仕事一筋・40代男性に突然の「がん発覚」闘病中に気付いた“本当にやりたいこと”
Finasee / 2023年12月22日 11時0分
Finasee(フィナシー)
今回は、新卒で入社した会社で順調にキャリアを築いていたものの、突然想像もしなかった「がん宣告」を経験された林さんの事例をご紹介します。闘病生活をきっかけに仕事に対する考え方が大幅に変わった林さんの物語を、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
大手百貨店に新卒入社後、関連会社で事業立ち上げに奔走林さんは大手百貨店に新卒で入社しました。最初に和食器売場へ配属になって5年が過ぎた頃、時はバブル時代を迎えます。会社も新規事業に乗り出すことになり、関連会社で高級コンビニエンスストアを立ち上げることになりました。
林さんは若手ながら、新しい事業の立ち上げに奔走。様々な苦労と共に貴重な経験を積みながら中堅社員時代を過ごしました。立ち上げも一段落して新規事業も成功裏に終わったタイミングで、勇んで百貨店に戻ることになります。
仕事に打ち込める環境を求めて異動百貨店では企画宣伝の仕事を担当することになりましたが、どうも直属の上司とそりが合いません。しばらく苦悩の日々を過ごすことになります。しかしある時、「このままではいけない!」と思い、自分から申し出て別の関連事業に移してもらうように掛け合いました。
当時の百貨店はビジネスの多角化を手掛けていた頃なので、その取り組みの1つとして人材ビジネス事業にも着手していました。林さんはその人材ビジネス事業が自分に向いている職場ではないかと考え、結果的に関連会社に異動させてもらうことができました。
幸い、新しい仕事は自分に合っていたので、一生懸命仕事に取り組み、仕事一筋の生活を送ることになります。帰宅も夜の22時や23時が当たり前。休日労働も珍しくない毎日を過ごしました。仕事はきつくてもやりがいがあり、充実した日々でした。
しかし、ある日突然、林さんに想像もしなかった困難が降りかかります。
働き盛りの時期に生じた体の異変入社して23年が過ぎたある日、少しお腹に痛みを感じていたところ、会社の健康診断で「要精密検査」の結果が届きます。血便があった後だったので、心配になって急いで病院を予約しました。そこでの検査の結果、驚くべき宣告を受けることになります。
なんと体調不良の原因は「スキルス胃がん」だったのです。テレビや映画のイメージでは、本人へ告知はせず、ひたすら隠すような深刻な病気です。しかし、この時のお医者さんの口調は拍子抜けするものでした。
「ああ、林さん、胃がんですね。これは治療をきちんとすればまた仕事にも復帰できますから頑張りましょう」
いたって軽く、まるで風邪をひいたかのような物言いだったのです。今になって振り返ってみると、この時のお医者さんが深刻にならずに説明してくれたので、後の闘病生活で深く落ち込みすぎずに済んだと林さんは言います。
闘病生活を経て「やりたい仕事」に変化が病気の発覚後、すぐに入院し精密検査が行われました。その結果、「ステージⅢA」の段階。実際に手術して全摘した場合でも5年後生存率が46%以下の状態にあることを知らされます。詳細を聞くと、いよいよ病状の深刻さが胸に刺さり、頭が真っ白になったそうです。
それから、死を意識せざるを得ない闘病生活を経験するうち、林さんの中で仕事に対するある変化が起こりました。
「これからは会社の利益を上げることだけでなく、誰かをサポートすることをやっていきたい」
病気という理不尽な経験をする中で、多くの人から励まされ寄り添ってもらったからこそ、心の底から出てきた目標でした。その後は治療も順調に進み、幸いなことに再発・転移も起きず7年が経過しました。
●仕事に復帰後、並行してセカンドキャリアに向けた活動を始めた林さん。目標をかなえるべく、最初の一歩として始めた行動とは? 後編【「人をサポートしたい」闘病生活を経験した60代男性が、定年後に選んだ“念願の仕事”】で詳説します。
髙橋 伸典/セカンドキャリアコンサルタント・モチベーション総合研究所代表・東京定年男女の会主宰
1957年生まれ。57歳で早期退職するも、多くのつまずき、苦労を経験する。しかし試行錯誤を重ねることで乗り越え、リスクなく独立する道をつかみ取る。東京都主催の東京セカンドキャリア塾、各自治体などでセミナーを行う。雑誌やウェブメディアでは、セカンドキャリアに関する寄稿の実績多数。著書に「定年1年目の教科書」(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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