Q.新NISAに向けて、投資信託をどんな基準で選べばいい? 分散投資する必要はある?
Finasee / 2023年12月21日 17時0分
Finasee(フィナシー)
新NISA口座で投資するかどうかに限った話ではないのですが、とにかく投資信託は運用されている本数がたくさんあります。投資信託協会が公表しているデータによると、2023年11月末の公募投資信託の運用本数は、約6000本です。
選択肢が多すぎる……そんな時は「純資産総額」で絞り込む約6000本もあると、選ぶのが大変です。東京証券取引所に上場されている企業数でさえ約3900社です。その倍とまでは言いませんが、1.5倍程度はあるのです。ここから自力で購入するファンドを選ぶのは至難の業です。
とはいえ、新NISAの口座で購入できる投資信託は、ある程度まで本数が絞り込まれています。
たとえばつみたて投資枠なら、インデックス型が223本、アクティブ型が40本、ETFが8本の合計271本ですし、成長投資枠なら非上場の投資信託が1801本、ETFとJ-REITが282本の計2083本です。これで約3分の1にまで減りました。
ですが、実はもう少し減らせるのではないかと思います。どうやって減らすのかというと、純資産総額の水準で足切りしてしまうのです。
恐らく新NISAの口座で資産形成を始めてみようと考えている人たちは、ETFやJ-REITよりも、非上場の投資信託を選ぶと思います。そこで、ここから先はETFやJ-REIT以外のものを対象にして、話を進めます。
2023年10月末時点で運用されている公募投資信託(追加型)の中から、ETF、DC専用、SMAラップ専用、ブルベア型を除いて、純資産総額別に運用されている投資信託の本数を調べてみました。具体的には、以下のようになります。
1兆円以上・・・・・・5本
1000億円以上1兆円未満・・・・・・122本
100億円以上1000億円未満・・・・・・922本
50億円以上100億円未満・・・・・・483本
30億円以上50億円未満・・・・・・469本
10億円以上30億円未満・・・・・・926本
1億円以上10億円未満・・・・・・1072本
1億円未満・・・・・・332本
以上の数字は2023年10月末のものです。
なるべく純資産総額が「50億円」より多い商品を選ぶでは、皆さんが投資信託を購入する場合、純資産総額はいくら以上のものから選びますか?
まず、投資信託の投資対象マーケットにもよりますが、純資産総額があまりにも小さいものは避けた方が無難です。なぜなら、繰上償還リスクが高まるからです。
新NISAで投資信託を購入する方は、大半が長期目線の資産形成を考えているでしょう。そうであるにも関わらず、購入した投資信託が繰上償還されてしまったら、長期目線も何もあったものではありません。
しかも、1800万円の生涯投資枠いっぱいまで投資した後で繰上償還されたりしたら、繰上償還される月にもよりますが、運用できない空白期間ができてしまいます。
極端なケースですが、たとえば生涯投資枠いっぱいまで購入した投資信託が、1月に繰上償還されたとします。その時点で解約代金を受け取ることになりますが、新NISAでは、投資信託を解約して空いた枠の再利用は、翌年以降にならなければ認められません。つまり、繰上償還されてしまった分は約1年間、キャッシュで寝かせなければならないのです。このリスクを考えると、やはり純資産総額が大きな投資信託を選ぶことが重要になってくるのです。
一概に「この金額以上」とは言えないのですが、繰上償還条項が発令される時の受益権口数が30億口とする投資信託が多いことからすると、1口基準価額が1円で純資産総額が30億円、1.5円で45億円、2円で60億円になります。こうした点から考えると、純資産総額は50億円程度よりも多いものというのが、ひとつの目安になりそうです。
前出の純資産総額別の投資信託の本数を合計すると、4331本になります。このうち、純資産総額が50億円未満の投資信託の本数は、2799本です。つまり、4331本から2799本を差し引いた1532本しか、買うに値する投資信託はない、ということになります。
1532本に対して、新NISAの成長投資枠で購入できる投資信託の本数は非上場投資信託だけだと1801本なので、その中にも純資産総額が50億円未満で、買うに値しないと思われる投資信託が、300本近く含まれているかもしれないと考えられます。
このように純資産総額で足切りをすると、購入できる投資信託の本数はかなり限定できるのです。
特にインデックス型投資信託の場合、連動目標とするベンチマークが同じであれば、運用会社や運用担当者が違ったとしても、実現するリターンはほぼ同じになります。インデックス型投資信託を購入するならば、純資産総額だけを見て判断すれば良いでしょう。基本的には純資産総額が大きいものを選んでおけば大丈夫です。
アクティブ型は「運用方針」「運用実績」を重視する難しいのはアクティブ型投資信託です。運用会社、運用担当者次第で、リターンは大きく変わります。いささか漠然とした言い方になってしまい恐縮ですが、アクティブ型投資信託を選ぶ場合は、運用方針に賛同できるかどうかを重視するしかないでしょう。
かつ過去の運用実績をチェックして、いくつかのランダムな局面で、ベンチマークを上回るリターンを実現できているかどうかを確認します。もちろん過去の運用実績が選択基準としてとても重要ですから、運用がスタートしてまだ間もないような投資信託は、買わない方が無難です。
正直なところ、アクティブ型投資信託が必ずベンチマークに勝てる運用実績を上げられるかというと、何とも言えません。上げられるかもしれませんが、上げられないかもしれません。そういうものなので、大事なのは結局のところ運用方針になります。
何を組み入れるのか、どういう視点で投資先企業を選別するのか、長期投資なのか、それとも比較的銘柄の入れ替えを行うのか、といった点を、目論見書などの開示書類を読んで、判断するのです。その手間をかけるのが面倒だという人は、インデックス型投資信託を選ぶのが無難でしょう。
投資信託なら「分散投資」の必要性はそこまでないでは分散をどうすれば良いのかですが、投資信託はそもそも分散投資されている金融商品です。
したがって、株式なら株式、債券なら債券といった単一の資産クラスにおける銘柄分散と、国内外の株式や債券、REIT(不動産投資信託)、コモディティなどに分散する資産クラス分散のどちらを選ぶか、という話になります。
これは少なくとも新NISAの口座で買うならば、という前提で考えると、細かく資産クラス分散をする必要はないのではないか、と考えます。
毎月、複数の投資信託を積立購入するとしたら、いちいち株式投資信託に何%、債券投資信託に何%、REITに何%というように、当初定めたポートフォリオ比率に沿って積立資金を分けながら、積立購入しなければなりません。これはあまりにも面倒でしょう。
だったら、最初からさまざまな資産クラスに分散投資されているバランス型投資信託を買えば良いという考え方もありますが、自分が保有している金融資産ポートフォリオをよく見直してみてください。恐らく誰もが株式だけで運用しているわけではないしょう。
銀行預金や債券など、比較的元本割れリスクの低い金融商品を一定額持っているのだとしたら、新NISAで購入する投資信託まで、債券などの安定資産を組み入れたバランス型投資信託にする必要はありません。銀行預金や債券を持っているのであれば、新NISAで購入する投資信託は、株式という単一の資産クラスで、複数企業に分散投資している投資信託を買えば良いと思うのです。
ポートフォリオはシンプルに。それが資産形成を長続きさせるコツです。
参考
・金融庁「つみたてNISAの対象商品」
・日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数」
・一般社団法人投資信託協会「統計データ」
・一般社団法人投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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