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過去2度の不祥事に揺れたオリンパス 最高益まで回復しても株価が重い理由

Finasee / 2023年12月26日 17時0分

過去2度の不祥事に揺れたオリンパス 最高益まで回復しても株価が重い理由

Finasee(フィナシー)

オリンパス株式は高値から調整が進んでいます。きっかけは2022年11月に発表した業績予想の下方修正でした。発表を機に売られるようになり、現在まで高値を回復できていません。通期では増益ですが投資家の期待を上回れなかったようです。最高益を更新するも株価の戻りは鈍く、足元では2000円台に沈んでいます。

【オリンパスの業績】

  売上高 純利益  2022年3月期 7501億円 1157億円  2023年3月期 8819億円 1434億円  2024年3月期(予想)   9580億円  2890億円

※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想
※科学事業を含まない

出所:オリンパス 決算短信

【オリンパスの株価(月足、2018年11月~2023年11月)】

出所:Investing.comより著者作成

オリンパスは収益性基準と市場評価性基準の双方を満たし「JPXプライム150指数」に選ばれています。また時価総額も2兆円を超える大型株式です。投資する人は少なくないでしょう。

過去には不祥事もあったオリンパスですが、現在は経営改革で高収益企業になりつつあります。今回はオリンパスに焦点を当て、同社がどのような企業なのか見てみましょう。

顕微鏡から始まった医療機器メーカー 内視鏡で世界首位

オリンパスは医療向けの精密機器メーカーです。内視鏡と治療機器と2つの事業を展開しています。前者は内視鏡に関連するシステムや洗浄装置などが、後者はクリップやスコープといった手術用の器具が主な製品です。

またグローバル企業でもあります。海外売上高比率は内視鏡で87%、治療機器では85%に達します(2023年3月期)。特に内視鏡はシェアが高く、消化器向けで世界の70%を握っています。

このためオリンパスは為替の影響を比較的強く受けます。対米ドルで1円動くと売上高が25億円、営業利益が7億円変動します(2023年3月期実績。出所:オリンパス 2023年3月期決算参考資料)。

【セグメント業績(2023年3月期)】

  売上高 営業利益  内視鏡 5518億円  1528億円  治療機器   3182億円 637億円

出所:オリンパス 決算短信

オリンパスはもともと顕微鏡メーカーでした。1919年に高千穂製作所を設立(1949年にオリンパスへ改称)し、翌年に国産として初めて顕微鏡を開発します。

顕微鏡の生産で培った光学技術はオリンパスをさらに発展させます。1949年には国産初のレンズシャッターカメラを発売し、1950年には世界で初めて胃カメラの開発に成功しました。胃カメラを機に医療分野に進出したオリンパスは、今や同業界でなくてはならない存在となっています。

二度の不祥事 不正会計とキックバック問題で最終赤字に

オリンパスの業績を振り返ると2012年3月期と2015年3月期に赤字となっていることがわかります。前者は不正会計問題が、後者は米国のキックバック問題が主な原因でした。

【オリンパスの純利益(2011年3月期~2015年3月期)】

出所:オリンパス 決算短信より著者作成

オリンパスの不正会計問題は、同社が多額の運用損失を隠そうとした事件です。

オリンパスは1990年代にバブル崩壊で約1000億円の運用損失が生じていました。損失の表面化を避けるため含み損となった資産を複数のファンドに簿価で譲渡し連結から除外します。いわゆる「飛ばし」と呼ばれる手法です。

オリンパスは受け皿ファンドの解消を目的に、2007年以降に他の買収案件に合わせて1350億円を支払いました。しかし買収規模に照らし高額だったこと、買収後の減損に妥当性の疑義が生じたことから2011年に不正が明るみになります。この修正にかかる費用を主因に2012年3月期は277億円の特別損失が生じました。これによりオリンパスは最終赤字に転落します。

オリンパスのキックバック問題は、米子会社が不法に利益供与をしていた事件です。

オリンパスの米子会社は製品導入の見返りとして医師らに対価を支払っていました。これが現地の法令(反キックバック法)に違反するとして2015年に米国司法省から調査を受けます。

オリンパスは制裁を見込み2015年3月期に589億円の引当金を積みました。キックバック法違反関連損失は539億円が計上され、同社は3期ぶりの最終赤字に転落します。なおオリンパスと米司法省は、オリンパスが704億円を支払い2016年に和解しています。

祖業も売却 オリンパスで進む選択と集中

二度の不祥事で揺れたオリンパスですが、その後は順調に回復しています。特に近年は好調で、2024年3月期は2期連続の最高益を見込んでいます(2024年3月期は科学事業の譲渡に伴う一過性の利益あり)。

【オリンパスの純利益(2016年3月期~2024年3月期(予想))】

出所:オリンパス 決算短信より著者作成

オリンパスの好調は経営改革に支えられています。

オリンパスは2019年に企業変革プラン「トランスフォーム・オリンパス」を公表しました。5つに分かれていた医療事業を内視鏡と治療機器に再編し効率化させること、またコスト削減に取り組み利益率の改善を目指すことが示されました。

医療以外の事業からは撤退が進んでいます。カメラなどの映像事業は2021年に、祖業の顕微鏡を含む科学事業は2023年に売却しました。これらの施策によりオリンパスは医療事業に特化した企業となっています。

業績を見る限り改革は成功しているようです。営業利益率は2023年3月期に21%に達し、トランスフォーム・オリンパスが公表された2019年3月期(同4%)から大きく上昇しました。

【営業利益と営業利益率(2019年3月期~2024年3月期(予想)】

出所:オリンパス 決算短信より著者作成

なお2024年3月期は米食品医薬品局(FDA)の対応(※)や米子会社の製品販売終了に伴う費用などから営業減益を予想しています。オリンパス株式の低調は、投資家がこれらを懸念していることが理由なのかもしれません。

※オリンパスは2022年11月~2023年3月、医療機器報告(MDR)の提出の遅れなどから米食品医薬品局(FDA)から警告文を受け取っている(参考:オリンパス 2023年3月期有価証券報告書(事業等のリスク)、2023年3月期第3四半期決算カンファレンス 質疑応答(要旨))。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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