1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

Q.新NISAの「出口」はどう考えるべき? 配偶者の非課税枠を使うと「贈与税」はかかる?

Finasee / 2023年12月25日 11時0分

Q.新NISAの「出口」はどう考えるべき? 配偶者の非課税枠を使うと「贈与税」はかかる?

Finasee(フィナシー)

ご存じの方は多いと思いますが、新NISAは制度そのものが恒久化され、非課税期間は無期限化されました。

これによって新NISAの使い勝手は飛躍的に高まりました。制度が恒久化されたので、「いつまでに枠を使わないともったいない」などと考える必要がなくなりましたし、非課税期間が無期限化されたので、運用し続ける限り、その間に生じた運用収益はすべて非課税扱いになります。

ただ、このように期限を決められることなく、いつまでも非課税で運用できるとなると、新たな悩みが生じてきます。それは、「いつまで運用すればいいのだろう」ではないでしょうか。つまり出口戦略の考え方です。

資産を取り崩すなら「定率引き出し」がベター

ネットで検索をかけると、結構、新NISAの出口戦略については説明されています。たとえば「運用しながら毎年、運用資産の4%未満ずつ解約すれば、30年以上資産が持つ」とか、「毎月、運用しながらその一部を定率で引き出す」、あるいは「定額で引き出す」といったことです。

どれが良いのか迷ってしまいますよね。ベターな方法を選ぶとしたら、定額引き出しよりは、定率引き出しを選ぶべきでしょう。その方が、資産寿命を長くできるからです。

運用しながらだと、その途中でマーケットが下落して保有資産の評価額が目減りすることもあれば、逆にマーケットが上昇して増えることもあります。それが繰り返されるなかで、保有資産の評価額が目減りした時に定額で引き出してしまうと、定率で引き出した時に比べて、資産の持ちが悪くなってしまうのです。

たとえば毎月3万円を引き出すとします。運用資産が100万円で、80万円まで目減りした時に3万円を引き出すと、引き出し後の残高は77万円です。

対して毎月3%ずつ引き出す場合、同じように80万円に目減りした時の引き出し額は2万4000円なので、引き出し後の残高は77万6000円です。3万円を引き出した時に比べて引き出せる金額は少なくなり、その分だけ、当月の生活は苦しくなるでしょうが、その時は節約を心がければ良いのです。

デメリットは資産が目減りするプレッシャー

しかし、定率引き出しでも定額引き出しでも良いのですが、この「運用資産の一部を解約して引き出す」ための出口戦略は、いずれにしても運用資産の一部を継続的に取り崩していくことになるため、マーケットの下落とは別に、運用資産は時間の経過に伴って徐々に目減りしていきます。

果たして皆さんは、それに耐えることができますか。

少しイメージしてみてください。雇用延長を終える65歳の時点で、新NISAの口座には2000万円の運用資産がありました。そこから定率引き出しでも定額引き出しでも良いのですが、生活費に充当するため引き出していったとします。

70歳になった時、運用資産の額は1200万円になっていました。

75歳になった時は、900万円になっていました。

ここでふと考えませんか? 「85歳まで生きたとして、残りはあと10年。手元には900万円しかないけれども、これで10年間を乗り切れるのだろうか」と。

そうなのです。毎月の引き出し額は少額でも、長く続けば徐々に運用資産は目減りしていきます。自分はそのプレッシャーに耐えられるのか、ということを考える必要があるのです。

「スッカラカンになったら生活保護でも申請すればいい」と割り切れるなら、それもまた人生かもしれませんが、それだけは避けたいと考える人も多いでしょう。そうならないようにするためには、まず十分なインカム収入を受け取れるようなポートフォリオを考えることが大事です。

インカム収入を受け取れるポートフォリオの考え方

たとえば1200万円まで運用できる成長投資枠で、J-REITや高配当利回り銘柄を保有します。1200万円の枠を一杯にした時の配当利回りが平均で年5%だとしたら、毎年60万円のインカム収入を得られます。毎年60万円ということは、毎月5万円です。

さらにつみたて投資枠の600万円ですが、これは残念ながら投資信託とETFのみしか購入できず、しかも現在の商品ラインナップを見る限り、高いインカム収入を狙えるものはありません。

そこで、もし、つみたて投資枠の600万円が、運用収益を含めて1200万円くらいになっていたとしたら、これを解約して課税口座に移すという手もあります。そして、課税口座を使って高配当利回り銘柄などに投資するのです。

仮に5%の配当利回りが得られれば、課税後に得られる配当金の額は年48万円です。月に直すと4万円ですから、成長投資枠で得られる5万円のインカム収入を合計すると、毎月9万円を得られます。

公的年金以外に毎月9万円の収入を運用資産から得られたら、これは結構、豊かな老後生活が送れるのではないでしょうか。

よく引き合いに出されますが、「老後2000万円問題」では、無職の高齢者夫婦が30年間生活するうえで不足するお金は毎月5万5000円。30年で1980万円という試算になっていますが、このモデルケースがそのまま適用される人にとっては、毎月の不足額を補って余りあるインカム収入を得られることになります。

しかも、この方法の良いところは、運用資産が目減りしない点にあります。成長投資枠から5万円、課税口座から4万円の計9万円は、あくまでもインカム収入によるものなので、元本の取り崩しは発生しません。時間の経過と共に元本が目減りしていくことに対して、ハラハラする必要がないのです。

配偶者のNISA口座を使う場合の注意点

ところで、9万円のインカム収入が得られる上記のシミュレーションは、あくまでも1人分の新NISA口座を想定したものですが、生計を共にしているパートナーがいるならば、同じ条件で2人分、つまり月18万円のインカム収入を得ることもできます。

ただし、1つだけ注意しなければならない点があります。それはパートナーのどちらかが働いて得た収入を、2つの口座に分けて新NISAで運用する場合です。たとえば専業主婦(主夫)家庭で、一方が働いて得た収入の一部を、もう一方のNISA口座に入金すると、贈与税が課せられる可能性があります。

また、いずれか一方に投資の知識がないからといって、もう一方の判断で投資を実行すると、「名義貸し」という違法行為になるので注意が必要です。

特に贈与税については注意した方が良いでしょう。ただし贈与税には暦年ベースで年110万円までの基礎控除が認められていますから、この範囲内で行われた贈与に関しては一応、贈与税はかからずに済みます。

とはいえ2024年1月1日以降の贈与については、贈与を受けた財産のうち相続開始前7年以内に行われた贈与は、たとえ110万円の基礎控除内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加算して相続税が計算されてしまいます。

つまり贈与税は基礎控除の適用を受けられたとしても、贈与されて7年が経過する前に相続が発生した場合は、相続財産に加算されてしまうのです。せっかく新NISAで運用益が非課税になったのに相続税で持っていかれては、何のための非課税運用なのか、分からなくなります。

個々人の状況にもよりますが、できるだけ自分が働いて得た収入の一部で、新NISA口座を通じた運用を行うようにしてください。

参考
・国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください