アラフォー男の友情がアダに… 人生を狂わせた親友の“頼み事”
Finasee / 2023年12月22日 17時0分
![アラフォー男の友情がアダに… 人生を狂わせた親友の“頼み事”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/finasee/finasee_13001_0-small.jpg)
Finasee(フィナシー)
親友の山内に呼び出されてコーヒーショップに着いたとき、高橋秀一(42歳)のジーンズにもスニーカーにもしっかりと雨がしみ込んでいた。傘を閉じて店内に視線を巡らせると山内はすぐに見つかった。山内は窓際の奥の席に座っていて、大きく挙げた右手を振っていた。
「急に呼び出して悪いな」
「ひでえ雨だよ。足がふやけそうだ」
高橋はボックス席にかばんを置き、カウンターに注文へ向かう。コーヒーとサンドイッチをトレーに乗せて席へ戻る。山内はストローでアイスカフェオレをかき混ぜている。
「また少し痩せたんじゃないか? ちゃんと飯食ってんのかよ」
「お前は俺のおふくろなのか? ほっとけよ」
山内は昨年離婚したばかりだった。心労で体調を崩したことを理由に20年以上勤めていた会社も辞めていたが、顔色を見る限りもう大丈夫そうだ。
「最近は会員制のジムで鍛えてる。だから痩せたんじゃなくて締まったって言ってくれ」
「おいおい、元嫁の慰謝料とか養育費だってあんのに、一体どこにそんな金があるんだよ。生活のほうは大丈夫なのか?」
「問題ない。事業を始めたんだ」
「へぇ」
高橋は面を食らった。山内は昔から自由なやつで、そのとっぴな行動に驚かされたことだって片手では数えきれない。だが自分では持ちえない性分の山内を、高橋は面白いやつだと思っている。
山内は高橋にスマホを見せながら、始めた事業とやらの説明をした。ウェブ広告を主に扱うマーケティング会社らしく、メーカー勤務の高橋は門外漢だったが、思いのほかちゃんとしていることにまた少し驚いた。
それからしばらく、高橋と山内はお互いの近況を報告し合った。高橋には来年中学に上がる娘と小学3年生の息子がいる。上の娘は小さいころはパパと結婚すると言ってくれていたのに、最近は口すらあまり聞いてくれなくなったのが悩みの種だった。
「それで、相談って?」
高橋は思い出したように聞いてみる。話に花が咲きすぎて、相談があると山内に呼び出されたことを危うく忘れるところだった。
300万円の連帯保証人「ああ、そうだな……」
「もったいぶるなよ。俺とお前の仲だろ」
高橋が促すと、山内はかばんからしぶしぶと1枚の紙を取り出した。
「実はさ、事業をうまく回すために、先立つものはやっぱり金でさ」
「なんだよ、金貸せってか?」
「いや、その、なんていうか、……保証人になってほしいんだ」
高橋は山内が指さした書面に視線を落とす。消費者金融から300万を借り入れたことが記載されていた。
「300万ってお前……」
想像の上をいく話とその金額に、高橋は言葉を失う。山内は机をなめそうな勢いで頭を下げ、両手を合わせた。
「頼む! こんなこと頼めるのお前しかいないんだよ」
「会社の資金繰りのために消費者金融って、大丈夫なのかよ」
「仕方なかったんだよ。プロジェクトのローンチに必要な金だったんだ。軌道にさえ乗ればすぐに返せる。ここにサインする以外、お前に手間も負担も迷惑もかけないからさ」
高橋は黙り込んだ。
300万は決して安い金額ではない。だがこんな必死な山内を見るのも、20年以上の付き合いのなかで初めてのことだった。
「分かった。今回だけな。この貸しはデカいぞ?」
「……ありがとう! ありがとう!」
山内は高橋の手を握り、何度も繰り返した。
「やめろよ。恥ずかしいヤツだな。周りが見てるって」
「関係ねえって。やっぱお前に頼んで正解だったよ。本当にありがとう、高橋」
高橋は書面に名前を書いた。印鑑を持っていないというと母印で構わないとのことだったので山内が持ってきていた朱肉に親指を押し付けて母印を押した。山内は別れ際までずっと、高橋に向けてお礼を繰り返していた。
困ったときはお互いさまだ。高橋だって山内には何度も助けられてきた。その恩返しというわけではないが、親友が困ったときに力になるのは高橋からすれば当然のことだった。
しかしそれから半年後、山内の会社は倒産し、山内は音信不通になった。
●借金はどうなる? そして山内の行方は……。 後編【「もう限界よ…」と言った妻 親友の保証人になったアラフォー男の“悲壮”な末路】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。
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