である増岡健次は、義父の経営する不動産会社の専務を務めている。義父は地権者としてマンションの価値を毀損や住民の風紀をしきりに気にしていたが、近頃マンションでは増岡の部下が地権者住戸に入居させた男の素行に苦情が集まっていた。

●前編:【ブランドスーツを着てラウンジで商談…タワマン住民たちが警戒する「不審な男」】

ある日家計口座から消えた「5000万円」

翌日は土曜日だった。最上階の居室の窓下には、小春日和の穏やかな空気をまとった都心のビル群が広がる。

リビングに珍しく家族4人が顔をそろえた。皆、何となく居心地悪そうだ。

雲行きが怪しくなったのは、俺が金の話を始めたことがきっかけだった。

拓海の留学資金を払い込む必要があり数日前に家計口座の預金残高を確認したところ、残高が5000万円ほど減っていた。

キャッシュカードや銀行印は妻の瑞希に預けてある。妻は銀行や証券会社の勧めでそこから株式や債券に投資することが時々あり、今回もそれだと思っていた。

「今はドルが高いから、生活費も含めると年間2000万円近くかかるらしい。投資は一時休止だな」

軽口をたたいて瑞希の方を見ると、いつもは陽気な瑞希が顔を引きつらせている。

「なんだ、まさか5000万円全部使い果たしたわけじゃないよな?」

冗談めかして言うと、今度は「使って何が悪いのよ」と開き直った。

一家崩壊の危機に呆れた言い訳

「本気か? 第一、5000万円も何に使ったんだよ? 歌舞伎町には自分の小遣いで通っていると言ってただろ」

「カイトが『うちの会社に出資しない?』って言うのよ。あのお店の社長、なかなかのやり手で系列のレストランももうかってるみたいだから、いいかなと思って。カイト、今度役員になったらしいのよ」

カイトというのが今、瑞希が入れ上げているホストの名前だ。

想定外のなりゆきに言葉を失った。口座の残高は1500万円を切っている。これでは拓海をアメリカに送り出せない。

「バッカじゃねえの」

隣で怒りを押し殺した声がした。拓海だった。

「40過ぎのおばさんが色気づいてホストにいくら貢いだって、相手はどうせ、いい金づるくらいにしか思ってないからね。なのに、15も若い男にしっぽ振ってさ。これが自分の親かと思うと、ホント情けないよ」

拓海は俺と違って頭がいい。けれど、若いゆえに容赦がない。だから、そのストレートな物言いは尖ったナイフのように相手の心をえぐる。

だが、瑞希もここで「ごめんなさい」と泣き崩れるようなタマではない。

「親に養ってもらってるくせによく言うわ。世の中にはね、苦学生がいっぱいいるの。あんたの大学だって、奨学金もらって、バイト掛け持ちして、0円食堂でランチ食べて生活している人がいるのに、自分のこと、恵まれてるって思わないの?」

 

「そういうの、論点のすり替えって言うんだよ。今は母さんが勝手に引き出した5000万円の話をしてるんだ。すぐに返してもらってよ!」

「何も知らない学生がバカ言うんじゃないわよ。いったん投資したお金は『急に入り用になったから返して』というわけにはいかないの。1年間は預けるという契約だし」

「じゃあ、僕の留学資金、どうするんだよ?」

「足りない分はローンでも組めば? それが嫌だったら、留学止めなさい。就職してから自分のお金で留学してMBA(経営学修士)を取る人だっているでしょ? あんたもそうすればいいのよ。何もこのドル高、物価高の時にわざわざ行かなくたって……」

「ざけんな! こっちは人生かかってんだぞ!」

今にも瑞希に殴りかからんばかりだった拓海を止めたのは、弟の蒼空だった。

次男が提案した現実的な策

「兄ちゃん、このおばさんに何言っても無理。マジ留学したいなら現実的な手段を考えないと」

「どうすんだよ?」

「じいちゃんに立て替えてもらう。それっきゃないでしょ? 兄ちゃんは自慢の孫だから、喜んで出してくれると思うよ。そもそも原因作ったの、このおばさんだしさ」

蒼空は時折こうした老獪さを見せる。学校の成績は拓海ほどではないけれど、非常に冷静で現実的な判断をする。義父は初孫の拓海を目に入れても痛くないほどかわいがっているが、「あいつは肝が据わっている」と評価するのはむしろ蒼空の方だ。


 

留学資金の支払期限が迫っていることもあり、その日のうちに隣の義父宅を訪れることになった。瑞希が「絶対に行きたくない」と言い張ったため、拓海と一緒に重い腰を上げた。

義父には、拓海から経緯を説明させた。幸い、事態を把握した義父はすぐに2000万円を用意すると約束してくれた。

そして、「瑞希もいい年して何をやってるんだか」と吐き捨てた後、いきなり俺に向かって説教をたれ始めた。

 

「確かにこの件は瑞希が悪いが、お前の監督不行き届きでもあるぞ。毎晩、会社の金で清水と飲み歩いていて、寂しい思いをさせていたんじゃないか」

「だいたい、お前はマネジメントの意識が低過ぎる。もう一度ヒラからやり直すか?」

「例の2720号室の住人はどうなった? ちゃんと調べたのか?」

やれやれ、瑞希のせいでとんだ災難だ。

* 

その時、胸ポケットでスマホが震えた。応答した途端、清水の大声が響く。

「専務、大変っす。2720号室の河合が警察に連行されました。マルチ商法で、特定商取引法違反の容疑がかかってるそうです」

義父の目がギロリと光る。詰んだ、と思った。

※この連載はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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