1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう!? お金管理で見落としがちな盲点とは

Finasee / 2024年1月29日 11時0分

「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう!? お金管理で見落としがちな盲点とは

Finasee(フィナシー)

少子高齢化が大きく進んだ現代の日本では、ひとりきりで最期を迎える事態は決して珍しくありません。そのため自分で意思決定できなくなったとき誰に委ねるか、どのように判断してもらうかをきちんと考えておく必要があるでしょう。

話題の書籍『あなたが独りで倒れて困ること30』では、お金や健康など独身者を襲うリスクや「おひとりさま時代」を生き抜く具体的なヒントについて、司法書士の太田垣章子氏がやさしく解説。今回は本書の『はじめに』、第1章『おひとりさまリスク――「お金の問題」』の一部を特別に公開します。(全3回)

●第1回:“サザエさん”的家族関係はもはや過去の話…「1億総おひとりさま時代」に必要なこと

※本稿は、太田垣章子著『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

自分が倒れたあとのお金なんか考えたことがありませんでした……。

一生懸命にお金を貯めて来て、そのお金が自由に使えなくなるだなんて、考えたこともないと思います。誰だって、今の元気な自分を基準に考えますよね?

でもちょっと待って。死ぬ寸前まで、自分の足で銀行に行けるとか、頭がはっきりしている人なんて、そんな方がもしいらっしゃるなら私がお会いしてみたい! 多くの方々が、判断能力が鈍ってきたり、自分では銀行に行けなくなってしまいます。

そう、それが当たり前の世界なのです。でも多くの方々は、その「ほぼあり得ない」将来を想定して生きています。

以前は親の預金口座から子どもが代わりに預金を引き出したりもできましたが、今や本当に厳しくなってしまったのが「本人の意思の有無」で、これがとても重要視されるのです。

それはそれで勝手に使われないというメリットもある反面、親族であっても、自由に預金の出し入れができなくなってしまいました。

そうなると、どうなるのでしょうか。金融機関は名義人が認知症になったと分かった段階で、口座をブロックしてしまいます。つまりその口座のお金は、もう使えなくなるのです。

「親が施設に入ることになって、そのお金を親の口座から使いたいんです。だって親のために使うのですから! 自分たちが勝手に遊ぶお金じゃありません。それでもダメなんですか?」

そんな状況に置かれて、困ったご家族の口から、半ば憤りにも似た、そしてすがるような思いがこぼれます。でもダメなんです……。

ご本人の意思が確認できなければ、お亡くなりになるまでご家族がその費用を立て替えるか、法定後見制度を利用するしかなくなってしまいます。それなのに未だに自分は「ボケない、死なない」と備えを先延ばしにしている人が後を絶ちません。

子育てと違い、ゴールがいつか分からないのがこの問題の難しいところ。だからこそ自分のお金を自分のために、きちんと使えるようにしておく必要があるのです。

自分の貯めたお金は最期まで自分のために使えるようにしましょう

ここでひとつ、簡単にできる方法をお伝えしましょう。それが「代理人指定制度」です。

各金融機関で呼び方は違うでしょうが、自身の口座に関して代理人を決めておくことができるという制度です。この代理人を決めておけば、自分で銀行に行けなくなった等の場合には、予め決めておいた代理人が本人の口座から出金をすることができます。

ただこの制度、残念ながら、万能ではありません。通常、指定できる代理人は、2親等や3親等内の親族に限られます。そうなると「頼れる家族がいる」ことが前提になってしまうのです。

2親等といえば親子や夫婦、兄弟の間なので、甥っ子、姪っ子を頼ることもできません。当然に「頼れる家族」がいなければ、この手続きさえも利用できないのです。

さらに利用できたとしても、出金額が多かったり、長期になると、金融機関側から正式な「成年後見制度」を利用するよう促されることもあります。短期間なら良いのでしょうが、何年もとなると、延々と口座からお金が引き出されることに金融機関も不安を感じるのでしょう。

こうなるとせっかく節約して貯めたお金も、自分の最期まで自分の思うように使えない、ということになってしまいます。

ぴんぴんころりなら、上等です。でも確率的には、宝くじに当選するくらいのレベルです。そうならなかったとしても、自分のお金を自分のために使えるように備えることが必要です。せっかく貯めたお金は、相続人を豊かにするためではなく、ご自身のために有意義に使いましょう。

自分の老後にいくらかかるか分からないからお金が使えないです……。

高齢者の方とお話をしていると、「この先どれだけお金がかかるか分からないから、お金が好きなように使えないんだよね」と言います。こういう方は、質素に生活をし、無駄なお金は使いません。

でも私からしたら、じゃ、一体いつ使うんだ? と思ってしまいます。

不安なのは、知識がないからです。分からないから、もやもやする。ちゃんと知識さえあれば、あとは具体的に考えられるので、不安はなくなるはずです。

こういう人に限って、自分の使えるお金の管理ができていません。たとえばどこの銀行にいくらの預金があって、どのような保険をかけていて、自宅を売却するとどれくらいの資産になって、どのような治療を受けようと思っているか、何も決めていません。

もし人生100年時代に備えると言うなら、70代と90代で使う金額は違うはずです。アクティブシニア世代と言われる今の70代には、海外旅行に行く人もいるでしょうし、フランス料理だ肉料理だと美味しいものを食べたり、観劇やスポーツなど趣味にお金を使う人もいるでしょう。

でもいくら元気であったとしても、90代で海外旅行にたくさん行ける人は、少ないのではないでしょうか。食べるものだって、個人差もあるでしょうが、70代とは食べられるものも好みもきっと変わってきますよね?

だから仮に10年単位で考えたとしても、必要なお金は各世代での均等割りではないはずです。分からないから不安なので、可視化することが重要です。

老後の資金も、明確にしていけば不安はなくなる

まずは使っている金融機関を、できるだけコンパクトにまとめましょう。そして保険も一度見直します。ただし、先進医療部分の費用は高額療養費制度では戻ってきません。その上、高齢になった時に、そのような最先端の治療を受けるだけの体力があるでしょうか?

若い時は家族のためにも少しでも長生きしなければと思い、仮に辛くても治る可能性がある治療にかけるという考え方もあるでしょう。でも高齢の場合、そこまでの積極的な治療でどこまで回復するのでしょうか。

人それぞれの考え方もありますが、本当に自分のかけている保険が必要かどうか、改めて健康で元気なうちに一度検討することも必要だと思います。

金融機関や保険を整理した上で、自身の受給できる年金額を確認してみましょう。毎年誕生月に、「ねんきん定期便」が送られてきます。それには50歳以上の場合、今と同じ条件で60歳まで働いて年金を納付したと仮定した時の、65歳から受給できる金額が記されています。

受給年齢が後ろ倒しになればなるほど、受け取れる年金の額は割増されます。そこを加味しながら、いくつまで働くのか、年金で毎月いくら使えるのか把握していきましょう。

そこまで分かれば、自身の総資産と生活スタイルから、70代ではいくら、80代ではいくらと具体的にかけられる費用が明確になっていきます。足りないと思えば、副業をして収入を増やすとか、働く期間を長くするとか、節約するとか、住まいを売却してコンパクトにするとか、いろいろと方法や工夫は見えてくるはずです。

分からないから不安なんです。でも不安だからとお金を使わないことばかり注力していると「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう可能性もあります。

日本人は貯めることは上手だけれど、お金を使うことは下手だと言われています。せっかく生きているのですから、楽しまないともったいない。

そのためにも、自分の周りのいろいろなことを明確にして、今の元気な自分が楽しめるように計画を立てていきましょう。

クレジットカードで気をつけた方がいい盲点ってありますか?

皆さんは、普段クレジットカードを使われていますか?
具体的に何に使っていますか? サクッと言えますか?
明細書を隅から隅までチェックしていますか? 

意外と全部は覚えておらず、「あ、これもクレジットから支払われているんだ」と気付くことがあります。

菅井さん(仮名・78歳)は、ある日突然にスマホが使えなくなって驚きました。充電していなかった訳ではありません。お金はちゃんと持っているので、使用料未払いでストップしたという発想は全くなく、ただ機械の故障やトラブルしか思いつきませんでした。

今のご時世、スマホが使えないと、とても不便です。まずは通信事業者に連絡しようとしました。ところが電話番号が分かりません。それもそのはず、今は問い合わせの電話を可能な限り減らすために、各社はWEB上から確認してもらうよう電話番号は目立つところには明記していないからです。

案の定、菅井さんも探すのに苦戦しました。結局見つけられず、ショップへ行くことに。整理券を取って、長時間待って、ようやく順番が来ました。事情を話し、一緒にWEB上から作業してくれることになりました。そこでまた難関到来です。

「WEBの暗証番号をお願いします」

菅井さんの頭は、「?」マークだらけです。そのようなもの、覚えていません。暗証番号って、いつ誰が決めたのか、それすら覚えていないし分かりません。

困り切った菅井さんに、担当者も頭を抱えます。では電話番号から……とあれこれ対応してもらって、やっと原因が分かりました! 原因はクレジットカードでした。

クレジットカードは、一定期間で更新されます。カード払いにしている場合、カードが更新されても再登録しなくても大丈夫な場合と、そうでないケースがあります。たまたま菅井さんの場合、クレジットカードの有効期限が切れたので、新しく更新手続きをする必要があったのです。

そんなこととは思いもよらず、菅井さんは更新手続きをしていなかったため、通信費が支払われていない状態でした。おそらく督促状も来ていたはずなのですが、払えない可能性が自分の頭の中にはないことから、スルーしてしまったのでしょう。

これが50代なら更新手続きをサクッとしたり、督促状が届けば支払われていないことに気付いてすぐ対応できたでしょう。年齢にも幅があるとは思いますが、高齢になると「若い時に普通にできていたことが、できなくなる」のです。

65歳を目途にクレジットカードで何を払っているかの見直しを

またクレジットカードによる、サブスクリプション問題もいろいろあります。

子どもが高齢の親の家に行ったら、棚からたくさんの使っていない毛染め剤や毛生え薬が出てきた! という話はよくあります。置いてある量からすると、相当な期間使わないまま送られ続けているようです。

「これ使っているの?」そう聞いても、曖昧な笑顔しか返ってきません。使っていないなら解約をすれば済むことなのですが、解約の仕方が分からないと言います。

商品が送られてきた時の明細を探すと、やはり電話番号が書かれていません。何とかその商品の会社のHP上から探していくと、購入ボタンは色がついていて大きいのに、解約手続きのことは小さくしか書かれていません。さらに1回分は止めることはできても、解約は電話でしかできないような設定になっていました。

やっと番号を入手したのでかけてみると、これまた延々と繋がりません。「混みあっていますので……」というようなアナウンスが流れます。

こんな仕組みなら、高齢者はこれらの一連の流れのどこか途中で諦めてしまうのも無理はありません。そして、延々と使わない商品が送られてくるのでしょう。毎回発注するのは面倒だし、自動で送られてきて、支払いもクレジット決済となれば、便利なのは分かります。でもこれが曲者です。

高齢になった時に、このようなことが起こらないように、今利用しているサブスクを、いちど洗い出してみましょう。そしてクリアな頭の間に、解約手続き方法を確認しておくことをお勧めします。

●第3回(「エンディングノート」と「遺言書」の違いとは? 知らないと損する「終活」の常識)では、エンディングノートや遺言書が担う役割や作成のコツについて解説します。

『あなたが独りで倒れて困ること30』

太田垣章子 著
発行所 ポプラ社
定価 1,760円(税込)

太田垣 章子/OAG司法書士法人 代表司法書士

これまで延べ3000件近くの家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。常に現場へ足を運び、滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士。住まいという観点から、「人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活」支援にも活動の場を広げている。家主および不動産管理会社向けに「賃貸トラブル対策」や、おひとりさま・高齢者に向けて「終活」に関する講演も行う。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』『不動産大異変』(すべてポプラ新書)、共著に『家族に頼らない おひとりさまの終活』(ビジネス教育出版社)がある。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください